第3話



「なるほど、こうですか?」


「そうそう、分かってきたじゃん」


「えへへ」



先輩に褒められると、なんかすごく嬉しい。



「じゃあ、ここはこうですか?」



次の問題を解いて先輩に見てもらうために顔を上げると、先輩と目が合う。



───ドキッ。



「え、先輩…?」



解いた問題を見てもらいたいのに…。


先輩は私と目線を絡ませたまま、微動だにしない。



「ど、どうかしましたか?」



先輩にそんなに見られると恥ずかしい。


思わず目をそらしそうになった時、先輩は口を開いた。



「ななちゃんっていい香りするね」


「えっと…」



なに、なに?なに!?


え、どーいう意味?!


プチパニック状態に陥りながらも、できる限り平常心を装う。



「あ、ありがとうございます」



先輩の方が、もっといい香りがしますけどね。


なんて、口が滑っても言えないけど。



「シャンプー、何使ってるの?」



そう言って今度は私の髪の毛を触ってくる由城先輩。



ひえー!



触られた瞬間、背筋がピーンと伸びる。


誰か、た・す・け・て…!



「それより問題をですね…」



ドキドキしすぎて心臓がパンクしそう。


先輩はそんな私を知ってか知らずか、私の髪の毛を触りながら呟く。



「勉強もうよくない?」



あ───。



そっか。


もう結構時間たったし、先輩も早く帰りたいよね。


甘えすぎちゃった。


なんか私一人でドキドキしちゃって恥ずかしい。



「すいません!もう一人でできますので、先輩は帰って下さい」


「は?」


「え?」



違うんですか?


早く帰りたいって意味じゃないんですか?



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