女の子……? 10

ひとしきり泣き終わると、彼女はオレの身体から少し離れ、


「ありがとう……なんか……ごめんね。」

 

と、笑ってみせた。


それが、痛々しく感じてしまう。



「こんなので良かったら、いつでも貸すよ。」



オレは、親指で自分の胸を指しながら言った。



「……そんな事言ったら、彼女泣くよ。」


「…んなもん、いねぇよ。」


「え…?…またぁ……。」



彼女は、一瞬目を見開いたが、直ぐに表情を変えた。

 


「本当は、何か忘れ物したんじゃない?」


「えっ?……あぁ……バイクのキー……。」


「床には落ちてなかったから、布団と一緒に持ってちゃったかな……。」



そう言って、寝室であろう部屋に入っていった。



はぐらかされた……かな?


でも、オレも……驚いてる。


そりゃ……ファンのコや、学校の女子達にせがまれて、ハグは数え切れないほどしてきたけど……、


自分から

何かの衝動にかられてしたのは、初めてだ……。


何だろ……この感じ

 

もやもや……?


いや……違う


ふわふわ……?

 

くっ……何だよ、ふわふわって……。

  

あぁぁ!わかんねぇ。

   

初めてだから、わかんねぇよ……。


なんか……こう……胸を鷲掴みにされたような……

 

そんな……悪くない気持ち……。



ところで、バイクのキーは、あったのかな?

 


オレは、寝室のドアをノックした。



如月きさらぎさん……?キー、ありました?」



ん……?

 


応答が無いので、もう一度ノックしようとした瞬間、

扉が、カチャッと開いて、如月きさらぎさんが姿を現した。


彼女は、後手でドアを閉めると、オレにキーを渡した。



「やっぱり、布団と一緒に持ってちゃったみたい……ごめんね。」


「いや……それは、いいんだけど……、」



彼女は、部屋を出てきて、ずっと俯いたままだ。



如月きさらぎさん……?顔見せて。」



俯いたまま、首を横に振る。



でも、まぁ気になるし……。


知り合ったばかりの女性に、どうかと思ったけど、

指で、彼女の顎を上げて、顔を覗き込んだ。



あれ?! 


新しい痕…?



「ひとりで泣いてたの?」



彼女は、顔を真っ赤にしてまた、俯いてしまった。



「遠慮しないで、いつでもオレの胸借りてもいいんだよ。」


「でも……、」


「もしかして、オレの事、チャラい男だと思ってる?」


「いえ……。ただ……甘え癖がつきそうで…。」



瞳を潤ませて、頬を赤らめてる彼女を見てたら、

また、抱き締めてしまいそうで……


本日2回目の衝動は、なんとか理性をかき集め、

すんでのところで、抑えた。



「それに……ファンの皆さんに申し訳ないですし……。」



ここで、ファンのコ達は関係ねぇだろ。


と、思ったが、本当に遠慮してるってことか……。



「んじゃ……今日は、帰るわ。 また、遊びに来ていい?」


「はい!待ってます。」



今日一番の笑顔だな。



彼女から渡されたキーを握りしめ、

今度は、本当に帰路についた。

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