3つの会話、3つの祈り
「"はぐれ"のウィル?」
「見たことないかな? 1匹だけでうろうろ歩いてるんだ。こう、ツノみたいの生えてて」
「いや、俺は知らない」
「や、あたしも遠目に何回か見かけただけでね。レーキに会う前の野良ウィルでも普通2匹以上固まってると思うから、気になって」
「それが本当なら、確かに妙な話だな。覚えておく。あいつらにも聞いてみる」
「てかいつの間にあんな大所帯になっちゃったわけ? 仕事捗るから嬉しいけど」
「例の作戦の後いろいろあったんだ、いろいろ」
「説明めんどくさがってるー!」
「まあ、騒がしく夜を越すのも悪くないぞ」
「ふーんだ。いいもん、あたしは孤高の旅商人なんだもーん。お供のウィルもいるし~」
「お前のやり方も認めているさ。ただ、1人で出来る領分には限界がある。他の誰もお前の味方にならずとも、『黒枝旅団』は力を貸す。その時が来たらいつでも頼れ」
「にへへへ、クサイねぇ。もしかしてそれが素の顔かな? 死んだ目で人間呪ってた時期が嘘みたい」
「……これからはミナトと呼んでくれ。俺の本当の名前なんだ」
「…………ああ、呪いが解けたのはキミの方だったんだね。初めまして、ミナト。また会いたいな」
「お前の往く先にもどうか希望があるように。また会おう」
「毎度あり。それじゃ、バイバイ!」
『――「祈りの果実」スキャン開始』
『
『各種生命維持装置、異常なし。レネゲイド活化抑制機構、異常なし。セキュリティ・ウォール、レベル3監視中、異常なし。映像及び音声同期開始。同期完了』
『「鑑賞者」の指示に基づき、
『……
『
『こちら
『よろしい。もう一度、繰り返します。
『………………。』
『………………。』
『………………。』
『……ダメみたい。僕たちだけだよ』
『そうですね、「鑑賞者」からの知らせの通り、ウィル・クリスタルの制御は刻一刻と難しくなっています。
『レーキの「果実」への適合はどうなったの?』
『残念ですが全員失敗しました。4名死亡、2名は一命をとりとめましたが心身へのダメージが酷い。設備の許す限りの治療を行っていますが、持ち直せるかどうかは……それほど、
『確保していたレイク・オーヴァードが全員再起不能なら、補充はどうする』
『同じように地上から招くほかありません。通常のオーヴァードは
『
『もちろん。クリスタルの制御の他にも「鑑賞者」とのやり取りは最後まで続けなければなりません。私も、いつ話せなくなってもおかしくありませんから。その時は、この役目は貴方がたのうち誰かに移るでしょう』
『……なぜだ』
『
『なぜ……俺たちでは駄目なんだ。「果実」になることを決めた者、俺たちも、眠った4人も、適合に失敗した奴等も、願いは同じだった! 間違いを正したかっただけだ、失わずに済んだものを取り戻そうとしているだけなのに、なぜ選ばれない? 何が違うと言うんだ、俺たちとレーキの、何が!』
『
『…………、』
『それは貴方だけの想いではない。私たちもそう、そして、一番に悔やんでいるのは……「鑑賞者」なのです』
『「鑑賞者」は次の手を打っています。私たち8つの「果実」が堕ちる前に、
「――――……ふん、本当に何もないのだな、今の地上には」
『 』
「……活動できないわけではないが、この砂で動きづらいし視界も悪いし気分も悪くなってきたな。いや、活動できないわけではないが」
『 』
「支障あるわ、バカモノ! だからせめて風除けがありそうな都市近辺に落とせと言っただろう!」
『 』
「ぐっ……わかった、この話は止そう。残された時間も多くはないのだからな」
『 』
「……いいだろう。作戦を開始する」
ダブルクロス The 3rd Edition キャンペーンシナリオ『The Sandy Planet』
第2部『No.9』
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