第4話 学院に通ってどうなった?
日差しから感じる朗らかな心地を感じつつ、私は一匹で校舎の中庭で惰眠を貪っているのである。
本来であればたかが侯爵家のペットである私がこんな所に来ることなどできるはずもなかったのだが、素晴らしきご都合主義かな誰からもツッコミが入ることはない。
おっと、考え事をしている間に、授業が終わったのだろうか。気付けばエルフリーデが私の頭を撫でていた。本当にこれを至福というの時間とでもいうのだろうか。
しかし私という存在がご都合主義であるのと同じように、こんな時間が長く続くわけもないのである。
「ご機嫌よう、カロリングさん」
聞き惚れてしまうほどの優しく甘い、そんな響き。私は寝ぼけ眼で頭上高くから降りかかってきた声に方に視線を向ける。
視線の先には佇む三つの影。丁度真ん中に位置する方がこちらに声をかけてきたのでしょう。まだはっきりと像を捉えることはできませんが、私には声の主が誰かは察しがついていました。
「ご機嫌麗しゅうございます、アーレンベルク様」
スカートの裾を持ち上げながら会釈をするエルフリーデ。
相手はそれに満足げな笑みを浮かべならが、まさにテンプレートの一言。
「えぇ、今日もいいお天気ね」
いや、もうお昼なのですけど! なんですか、そのお約束みたいなセリフは? 面白くもなんとも……この方はレオノーラ様。公爵であらせられるアーレンベルク公の一人娘である。周りにいるのはレオノーラ嬢の取り巻き1と2とでも申し上げましょうか。
この3人、ずいとエルフリーデに近づき、まるで退路を断つかのように立ち塞がってくるではありませんか。
「ははは。そう、ですね」
さすがにエルフリーデも3人に突然囲まれてしまって萎縮している様子。
いくら学友であってもその態度は良くないでしょう。エルフリーデの足元で寝そべっていた私ももしもの時のために、4本の足で立ち上がります。
「少しお付き合いいただいて良くって?」
「そうよ、生意気なあの方を少し懲らしめに参りますわよ」
「え? 懲らしめにいくって……」
うわぁ……ここに来ていじめのお誘いですよ。皆さんお気づきかもしれませんが、この3人がアニメでも活躍していた悪役令嬢たち。わざわざヒロインをいじめるためにさらに頭数を揃えようとしているみたいです。
しかし目立ちたいとは思っていても、長年の私の教育が身を結んでいるためか、そんな誘いには簡単に乗らないのがエルフリーデのいい所。まぁ簡単に断ることもできないのですけど。
「どうしましたの?」
「アーレンベルク様のお誘いを無視なさるつもり!?」
喧々と投げつけられる取り巻きたちからの声。ビクリと体を震わせるエルフリーデ。
「いえ、わたくしは……」
「あら、せっかくアーレンベルク様がお声がけくださったのに、それをお断りになるの?」
「いつから貴女は目上の方に口答えをできるようになったのかしら?」
十分な否定もできるはずもなく、ただただまくしてられてしまうエルフリーデ。さすがにこの状況はかわいそうである。
「少し、都合が悪いだけで……」
口にする否定もどこか 弱々しい。仕方がない、ここは私が助け舟を出すほかないでしょう。
可能な限り低い唸り声を上げながら、私は震えるエルフリーデの前に立ちます。
今すぐにでもガブリと噛み付いてあげようかしらなんて思いながら、見下ろす3人を威嚇します。
先ほどまでの高圧的な態度とは打って変わり、後退りをする3人。
しかし彼女たちの動きよりも早く、私の体に覆いかぶさる影があったのです。
「こ、こら! ソフィー!」
「なんて不躾な犬なの!」
「アーレンベルク様を威嚇するなんて、不遜にも程がありますわ」
「そもそも学院にペットを連れ込むこと自体が常識外れだと思わないのかしら」
「それは……確かに仰る通りではありますけれど」
当初に考えた通り、私に非難の矛先を向ける取り巻きたち。
しかしその考えが間違っていることに今更になって気がついてしまいました。
私はなんて浅はかなことをしてしまったのか。私の態度はエルフリーデの立場を悪くするだけではないか。
しかも相手のトップは公爵家の令嬢。なんの口答えもすることなんてできません。
これは、本当にピンチかもしれませんよ!
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