第17話 僕と友達のデート本番戦
今日はとうとう、デート本番の日!!
それまでの日々、練習や準備をかさねてきた。今日が楽しみすぎて、あまり寝れてないから少し眠いけど……。でも、そんなこと吹き飛んでしまうくらいに嬉しい!!
朝から今日までに整えていた準備を始めた。
己丞君が選んでくれた衣装を着て、メイクをする。そして、シャンプーの香りがするように前日に洗って干しておいたウィッグを被る。
基本的な準備はここで整った。
あとは、今日に履いていく靴を出したり、朱希からおすすめされて持っていた香水を首元に吹きかける。
それと、これは己丞君から提案されたことなんだけど、香り付きのボディークリームを少し塗っておくこと。僕にはよくわからないけど、この方が意識されやすいのだとか……。
また、スマホカバーを変えて、ホーム画面もいつも使っているものから変更する。
何もかも完璧!! あとは、ショルダーバッグに忘れ物がないか確認する。
ハンカチ、ティッシュも大丈夫っと。
ちなみに、下着は今日は本気のため……。そうなっている……。さすがに真っ平らだとダメだと思うし、気分的にも今日はこれを選んだ。
全ての準備を完了して、僕は家を出る。
僕は現地に直接向かうのではなく、朱希と一旦待ち合わせをして一緒に現地に向かうことになっていた。
なので、いつも待ち合わせをしている、公園で朱希が来るのを待つ。近所の人にあまり見られたくないから、ちょっと目立たないところに立っていた。
朱希を待っている間、公園で遊んでいる子達の様子を遠目から見ていた。みんなそれぞれ、何人かで遊んでいたり、一人で遊んでいる子もいる。
小さい子ってやっぱり可愛いな~。
そう思いながら眺めていると、ひとりの女の子が僕の元に近づいてきた。僕の姿をじー、と見てから無邪気な顔で話しかけてくる。
「おねえさん、そのお洋服どこで買ったの? すごく可愛い!! わたしも、着てみたい!!」
おねえさんって呼ばれたのが正直嬉しい。
話しかけてきてくれた子に、僕は正直に答えた。
「ごめんね、これは友達に選んでもらったものだから、私はわからないの。でも、あなたのお洋服もすごく可愛いよ。」
「そっか……、じゃあ、この紐をおねえさんのリボンみたいに結んで欲しい!!」
そう言っている手のひらには、赤く細いリボンが握りしめられていた。
この衣装に合うと思って、自分で髪に付けてみたリボン。
この子も、可愛くなりたいんだね。
「うん、いいよ!! じゃあ、そのリボン貸してもらえるかな?」
「うん!! ありがとう!」
そして僕はリボンを手にとり、自分にしたようにこの子の髪に結び付ける。
こういうこと、ちょっと憧れがあったから何気に嬉しい。
サラサラしてて、生えてる髪の毛だから結びやすいな……。やっぱり、伸ばしてみたいな……。
「こんな感じかな……? よし、できたよ!!」
こういうことは、結構得意だ。裁縫なんかも自分ですることもある。
「わぁ〜、ありがとう!! おねえさんとお揃いだ~!!」
すごく喜んでくれたみたいで、嬉しかった。
「喜んでもらえて良かったよ!」
「うん、すごく嬉しい!! ありがとう!!」
そうやってリボンを結び終えたところで、その子の母親らしき人が近づいてきた。
「紬~、そろそろ帰るよ~!! あれ、そのリボン……。」
この子、紬ちゃんっていうのか……。
「あ、紬ちゃんに頼まれて、結んであげたんです。」
「あっ、そうだったんですか……、ありがとうございます。」
いかにもちゃんとしたお母さんという感じで僕にお礼をしてきた。見た目も紬ちゃんと親子なんだとはっきりとわかった。
「いえ、全然。紬ちゃんも可愛くなれて嬉しいみたいですし。」
そして、お母さんと紬ちゃんは改めてお礼を言って、バイバイと手を振った。
「おねえさん、ありがとう!!」
ああいう子に感謝されるのはなんだか誇らしくて、胸がいっぱいになっていた。
ウキウキになっている僕の背後から、なにやらひっそりと誰かが近づいてきた。それは僕にガバっとかぶさった。
一瞬、誰だと思ったけど、その疑問は次の瞬間にはなくなっていた。
「おねえさん、だって~。桜花良かったね~!! しかも可愛いって言われてたし。たしかにすごく可愛いもんね~。てか、いい匂いする~。」
いつものこの感じ、やっぱり朱希だ。いつもの通り、後ろから覆いかぶさってきたのだ。
「も〜、朱希、いるなら早く来てくれれば良かったのに。」
「え〜、だってあの微笑ましい状況で入っていけるわけないじゃん。私が入っていって邪魔したくなかったし。」
「邪魔なわけないよ。紬ちゃんいい子だったよ。僕の友達って言えば、絶対仲良くなれたのに。」
朱希はちょっと考えたあとに
「いや、やっぱりその仲に入ることを私自身が許せない!!」
謎の変なこだわりがあるところがなんというか……、朱希らしいというか……。
そんなやり取りをした後、今日の衣装のことなどを話し合った。
「写真で見たときは少し地雷っぽかったけど、実物を見るとそこまでではないね。にしても、桜花が着てるからかな? このゴスロリ感!! 己丞がどうしてこの衣装を選んだかわかった気がする……。」
そう言っている朱希の顔はなんだかニヤニヤしていて、少し危ない顔をしていた。
僕はあえて、そこには触れないようにした。
「己丞君が言うには、これが悠雨の好きだったキャラに似てるんだとか……。今更だけどこんな格好でいいのかな……? ゴスロリってことは、なんだか小さい子に見えるってことだし……。」
僕のこの言葉を聞くと、目の色が変わったように演説のようなものをしてきた。
「いや、これがいいんだよ!! この守ってあげたい感がいいんだよ!! 桜花のいい所を全面に引き出している感じ、まぁ、ちょっとだけ普段着るような衣装ではないけど……。でも、すごく可愛いから!!」
こんなふうに言われると嬉しいんだけど、少し恥ずかしさが残る……。
「しかも、今回香りにもこだわってきたでしょ。あげた香水使ってきてるみたいだし、それになにか塗ってない?」
僕にかぶさっているからか、密着しているからか、匂いがよく届くらしい。
「うん、貰った香水は使わせてもらったよ!! それと、ボディークリームは塗ってるよ。香り付きがいいって己丞君に言われたから。」
「へぇ~、己丞も案外いいアドバイスするじゃん。あいつそういう知識はあるからね。」
己丞君のことを話している朱希はなんだか誇らしげだった。自慢の彼氏?とでも言いたいのかな……?(笑)
「さぁ、立ち話もここら辺にして、そろそろ向かおう! 歩きながらまた話そう!!」
そう言って、行こう!! と合図を出してくれる。
悠雨に意識してもらえるかな……?
期待と不安を募らせながら、僕達は目的地へと向かう。
~続く~
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