6日目『いじめのさいご』

「あらぁ~...、ホントに来ちゃったの?」


「ホントにチーターの言った通りね。友達思いのいい子ちゃん...」


「...やっぱりお前たちだな」


睨んだ目で、チーターとシロクジャクを見た。


「やめろって言ったんだけどねぇ...」


タイリクは両手を挙げて、やれやれと言った様子だった。

この場に、隊長の姿は無かった。


「レッサーを何処へやったの!」


「大丈夫よ、変な事はしてないわ」


チーターは言った。


「...どうして、こんなことばっかりするんだよ?」


「どうしてって...。面白いからに決まってるじゃない」


シロクジャクが言った。


「そもそも、か弱い動物は強い者に狩られるのが定めでしょ?

フレンズは相手を襲っちゃダメだからいじめてるまでよ」


「チーター...、それは間違ってる!」


「うるさい。アンタに指図される筋合いは無いわ!」


怒鳴られると、タイリクが腕を掴んだ。


「なっ、何すんだよ!」


「君はレッサーに会いたいんだろ?なら、会わせてあげるよ」


「...っ」


力ずくで引っ張られた。



連れてこられたのは、外にある倉庫の前だった。


「まさか...」


すると...。


「ここに入ってなさい!!」


「あっ!?」


タイリクに背中を押されたと思ったら、

ガチャッ、とカギのかかる音がした。

暗い倉庫に閉じ込められてしまった。


「おいっ!!出せよっ!!」


扉を叩くと...。


「申し訳ないけど、私達のチームの評判を下げるような口は

封じなければいけないんだ」


タイリクの声が聞こえた。


「くそぉ...」


こうなる事は薄々予感していたが...。


「ミナミコ...ちゃん...」


奥から小さい声が聞こえた。

暗いので、その姿は良く見えない。


「レッサー!」


「なんで来たの...?」


「だって...、友達だからに決まってるじゃん!」


そう言うと、彼女の嗚咽が聞こえた。


「私の為に...」


「ここに何日くらい閉じ込められてるの?」


「...3日くらい」


「酷い...。ここから出ようよ」


「...もう、私はダメ...」


力ない声で、彼女は言った。



「....くそぉ!」


強く壁を蹴ったが、びくともしなかった。

レッサーも体力がない今、一人でどうにかできる問題ではなかった。



いつの間にか意識を失っていた。


「...ん?」


目を覚ますと、椅子に手足を縛り付けられていた。

目の前には...。


「お、お前たち...!!」


例の3人がいた。

そして、同じ様に縛り付けられ、

項垂れているレッサーパンダの姿もあった。



「何する気だよ!!」



「うっふふ...、汚らしい声だこと」


シロクジャクは嘲笑した。


「黙りなさい、奴隷。私達は、アリバイを作るわ」


「さよなら、だな」


タイリクがそう言うと部屋の真ん中にあった

丸い筒のようなモノの中にマッチを擦り、火を入れた。


モクモクと、白い煙がその筒から出る。


「じゃあね~」


「グッバイ、奴隷」


「残念だよ。君達には私のドレス姿を見てもらいたかったよ」


外に出ていくと、カギを閉められた。

窓も密閉されている。

手足も動かせない。


ただただ、煙が蔓延していくだけだった。


レッサーパンダは顔を涙でビショビショに濡らしていた。


「ゲホッ...、ゲホッゲホッ!!」


レッサーは咳き込む。


そんな状況を見て、心の底から私の心の中にある感情が芽生えた。

あんな奴らのせいで自分や、友達は死ななきゃダメなのか。

やられたらやられっぱなしでいいのか。


友達を守るって決めたのに、守れないのか。



悔しくて。悔しくて...。





「....ふざけるなよおおおぉぉぉおおおッ!!」




こんな声は、初めて出した。

レッサーパンダは驚いたように顔を上げた。


身体に力を込めた。


こんな縄くらい...、解けなければ。


「レッサーちゃん...!助けるからっ!!!」


そして、ブチッ、と縄の切れる音がした。


「ゲホッ...、ミナミ...、コ...、ちゃん...」



一方その頃。

隊長の運転する車で3人は離れた場所にいた。


「きっと1時間もして戻ってくればアイツらは一酸化炭素中毒で

死んでるだろ。そうすれば俺達のチームが傷付くことはない。

いじめの疑いも晴れるワケだ」


「ふふ、燻られて死ぬなんて、汚らしいあの子たちにとって真っ当な顛末だわ」


足を組み、扇子を仰ぎながらシロクジャクが言った。


「しかしまぁ、愚民と奴隷を一括処理して私達の名誉は傷付かないって、

よく思い付いたものよね」


チーターは腕を組んで言った。


「俺は完璧なチームを目指していたが...。レッサーは予想外に弱かったし、

そもそもミナミコアリクイはチームに招待する予定では無かった。

誤配送のせいでなぁ、とんだ災難だったよ」


独り言の様に隊長は呟いた。


「まあ、いいじゃないか。彼女達は不慮の事故ってことで。

後始末が終わったら、私は隊長と結婚して...、フフフッ...」


タイリクは妄想を巡らしていた。



車で拠点から出発してから数分経ち、森の中を通っている時だった。

急に茂みから、黒い物が飛び出してきた。


「ちょっ!」


「何だっ!?」


ブレーキを踏んだが間に合わずその物体に衝突した。



「ちょっと、何ですか!?」

「一体どうしたの...」


4人に怪我は無かったが、なにが起こったのかわからない。

前方には黒い壁のようなモノがある。


キシィイイイイイ...、という軋む音がした。


「車を降りろ!」


隊長の声で降りた。

車から降りたタイリクは言葉を失った。


「えっ...、これ...」


自分の身長の何倍だろうか。

巨大な黒いセルリアンが、片足を車に置き踏み潰そうとしていた。


「ふざけんな!こんな時によお!」


一旦距離を取り作戦を練る。


「任せて、隊長!こんなものくらい...」

「ええ。私達は完璧なチームでしょう?」

「フッ、デカブツを倒して表彰されましょう!」


「頼むぞ!」


隊長の掛け声と共にタイリクオオカミは、飛び上がった。


(大丈夫...!地上から見た時はデカいと思ったけど...!)


「とりゃああああっ!」


彼女が攻撃を振るおうとした時だった。


「えっ」


セルリアンは唐突に形状を変え、スライム状に変形した。

ゼリーのようになったセルリアンは上から来るタイリクを...。


「リーダー!?」


「そんな...!」


「ウソだろ!?」


隊長は目を見開いた。


「ッチ、舐められたモノね!!取り返すわよ、シロ!」


「もちろん!」


チーターとシロクジャクが、向かって行った時だった。

スライム状になった、セルリアンは触手を伸ばした。


「きゃっ!!」


声を上げたのはチーターの方だった。


「チーター!!」


「ちょっとアンタ!助けなさいよっ!!!」


シロクジャクに助けを求めたチーターは彼女の腕を掴んだ。

チーターも足で踏ん張るが、引く力の方が強く、セルリアンの方に

引き込まれる。


(まずい...、このままじゃ私までセルリアンにっ...!)


「ちょっと!!聞いてるの!?」


「チーター...、あなたとチームになれて良かったわ」


「それどういういっ...」


するとシロクジャクは左手の扇子で強くチーターの腕を叩いた。


「いやあ゛っ!!」


シロクジャクの腕から、チーターの手が離れた。


「ア、アンタ許さないッ...!!また生れたらアンタをいじ」


仲間を見捨てたシロクジャクは顔を引きつらせながら、全力で

ツバサを羽ばたかせた。


「隊長!逃げましょう!!」


「...クソッ!」



XがつXにち


まえのたいちょうは、ちょーかいかいこ?とかになったって

パークガイドがいっていた。

わたしたちをいじめてたってじじつもみとめたらしい。

あと、タイリクオオカミとチーターがセルリアンにおそわれたってこともきいた。


....いっしゅん、「ざまあみろ」ともおもったけど、やっぱりかわいそうだ。


わたしとレッサーちゃんは、よわいフレンズをたすけようって、きめた。

パークガイドさんにはなしたら、きょうりょくするっていってくれた。



あたらしくスタートをするんだ。


これからがほんとうの、だれにもいじめられない、あたらしいひびがはじまる。



ミナミコアリクイたちの拠点に、1人のフレンズが尋ねてきた。


「...シロクジャク?何しに来たの」


ミナミコアリクイは少し顔を顰めながら言った。


「え...、あ...、そ、その...。

い、いじめてたことは反省する...。

だから、ま、また...、い、一緒にやらない?」


「1人でやれば?」


ぶっきら棒に答えると。


「い、いや...、また...、セ、セルリアンがでてきたら...。

こ、こわっ、え、えっと...、な、ん...」


だいぶ動揺しているが、1人でいるとまたセルリアンに襲われるかもしれないと

不安なのだろう。

仲間を見捨てておいて、自分だけ助かって、後になってその罪悪感や恐怖に慄いてるの

かもしれない。


「じゃあ、シロクジャク。これで掃除してよ」


奥から出てきたレッサーパンダは古い雑巾を差し出した。


「な、何でよ!私が汚れ...」


ミナミコとレッサーの冷たい視線が突き刺さった。


「....や、やります」


彼女は大人しく雑巾を手に取った。


私達は、以前いじめてた彼女に同じことをしようとは思わない。

それは本当にやるべき事じゃないからだ。


探検隊に入って良かったか?


最初は良くなかったと思うけど。

今は、新しい友達も出来たし、自分も強くなれた気がする。


これから、頑張ろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミナミコ探検日誌 みずかん @Yanato383

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ