01-03「もう一人の人造勇者」⑧

「部隊長がやられたというのか!」


「あれは本当に人間なのか!? あんな化け物が!!」


 部隊長である魔族の戦闘力はこの部隊の誰からも一目を置かれていた。


 その彼をあっさりと殺せる程の力を持った人間。


 立ち向かう気概を持つ者が皆無でもまったくおかしくはなかった。


 恐慌パニックに陥った魔族たちが蜘蛛の子を散らすように逃亡を企てる。


 しかし、それを黙って見逃がしてくれるようなズィーベランスではなかった。


「オイオイ、つれなくすんなよ。もっと遊ぼうぜ」


 ニタリ。


 笑顔と表現するにはあまりにも攻撃的な表情を浮かべ、【暴力】を司る人造勇者は嗤う。


 その笑みを前に魔族たちの存在は蛇に睨まれた蛙そのものであった。


 そして。


 一方的な命の搾取が始まる。


 自分たちはこの世界の君臨者である。


 彼らにはその自負があった。


 彼らの力は絶対的であった。


 故に。


 背を向けて敗走するなど、思いもしていなかった。


 しかし。


 その屈辱的な敗走さえも許されない。


 悪夢のような殺戮の権化に為す術もなく命を奪われていく。


 魔族かれらに平等に与えられたのは「絶対的な死」であった。

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