05.ノートの魔力
——せっかくだし、俺も何か書いておいてやるか。
とりあえず、ビ—ストテイマ—って設定で振られても正直ピンとこないんだよな。
いや、ビ—ストテイマ—という目の付け所は悪くない。
自分が就く
かといって魔法職も、呪文を唱えたり魔力の管理をしたりと、未知の部分が多すぎて何か想像の及ばない苦労がありそうだ。
弓道部を生かして
『コラ、紬! もっとシャンとしなさいよ、シャンとっ!』
……中学時代からの同級生、華瑠亜の尖り声が脳裏に浮かぶ。
夢の中でまで華瑠亜に叱られそうで、なんだか気が進まない。
その点、テイマ—なら戦ってくれるのは使役する魔物や魔獣だ。
遠近両用で
強さは使い魔次第だが、逆に言えば、使い魔さえ強ければ「俺
設定の段階でドラゴンでも神でも悪魔でも、強そうなやつを使役できるようにしておけば問題ないだろう。
防具も、まあ何でもいいとして……。
問題は武器か。
テイマ—と言えば、俺が昔やっていたゲ—ムでは楽器を武器としていた。
しかし、俺が演奏しことのある楽器なんて小学校の頃に習ったリコ—ダ—くらいだし、
夢の中だし、それくらいなんとかなるか?
いっそ、先入観にとらわれず、剣や杖でも使役できるように設定自体を変えるか?
もう一度頭を整理する。
とにもかくにも、基本方針は「俺TUEEEE」だ。そこはブレない。
自分が体験するなら、圧倒的な強さを持った主人公の方が楽しいに決まっている。
ノ—トに、とりあえず「おれつえ~」と書いてみる。
あとは、ビ—ストテイマ—をどんな形で「おれつえ~」なキャラにしていくか、そこを練り込んでいくだけだ。
——テイマ—ならやっぱり、武器より使い魔を考える方が先か?
と、そこまで考えてふと我に返る。
俺は一体、何をこんなに真剣に悩んでいるんだ?
謎のノ—トの魔力に催眠術をかけられていたような、そんな気分だ。
もう一度、ノ—トを閉じて表紙を眺める。
【こののうとに みたいゆめおかいてねると そのゆめがみれます】
改めて眺めてみると、どう考えても誰かのイタズラだよな、これ。
もしかすると、
——いや、だんだんそうに違いないと思えてきた!
LINEで確認しようかとも思ったが俺までバカにされそうなので思いとどまり、もう一度主人公設定のペ—ジを開いてみる。
冷静に考えれば、この通りの明晰夢が見られるなんていう超絶現実離れした話について、真剣に悩んでいることが急に馬鹿馬鹿しくなってきた。
それに、万が一……本当に万が一の話だが——。
この通りの明晰夢が見られることが分かれば、気に入らない設定なんて後からいくらでも変えればいいだけの話だろ。
夢の中のことなんて夢の中でどうにでもなるかもしれないし、今から真剣に思い悩むようなことでもないじゃん。
勇哉のバカさ加減は存分に堪能できたし、もういいや!
とりあえず「おれつえ—」とだけ書いておけば、それを見た勇哉がまた、勝手に強そうな設定を盛ってくれるだろう。
気が付けば、時計はいつの間にか夜十時を回っていた。
——バカ勇哉のせいで、俺の貴重なプライベ—トタイムが削られちまったぜ。
ノ—トをヘッドボ—ドの棚の上へ放り投げ、スマ—トフォンでゲ—ムを始めたが、そのままいつの間にか眠ってしまった。
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