第19話 僕と友達のデート本番戦(3)
そして僕たちは朱希からチケットを一人一枚ずつ受け取り、園内へと入っていく。
いつもと変わらないメンバーで来てるのに、なんだかいつもとは違う不思議な感覚が感じられた。
ちょっと、ドキドキしてるからかな……?
そのせいか、うまく悠雨をまっすぐ見れない……。悠雨の方へ目線を向けても、すぐ恥ずかしくなってしまい、また逸らす、そんなことを繰り返してる。
「雪華、どうかした……?」
こんな挙動をしていると、さすがに悠雨にも気づかれてしまい……、
「あっ、い、いえ……特になにも……。」
なんとかはぐらかしたいけど……、誤魔化すの得意じゃないんだよな……。
「そっか、なんかちょこちょここっちを見てたから、なにか伝えたいことでもあるんじゃないかって思ってさ。」
ずっと見てたの気づかれてた……!!
せいぜい目線を送っていたぐらいだと思ってたのに……!!
「てか、さっきから顔赤いけど、大丈夫……?」
そう言われてハッとして、カバンの中から鏡を取り出して見てみると、真っ赤に染まったりんごのようになっていた。
なんでこんなに赤くなってるの……!!
こんなんじゃ、誤魔化しようがないよ~!!
「ほ、本当に、大丈夫……?」
どうしよう、本気で心配させたちゃってるし~!!
そんなのであたふたしていると、朱希がサッと近くによってきて僕を引き寄せ、フォローを入れてくれた。
「雪華ちゃんは緊張しいなんだよね〜。いつも興味ある人に近づきたいんだけど、後ろからチラチラするくらいで上手くできないんだよね〜。この子のかわいいところだから、心配しなくて大丈夫。」
そう言いながら、ほっぺたをくりくりしてくる。
そしてその様子を、傍から写真を撮っている己丞君、なんだかすごい異様な光景……。
「そうなんだ……、興味持たれてるならよかった。」
悠雨、そのちょっと顔赤らめるのやめて~!!
余計に意識しちゃうから……!!
「ほら、だからもっとくっついて!!」
そう言われてバッと朱希に押され、悠雨に飛びついてしまった。勢いよくかぶさってしまい、謝ろうと思って上を見上げると、悠雨の顔が近くにあって言葉につまる……。
しかも、なんで悠雨まで真っ赤になってるの~?!!
こんなんじゃ、よけいにドキドキしちゃうよ〜!!!
しかも今、くっついたままだから心臓の音聞こえてないかな……?!
ドクッ……ドクッ……ドクッ……
あれ……、耳元からドクドク音が聞こえる……。
これってもしかして、悠雨の心臓の音……。
そう思って上を見あげると、真っ赤になった顔に慌てた表情が張り付いている悠雨と目が合った。
悠雨、意識してくれてる……。
その瞬間、僕の中のなにかが外れた。
今なら、いいかな……。
もっと近づきたい、その一心で悠雨の胸の中へ身を埋める。
クンクン……クンクン……はぁー……、悠雨の匂いがする……。
もう少しだけ、してもいいかな……。
そう思ってまた、悠雨を見上げる。多分、僕は今物欲しそうな顔で悠雨に目線を送っているんだろう……。卑怯だろうけど、もう止まらなかった。
「おーい、お二人さーん……、さすがにこんな人がいるところで、それ以上は……。」
自制心というものを失っていた僕に、朱希からの声が届いた。
そこで我に返り、ハッとすると何人かのお客さんにチラチラと見られていた。
僕は慌てて悠雨に謝った。
「ご、ごめんなさい……!! ぶつかってしかもすぐに離れずに……それに私、あわわわ……!!」
なんであんなことしちゃったの~!!
何してたかバレてない?! バレてるよね!!
どう言えばいいかわからず、あわあわしている僕に対して、悠雨は以外にも冷静だった。
「いや、大丈夫だよ。それより朱希、いくら従姉妹だからってからかいすぎるなよ。」
「はーい、でもなんだか後押ししてみたくなっちゃって、悠雨も満更でもなかったんじゃない(笑)?」
からかっているのだろうか、それとも真面目に言ってるのかわからなかったけど、それが案外悠雨には効いたみたい。
「そ、そんなわけないだろ……!! 馬鹿なこと言ってないで、早く行くぞ。」
周りの目もあるからか、早々と退散しようとした悠雨に、己丞くんが声をかける。
「あ、待って。どうせなら、ここでみんなで写真撮らない? 思い出にもなるしね。」
その提案を聞いて、朱希もその意見にのる。
「それいいね!! じゃあ早く並んで並んで~。」
そう言われながら、背中を押され入り口前に並ばせられる僕と悠雨、さっきのことがあったからちょっと近づきづらくなっちゃったけど、みんなが写るようにとレンズに集まるようになるため、自然と密着することになった。
そしてスマホを取り出し自撮り棒で撮影を試みる。一応、自撮り棒を持っているのは朱希である。
「ほら、みんなもっと近づいて!! 悠雨と己丞見切れてるから二人は特に」
そう言われ、二人とも朱希のいるところへ近づく僕は朱希に寄せられ隣へ、己丞くんは慣れたように朱希の後ろ隣に、そして悠雨は少し迷って僕の後ろに付いた。
「よーし、みんな撮るよ~!!」
カシャ!!
とシャッター音がなり、いつもとは違う四人の姿がしっかりと写った。
写真を撮り終わったあと、少しホッとしていると朱希がそっと近づき耳元で囁いてきた。
「さっき珍しく積極的だったじゃん!! 周りの目があったから止めちゃったけど、その調子で頑張って!!」
周りに悟られないよう、僕も小声で言葉を返す。
「積極的とかそういうのじゃなかったんだって……!! さっきのは、止まらなかったというか……。」
「あらやだ、エッチ〜。たしかにさっきの目は完全にイッちゃってたもんね〜(笑)」
それを聞いた瞬間、一気に顔の辺りから熱さが込み上げてきた。
「イッ、イッちゃってたってどういうこと………!!?!!?」
慌てている僕の様子を見てか、さらにニヤニヤ度が増した表情で耳打ちをしてくる。
「言葉のまんまだよ(笑) もっとちょうだいって言わんばかりに。でも、あんなに可愛い求め方をするなら撮っておきたかったな〜。」
「絶対に撮らないで……!! 撮られでもしたら、本当に死んじゃうから!!」
見るどころか想像もしたくない……、自分が求めてる表情なんて……。
でも、そんな表情を悠雨にはっきり見られてることがなにより恥ずかしい……。
そうこうしていると、近くにいた己丞くんが声をかけてきた。
「二人とも〜!! そろそろ先進もう……!!」
「長居しすぎちゃったね。よし、じゃあ行こう!!」
その声に朱希が軽やかな声で答える。
そして四人で入り口付近から、園内の方へと移動を始める。
悠雨を方にチラッと目線をあわせてみると、こっちに気づいてニコッと笑いかけてくれた。
どうか今日のデート上手く行きますように……!!
〜続く〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます