第二話 第二次 川中島合戦(犀川の戦い)
謙信、信玄初対峙から二年後の1555年夏、再び犀川の戦い(犀川は現在の長野市より少し南の茶臼山付近を流れる河川)が勃発した。夏に始まり、2か月間以上にわたって両軍の睨み合いが続いた。
謙信の戦における「大義名分」は、前出の村上義清などの北信濃衆を信玄から守り、奪われた領地を奪還することにあった。
しかし、夏場に二か月間以上戦が続くと流石に兵士も疲れてくるのは当然である。が、そうであっても君主のために戦うのが彼らの役目ではある。 ただ、謙信の「大義名分」はあくまで「地元君主の侵攻された領地を奪還する」事なので兵士らの
「褒賞」は見込めない。なので、越後から出てきた兵士たちのモチベーションはダダ下がりになっていた。
(越後衆:あ)おい、この戦いつまで続くんだよ。暑くてたまらんなぁ。
(越後衆:い)そうだよな、いくらお頭の為でもきついぜ。しかも褒美があんまり貰えねぇようだと聞くぜ。
(越後衆:あ)マジで?そんなんじゃ、やってられねぇよな。
(越後衆:い)そうだろ?さっさとかたがつかんかなぁ。
(謙信)再びこの地に赴いたのはいいが、信玄もしつこいなぁ。そんなに領地広げて何するんだ?しっかし、うちの兵士たちは暑いとは言え働かんなぁ。何とかせにゃいかんな。
すると、謙信は越後衆兵士らに「一生懸命頑張ります」的な「宣誓文」を書かせた。兵士たちは嫌々戦に向かう事となった。
かたや信玄は士気を高めるため、兵士に「褒賞」を約束するとして北信濃に赴いている。兵士たちのモチベーションは高い。
(信玄)皆の者、よく聞け。もし北信濃をわが領地にした暁には褒美として領地を与える事を約束しようぞ!
(甲斐衆:あ)え~マジか?おお、親方さま。じゃぁ、いっちょ気張りまっせ!でも謙信軍は強ぇから、なかなか北信濃を攻め込めねえぁ。しかもこの戦、長げぇし!
結局、信玄の盟友である駿河の今川義元が仲介に入り「景虎(謙信)を頼った北信濃衆に旧領地を戻す」という事で和解した。よって、この戦は謙信の有位で終結することとなった。
(謙信)おい信玄、この戦一旦暑いからやめねぇか?二か月以上こんなんだぜ。
(信玄)何言ってんだ、謙信!こっちだってわざわざ山超えて来てんだ。ちゃんと俺たちと戦えや!
(謙信)そんな事言ったってよぉ。うちの兵士がへばって動かねえから「働きます」って一筆書かせておいたけど、そんな状態で勝って嬉しいのか?「風林火山」だか何だか知らねぇけど、こんな状態でうちらに勝ったところで他の武将はどう思うんだろうな?信玄さんよ!
(信玄)ぬ、姑息な!お前だって俺に勝って一旗揚げてぇんだろ?ご立派な「大義名分」を拵えてるようだが、とどのつまりは俺たちとそう変わんねんじゃねえのか?
(義元)まぁまぁ、お二人さん熱くならんで下さいよ。ここは私が調整しますから。
(謙信)貴様、信玄とデキてる今川義元だろ?お前ら、同盟結んでるからって適当にごまかすつもりか?そんなの許さんからな!
(信玄)謙信よ。おまえなぁ、今川さんが遠方遥々よりうちらの長い戦の和睦のためにご足労かけてんだぜ?その事も頭に入れろよ。このたわけが!
(謙信)そんな事わかってるわ!で、どうすりゃいいの?今川さんよぉ。
(義元)謙信さんの意向を汲みますよ。
(謙信・信玄)え~!
(信玄)義元さんよ、いくら何でも謙信に有利な条件では譲れんぜ、ここは。しかもうちら同盟組んでんじゃん!
今川義元は信玄に耳打ちした。
「ここは謙信に譲っておいて、後に困ったらこの事を引き合いに出せるはずです。今のうちに恩を売っておいた方が得策かと」
すると信玄は頷いた。
(義元)おほん、謙信殿。ここは「あなた様の元に助けを求めて来た北信濃の方々の代理戦争」という扱いですので、武田様がそなたの軍勢を破れずさらに領地を荒らした事実を鑑みて、あなた様にすがって来た人たちの領地を差し戻すという事で落ち着かせませんかね?
(謙信)うっ、まぁ、そなたがそこまで言うならそうしてやってもよいぞ。仕方ねぇな。
(信玄)けっ、何言ってやがる。折角、戦のかたがつきそうだったのに。まぁ次回だな。首でも洗って待ってやがれ!
(義元)では、これにて一件落着。
こういう感じで「犀川の戦い」が終息したか定かではないが、二か月以上に及んだこの戦いに終止符が打たれた。
しかし、両者は戦を重ねる事でお互いを認め合う「情」の様なものが根底に沸いて来ていたとさ。
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