03【とある倉庫整理係】黒いノート

 同時刻、魔界ハイスクールの某倉庫——。


「あれ? ここにあった黒いノート、知らないっすか?」


 黒いノート?

 そんなもん、この中には腐るほど……。


「ありすぎて分かんねぇよ。ないならもう、仕舞ったんじゃねぇの?」

「いやぁ……あれは、宝物庫からの預かりものだったんで、仕舞うはずないんすよねぇ……」


——はあ? 宝物庫!?


 そこではじめて、俺も整理の手を止めて棚の陰から顔を出す。

 俺と一緒に倉庫整理を頼まれていたもう一人の若い緑色の悪魔が、入り口付近に積まれた物資の山を漁っているのが見えた。


「そう言えばおまえが一服しにいってる間に、購買部の連中が夢ノートの在庫を取りに来てたけど……まさかそこに紛れてたんじゃねぇだろうな?」

「えっ! そ、それマズいっすよ! どぉ——するんすか、先輩!」

「おまえがそんなとこに置いたまま一服しに行ってたのがわりぃんだろ! さっさと取りに行ってこいよ」

「う~ん、でも、これって僕の責任っすかね? そもそも宝物庫の物を僕なんかに預けていく方が悪くないっすか?」

「知らねぇ——よ!」


——チッ、これだから最近の若い連中は……。責任感ってもんがねぇ。


「ちなみに、何のノートなんだよ、それ?」

「なんだっけなぁ……僕も頼まれてただけなんで。確か、世界改変がどうとかこうとか……」

「え! それ、ヤバくねぇか?」

「ん~、でも、前にも一度無くなったことがあって、戻って来た時は何ページか使われていたらしいっすけど、特に問題にはなってなかったみたいっすよ?」

「ほんとかよ!? そんな話、初めて聞いたぞ」


 名前のわりに、大した物ではないのか?

 なんせ、宝物庫のアイテム情報に関しては部外秘扱いが多いからな……。


「誰かが揉み消したんすかね? ……あ! これ、僕も宝物庫係の知り合いから聞いたトップシークレットなんで、誰にも言わないでくださいよ!?」


——こいつとは絶対に秘密を共有しないようにしよう。


「とにかく、間違って誰かに買われでもしたら大事おおごとだぞ! さっさと購買部に行って確認してこい!」

「ハイハイ……」

「ハイは一回!」

「ハ~イ……」

「伸ばすな!」

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