第4話 うちの母は有名人
午前中は家で妹とまったりし、僕と妹は少し遅めの昼ご飯を食べに出かけた。
「お寿司食べたい」
と言う妹の一言で回転寿司店に向かう。
自慢ではないが家はかなり裕福だ、なので回らない店にも行けるが妹は敢えて回転寿司に行きたいと言う。
僕と向かい合って色々選んで楽しく食べられる、デザートが豊富と言うのが理由らしい。
僕と妹は駅前の回転寿司屋に向かって商店街を歩いていると前から二人の女子がこっちに向かって歩いて来る。
その二人の内一人は見覚えのある女子だ。
「あーー偶然~~何してるのお?」
二人組の一人、同級生の
学校では殆んど話した事はない……特に仲の良いクラスメイトって事もない……なのにテンションあげあげで話しかけてくる寒川……なんだ? 酒でも飲んでるのか?
「ああ、えっと……こんちわ……」
「あははは、こんちわだってうける……えっと、彼女さん?」
僕の隣にいる妹を見て寒川はそう言った……言われて僕は妹を見ると……な、なんだ? 何かどす黒いオーラの様なものが……。
「あ、妹だよ」
「へーー、あ、こっち私の中学の時のクラスメイトね、彼が例の
そういうや否やさっき迄めんどくさそうに僕達の会話を聞いていた寒川の友達のテンションが一気に上がる。
「ええええ! あ、あの?! わ、私お母様の大ファンなんです! わーーー凄い!!」
そう言うと寒川の友達は僕の手を両手で握りブンブンと上下に振る。
「あ、ありがとう……言っておくよ」
そう……うちの母親……実は世界的デザイナー……時々テレビ等に出る位の有名人なので時々こういう事が起きる。慣れっこな僕はいつもの様に社交辞令的な返事をしておく……そもそも滅多に帰って来ないのでいつ言えるか……。
「わーーわーー妹さんお母様にそっくり、綺麗、可愛い~~」
うつむき加減の妹、その妹の顔を覗き込む様に見る寒川の友達……妹は僕の腕をギュッと掴むと僕の背中の影に隠れる。
これもいつもの事……妹はコミュ障ではないが、こういう好奇心の塊の突然の攻撃には非常に弱い。
「あ、ごめん、僕達いかないと」
なんとかこの場を切り抜けるべく僕は寒川にそう言うと、学校では全く僕に興味がない癖にその友達に良い所を見せたいのかさらに追い討ちを掛けて来る。
「どこ行くの? 私達これから食事に行くんだけど、一緒にどう?」
「え? あ、いや……」
今から食事に、お寿司屋に行くといいかけた僕は言葉を飲んだ……うーーむどうしよう……。
妹完全に怯えている……。ここは断らないと……。
「いきましょうよ~~お母様のお話聞きたいなあ」
機先を制してグイグイと来る二人に僕は何も言えなくなってしまう。
仕方ない……ほんの少しだけならと……僕は妹にちょっとだけお茶をしようと言ってしまう……だってさあ、寒川って学校ではカースト上位だし……結構可愛いし……ここで無下に断ると僕の今後の学校生活に関わってくるし……。
妹は僕を一度睨むも仕方ない空気は伝わったようで、こっくりと小さく頷いてくれた。
「えっと、少しだけなら」
「きゃあああ、やったあああ」
僕達4人はすぐそこにあったファーストフード店に入った。
中に入ると寒川の友達、(武藤と言うらしい)は色々と質問してくる……が僕達の現状、母さんは最近は殆んど海外にいる為滅多に会えなく今はもっぱらメールのやり取り位だと話すと一瞬で興味は薄れて行く……まあ、これもいつもの通りなんだけどね……そしてその間妹はずっと黙ったままハンバーガーを黙々と食べていた。
結局母さんの話は一瞬で終わり、後はだらだらと学校での話をしだす寒川……僕と殆んど関わって居ない筈なのに寒川は意外にも僕の事を知っていた……これがカースト上位の実力なんだろうか?……なんだか僕に気がある様な素振りを見せながら1時間程そんな話をしていた。
「じゃあまた遊ぼうねえ~~」
「今度お家に遊びにいかせて下さい!」
そういって二人と別れ外に出る…………えっと……。
二人が見えなくなるまで手を振る僕……をじっと見つめる超不機嫌モードの妹…………。
「……ご、ごめん、えっと今から行く?」
「…………お腹いっぱい……」
「そか…………じゃ、じゃあ」
「……もう帰る……」
「そか……うん、また今度にしよう、ね」
妹はうつ向いたまま僕の袖をギュット握る。そして小さく頷いた。
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