十六話

「……師匠は、『君さえ良ければ、このまま滞在してくれて構わない』って、言ってくれたんだ。でも……」


 それは謝罪の意味も含まれていて、申し訳なく感じたこと。

 思うように弾けなくなったギターの音は、師匠を余計に悲しませるような気がしたこと。

 それから……原因となった場所に、一瞬でもいたくないと思ってしまったこと。


 帰国に至るまでを聞いた澪は、そう、とだけ返した。

 突き放すのではなく、友紀人の気持ちを受け止めた上での返答だった。


「……昔と、同じだ」


 その顔は笑っているのに。

 澪には、泣いているように見えた。


 友紀人が言った『昔』とは、同級生同士の仲違いを、澪に相談した時のことだろう。

 今回も、まず師匠のことを考えた。

 相手を気遣える友紀人の本質は、変わらないままだった。

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