第四話 第四次 川中島合戦(八幡原の戦いの壱)
前回の上野原の戦いで、信玄は「信濃守護」に任ぜられ事実上「信濃はお任せしましたよ」的な名目を、かたや謙信は「関東管領」の職を譲り受け「関東地方も守ってね」的な名目を手に入れる結果となった。この事により、信玄は謙信に戦を仕掛ける「後ろ盾」を得る形となった。謙信は「大義名分」を後ろ盾にしているため、攻められたら戦うという姿勢は持ったままである。以前まではお互い睨みあいが続き、戦では雌雄が決していないと言う事実は残ったままであったが、こうなった以上お互い引くに引けない。
時は1561年8月、ついに最大の戦没者が出た「八幡原の戦い」が勃発。四度目の謙信と信玄の対決となった。
先に川中島に到着したのは謙信。約1万8千の兵力で妻女山(川中島でも甲府寄り)に陣を構え信玄を迎え撃つ。一方、信玄も約2万の軍勢を率いて謙信の布陣地から4km北西の茶臼山に到着。謙信と目と鼻の先の位置取りである。その後、信玄は自身の要城である海津城に移動。今度は謙信の東側に位置取った。
9月9日深夜、ついに信玄は別動隊である高坂昌信、馬場信春らが謙信が陣取っている妻女山を奇襲。西から攻め、背後から謙信の部隊を前に押し出したところで挟み撃ちを狙うという、これが世に言う「啄木鳥(キツツキ)攻撃」である。
首尾よく実行した、と思われた。しかし、謙信は妻女山には居なかった。信玄の夜襲を謙信は見破ったのだ。夜襲を察知した謙信は合戦の地になる「八幡原」に向かって進軍していた。
(高坂)しめしめ。謙信のやつ、まさか俺たちがこんな夜更けに本陣に攻め入るなんて思ってないだろうな。
(馬場)そうとも。これで挟み撃ちすればイチコロさ。褒美は貰ったようなもんだ。
(高坂)そうさな。何貰おっかなぁ~やっぱり領地よな。「男は黙って領地!」だな
(馬場)俺は綺麗な嫁っ子だな。それと領地!
(高坂)おまえ、欲張りだな。まぁいいか。よし、攻め込むぞ!
(馬場)おうよ!って、あれ?誰も居ねぇぞ。
(高坂)はぁ?いねえ。どういう事?
(馬場)あ、ヤバい!見抜かれたか!で、どこ行ったんだ?
そこには何故か鼻たれ坊主が佇んでいた。
(高坂)おい、坊主。ひとつ聞くが、ここに侍がいっぱいいただろ?
(坊主)うん。いっぱ~いいたよ。
(高坂)そいつらどうした?
(坊主)いつの間にか居なかったよ。
(高坂)いつの間にか、ってどういうことだ?
(坊主)夜だし、こんなに霧が濃かったから少し霧が晴れた時はもう居なかったよ。
(高坂・馬場)なにぃ~?やっちまったな!
(坊主)あ、それから頭巾を被った大きな人からこれを預かったんだ。
坊主は一片の紙切れを差し出した。高坂はその紙切れを開いた。
(高坂)「残念!はずれ!ご苦労さん。謙信」だとぉ!なめやがって!
(馬場)おい、そんな事より早く親方に伝えねぇとヤバいぜ、マジで。
(高坂)そうだな。退却じゃ!
信玄の策略は謙信に先読みされ失敗。高坂・馬場の別動隊は妻女山から八幡原へと向かう追いかける形で謙信を背後から攻める形となった。
謙信は八幡原に向かう軍勢とは別に、その北になる「陣場河原」に直江隊を配備し信玄の侵攻を迎え撃つ計略に出た。
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