第6話 舞が怖い……。

 怖かった怖かった怖かった……。


 妹の目が……怖かった……。


 あの目は……なんだ? 悪魔と天使を合わせた様な、殺意と慈愛の目……。


 妹は僕に何かをしようとした……。


 僕はキッチンでポトフをよそいながらダイニングテーブルに座る妹の方をチラチラと眺める。

 妹は僕の視線に気が付くとニコニコしながら小さく手を振る。


 可愛い……いつもの妹だ……。


 さっきの妹は一体なんだったんだ? そしてあの手に持ってた鉛筆は?


 絵を描いていたと言っていたがそれは嘘だ、あの鉛筆で絵なんて描いたら芯がポッキリ折れてしまう。

 先端が細すぎる……針のように細い先端……何かを描いた形跡などない……。

 だとしたら……。


 ポトフとバケットを持ってテーブルに着く、正面には

 いつもと変わらない妹……。


「美味しそう~~いただきまーーす」

 そう言ってニコニコとポトフを食べる妹……。


「なあ……舞……」


「なあにお兄ちゃん」


「二人きりで……寂しくないか?」


「ん? お兄ちゃんがいるから平気だよ……お兄ちゃんがいてくれれば寂しくなんかないよ」


「そうか……」


「ねえお兄ちゃん……舞の事……好き?」


「勿論」


「舞もお兄ちゃんの事……大好き」

 そう言うとまたポトフを頬張る舞……でも僕は見逃さなかった……大好きと言った時一瞬また舞の目付きが変わった事を……。


 やはり舞は僕に何らかの感情を持っている……恨み? 妬み? いやそんな筈はない、運動も勉強も全てと言って良い位勝れている。


 マイナスな感情ではない……。


 依存か……ほぼ二人きりの家族……僕に依存している……。


 つまり……僕が誰かに取られるかも知れない……舞はそう考えている……のかも知れない……。


 どうすればいいか……このまま行けば僕は舞に……。


 他に愛する存在、依存出来る何かがあれば良いんだけど……彼氏? ペット?


 いや……僕に依存しているんだから僕が問題なんだ……。


 家族愛を違う愛に変える……そうか! そうだ……舞と僕が恋人同士になれば良いんだ。


 いや、実際付き合うとかじゃない、舞に恋愛感情という物を覚えさせる。


 僕と舞は兄妹、結婚出来ないんだからいずれ諦めるだろう……そしていつか他の男に……。


 そうか……それだ……でもどうすれば……。


 クリスマス……来月のクリスマス……そこで……。


 舞を僕に惚れさせる……クリスマス迄に。



 そうすれば……舞の異常行動は……治るの?


「お兄ちゃん!」


「は、はい!」

 ヤバい、何か感付いたか? 舞が真剣な顔で僕を見る……僕の背筋が凍る、緊張で身体が硬直する……。


「……ポトフおかわり!」


「…………あははは、はいよ」


 舞からお皿を受け取り、ポトフをよそう……。



 僕は舞を愛している……舞の為なら何でも出来る、舞いの為なら死ねる……舞になら殺されてもいい……。


 でも……僕が殺されたら舞は不幸になる……だから殺されるわけにはいかない。


 僕は舞が怖い……殺されるからではない。


 僕が殺されたら舞が不幸になるから……それが一番……怖い。




【あとがき】


この後クリスマス短編に続いていきます。

これでこの物語は一先ず終わりとさせていただきます。

良かったらレビュー等よろしくお願いいたします。

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ヤンデレ妹に付き合うのは大変です! 新名天生 @Niinaamesyou

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