08【ガウェイン】置き手紙

「ガウェイン殿……それは?」


 セレピティコから手渡された四つ折りの置き手紙を拡げて読もうとすると、声をかけてきたのは大長老のブランチェスカだ。


「これか? これは、新しい巫女シャーマン殿から賜ったご神託だ」

「シャーマン? セレピティコですか? 彼らと一緒に行かせたのでは?」

「行く前に手渡されたのだ。自分が戻らなければ、これに従うようにとな」

「なんと……いつの間に……」


 再び置き手紙に視線を落として、内容を読み進める。

 気が付けば、いつの間にか相好を崩している自分に気が付いた。


 もっとも、こんな控え目な表情の変化は、わしの髭が邪魔をして周りからは分からぬかもしれんな?


 読み終わると、近くで控えていた従者に指示を出す。


「すぐに長老会を召集せよ。今後の方針について話し合わねばならなくなった」

「ご神託には、何と?」


 従者が立ち去るのを見届けてブランチェスカが尋ねてきたので、儂は答える代わりにメモを手渡した。

 読み進めながら、ブランチェスカの口が、呆気に取られたように少しずつ開いてゆく。


 『一つ。守護家は無くし、みんなで協力して災いを退けること』

 『一つ。イケニエは禁止します』

 『一つ。ご神託が必要なときは、パパの家まで来てください』

 『一つ。セレップが最後のシャーマンです。次は選びません』

 『それではみなさん、ごきげんよう』


「ご、ごきげんようって……。こ、こんなものが、ご神託ですと!?」

「シャーマンがそう言うのであれば、そうなのであろう。我々は、それを信じるのみじゃよ。今まで通り・・・・・のう」

「こんなものをすべて実行するとなれば……今の仕組みを根底から作り直さねばいけませんぞ?」

「それも神のお告げだ。仕方あるまい」

「いやはや、大変ですなこれは……」

「これでゆっくり隠居生活でも、と思っておったのだが……死ぬ前の最後の大仕事が出来たようだ」


――セレピティコよ。シャーマンとしての初の託宣、しかと承ったぞ。

 

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