11【横山紅来】これはいいものだ
「なんですか、この鈍そうな女は?」
と、
――おおっ!? なんか面白そうなのか出てきた!
「ななな、なに? このクソ生意気な子供は!? って、
「いやあ……なんか面白いのが出てきたな、と」
「どこがっ!」
私を一睨みしてから、眉を
二人に問い
「えっと、こっちが後輩のメアリーで、こっちが華瑠亜ちゃん」と、雑に紹介を済ませる。
「で、その……メアリーちゃん? は、リリスちゃんたちとどんな関係が?」
華瑠亜の質問に、メアリーと呼ばれた幼女が直接答える。
「ツムリがメアリーのパパってことですよ」
「ツムリ? ……って、もしかして紬のこと?」
「あなたはパパのなんなんですか? なぜパパのことを呼び捨てにしてるんですか? ……そう言えば、カルアという名前に聞き覚えがありますね……」
カルア、カルア……と
突然、何かを思い出したようにメアリーちゃんがポンと手で槌を打つ。
「ああ、あなたがパパの愛人一号ですか!」
「はあ?」
「すみませんがパパとの関係はすぐに清算して下さい。ママ一筋にさせますので」
「ま……ママ? それってもしかして、可憐のこと?」
「そうですよ」
「解せぬっ!」
と、私の方を振り返る華瑠亜。
「紅来、どういうこと!?」
「いや、私に聞かれても……」
「どうなってんのよ、リリスちゃん!?」
「え~っと、ん~っと……話すとちょっと長くなるなぁ」
メアリーちゃん……これはいいものだ!
まさか本当に子供ってことはないだろうけど、ちょっとからかってみる?
「あの二人、裸で抱き合ったのみならず、一足飛びに子作りまで?」
私が煽ると、
「そんなわけないっつぅ――のっ!」
華瑠亜が拳を振り上げて私に突っ込む。
直後――。
「なんでそれを知ってるんですか!?」
「あなたは何者ですか!?」
「何者って、紅来だけど……ってか、ほんとに? あいつら、ほんとにそんなことしてたの!?」
聞き返すと、メアリーちゃんは二、三度大きく頷いて、
「それはもうバッチリシッポリですよ。部屋で布団を並べて裸で寝ていましたから、自然とそうなります」
「あ、華瑠亜ちゃんが倒れた」
「えっ!?」
リリスちゃんに言われて視線を転じると、華瑠亜がこめかみを押さえながら片膝を地面についている。
「だ、大丈夫?」
「ご、ごめん……ちょっと
「か、華瑠亜!?」
後ろへ倒れそうになった華瑠亜を支えようと
「大変にゃん!
「ええっ!? しっ、死んでる!?」
「目が、死んでるにゃん……」
一方、そんな騒ぎを気に留める様子もなくマイペースなメアリーちゃん。
「そんなことより、パパとママも呼ばなければいけません。早く、さっきの魔法円を作りなおしてください」
「いや、あれで作られるゲートは二つまでで、しかも、誰かが通ると消える仕様みたいなんだよ」
いつの間にか、紬と可憐のサンプルも瓶ごと消失しちゃってる。
つまり、リリスちゃんとメアリーちゃんがゲートを使ってしまったせいで、このアイテムは使用済みになってしまった、ってことみたい。
「じゃあ、メアリーたちは、パパたちを下に置き去りにしてしまったと言うことですか?」
「いや、でも、ちょっと待って!」
自分の両手を見下ろしながら叫んだのはリリスちゃん。
「私が消えてない、ってことは、そんなに離れてはいないはずだよ。まだ飛ぶことまでは無理そうだけど……」
会話を聞いていた勇哉が「そう言えば……」と、思い出したように口を開く。
「さっき、石を集めてる時に大きな縦穴があったな……」
「あんた、なんでそれを早く言わないのよっ!」
――お! 華瑠亜が復活!
「だ、だって、戻ってきたらおまえが『うっさい、黙れ、気が散る』って」
「ほんっとあんたは、無駄口が多いくせに、そんな大事なことを黙ってるとか……薄らバカ! 不調法者! おたんこナス!」
「おたんこナスて……
「で、どこよそれ!?」
「おう、こっちだ」
返事をして歩き出す勇哉の後を、華瑠亜たちが追いかける。
それを見てメアリーちゃんも、リリスちゃんをローブのポケットに突っ込みながら立ち上がった。
さっきリリスちゃんは〝後輩のメアリー〟って言ってたけど、見た目は全然違うし、同じ種族ってわけじゃないよね?
ってことは、紬の新しい使い魔ってこと?
ほんとあいつは、次から次へと面白いものを引き寄せるなぁ。
「感心感心。自分から私を運ぶとか、やっとメアリーも後輩としての自覚が出てきたね! でも、できればもうちょっと丁寧な扱いを……」
「飛べそうになったら飛んで下さい」
「え? う、うん……」
「パパが近づいたら、それで分かります」
「センサー代わりかな?」
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