VRMMOの育成シミュレーションゲーム・後編

 アラームが鳴る音を聞いて、俺は目を覚ました。まだ自分はホームに居るらしい。どうやら、誰かホームへとやって来たようなので、ホームの玄関となっている大きな門の方へと向かう。


 大きな門の前で、敷地に入らずに人が立っていた。


「どうしたんですか?」


 俺が声をかけると、3人組はビクンと身体を反応させて視線を向けてきた。3人共不安そうな表情を浮かべている。


「あの、えっと、ココって”訓練”を受けられる場所で間違いないですか?」


 ゲームと同じようなセリフを言う。しかし、彼らの見た目はゲームと違っていた。

ボロボロに破けて、汚れた布だけを身に纏った3人組。10代後半と思われる男子が先頭に立ち、その後ろに10代程の女子。更に女子の後ろに10歳ぐらいの女の子が立っていた。


 前に立つ男子が俺に向かって探るような視線を向けてきながら、聞いてきた。昨日選んだ3人だろうと思いつつ、俺は彼らの事情を聞く。


「あぁ、そうだが。君たちは?」

「この場所に行くように、そして教えを請うようにと神から啓示を受けました」


「そうか、ようこそ俺のホームへ!」


 その言葉を聞いて、そこもゲームと同じような設定なのだろうと思いながら、俺は彼ら3人組をホームに迎え入れた。



***



 今まで、大事に育ててきたキャラクター達は何故か消えてしまって居なくなった。けれど、キャラクターを育ててきた今までの経験は俺の中に残っていた。


 その経験を活かして、新たに迎えた3人を教育していく。メキメキ成長していって3ヶ月後には、旅立たせるために目指すステータスの目標に到達していた。ここまで育てておけば、外の世界で十分に活躍できる。


 俺は早速、育てていた内の2人にはホームから直ぐに旅立ってもらって、ゲームの時と同じように、育てたキャラクターを世界で活躍させて貰える報酬を受け取った。外での活躍で、更に受け取れる報酬が増えていくだろう。


 さらに、俺はゲームの時と違って外へ行くキャラクター達に色々と指示を与えた。外の状況がゲームと同じ世界観なのか、調査に行ってもらう。違っているような部分は無いか報告してもらう。


「先生、今までお世話になりました。この御恩は一生忘れません」


 俺に頭を下げてお礼を言ってくる少年は、冒険者として育てたライエルだ。武器は剣を持たせて、スピード型として避けて当てるキャラクターに育てた。3ヶ月という短い期間で有ったけれど、かなり納得のいく仕上がりだった。


 彼には、直ぐに冒険者として活躍してもらって、キャラクターの活躍報酬について貰えるのか、どれぐらい貰えるのかを確認する為に。


「私も、ありがとうございました。先生に指示された通り、外の世界については私が調べて報告します」


 ライエルと並んで頭を下げているのはルーシーだ。魔法使いとして育て上げた彼女は、攻撃型の魔法を主に使って、彼女の方も俊敏性を上げて避けて当てる戦術を教え込んだ。


 そのため、ある程度の強敵ならば死ぬことなく生き残れるだろう。彼女には、外の世界の調査報告をしてもらうようにお願いしてある。彼女の調べてくる情報で、俺の今後の方針も決まってくるかも知れない。


「二人共、3ヶ月間ありがとう。君たちは今日ココを卒業してもらうけれど、ホームには、いつでも帰ってきていいよ。もしも大変な事が有ったら何時でも相談に来ると良い。もちろん、何も用事が無くても来てくれて一向に構わないよ」

「「ハイ!」」


 2人は気持ちの良い返事をしてくれた。そして、クルリと背を向け森の方へと足を踏み出し歩いて行った。どうやら、向こうの方に街があるらしく一旦の目的地をそこに定めて歩き出したようだ。


「さて、レア。俺達も訓練をしようか」

「ハイ、先生」


 1人だけホームに残した女性の名はレア。彼女の才能限界は凄まじくて、先に外へ旅立ってもらってライエルとルーシーに比べて、何倍も限界値が高かった。なので、当初の考えの通りジックリ育てるために残って訓練を続けることにした。


 彼女には、今後の育成キャラクターの世界で活躍させる報酬稼ぎ頭として頑張ってもらうようにと計画している。



***



 ゲームでプレイしてた時に比べて、非常に没入していた。というのも、ゲームの時には感じなかった彼ら、彼女たちの現実感。


 とても、ゲームとしてプレイしていた様な適当さでは接することが出来なかった。本当に生きていると感じれたので、育成の方針も頭を悩ませて考えぬいた。


 結果、ゲームなのか現実なのか、ログアウトはどうやるのかという疑問について、今では頭の片隅に片付けられて気がついたら何ヶ月も時が経っていた。その仮想世界で、生活を続けている。


 その真剣さが、育成の結果に直結してゲームプレイしていたときに比べても絶好調で高ステータスを持つ者達の育成を次々と成功させていった。


 その後も、繰り返し人材をスカウトして、スカウトしてきた人材をホームで育成。育てたキャラクターを旅立たせていった。順調に育成キャラクターによる世界で活動することで得られる報酬を、受け取り続けることに成功していた。


 しかし、俺は知らなかった。育てたキャラクターが、外の世界で実力者と呼ばれるような有名人として活躍をしている、とう事実を。そして、世界中からは”訓練所”として様々な人達から注目されていることを。


 ホームから出ることが出来ない俺は、その事実を知らなかった。




【短編】VRMMOの育成シミュレーションゲーム

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891907807

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