第3話

「うぅぅ……嬉しすぎるよー、もう完全にやられちゃったー」


 私たちは今、なつ君をリビングに残して怜子ねぇねの寝室に来ている。


「こんなサプライズ……夏希君はずるいです……」


「そうですね……なつ君が甘いのはわかってたけれど、もぅどうしよう……顔が戻らないよ……」


「こうなったら計画通り、いえ、それ以上にするしかありませんわね」


 私たちは怜子ねぇねの言葉に頷き、急いで着替えを始める……私たちの計画、それは『クリスマスと言ったらサンタコスでしょー』と言う孔美の甘言に惑わされ……いえ、まぁ、あわよくばなんて考えもあるけれど、いつもと違う私たちで迫ってしまおうというものだ。


 明莉ねぇねは真っ赤でポイントに白いレースのあしらわれたチューブトップのブラとショーツ、その上からオフショルダーでサンタカラーの上下……もちろん、ミニスカートだ。


 怜子ねぇねは……何と肩ひものない黒のブラにショーツ、ガーターを付けている……その上からホルダーネックの同じくサンタカラーの膝丈ワンピース。サイドに大きくスリットが入っているので綺麗な脚がちらりと見える……。


 そんな2人に見惚れつつも私も急いで着替える。

 赤いレースのチューブトップにサンタカラーの前開きポンチョ、レースは大きくあしらってあり、胸の半分が透けて見えている……けれどあえてポンチョの前は閉じなかった。

 下には黒のショートパンツに白のオーバーニーソックス。


「えっ!? 孔美それでいいの!?」


 これで大丈夫かなと、部屋にあった姿見で確認をしていたところ、明莉ねぇねが驚きの声を上げる……そう言えば孔美ちゃんはこっそり着替えていたようで、私の視界には入っていなかったな……。

 どんな服にしたんだろう、と孔美ちゃんを見ると……赤と白のストールを首に巻き、白いキャミソールにローライズの赤いホットパンツ……そしてどこで見つけたのか小さなトナカイの角が付いたカチューシャをしている。


「くふふっ、なつはねぇ……私のお尻が好きみたいよー? いっつも後ろからシてくるしー」

 

 そう言いくるりと回った孔美ちゃんのお尻は……ぴっちりとしたホットパンツで隠れてはいるものの3分の1くらいは見えてしまっているし、形もはっきりわかってしまう。

 あれ……もしかしなくても孔美ちゃんその下、履いていないよね!? え? それともまさか……紐パンとか……?


「おっぱいじゃ皆に勝てないしねー? 私はお尻と太ももで勝負なんだー!」


 そっか、なつ君後ろからが好きなのか……なんて考えていたら、2人も同じことを考えていたのかもしれない、目をとろんとさせ頬を赤く染めている……。


「それじゃー、待たせちゃってるしいこっかー!」


 勢いよく部屋を出ていく孔美ちゃんに続いて私たちもお揃いのサンタの帽子を被ってリビングへと向かう、喜んでくれると良いな……。



――――


 

 リビングに居たなつ君は私たちの姿を見た途端、ぽかんと口を開けて固まっていた……。


 どうかな、似合ってるかな……変なところは無いよね、多分……あったとしても孔美ちゃんのインパクトの方が強そうだけれど……。


「ごめん、見惚れてた……皆凄く似合ってるよ」


 ようやくなつ君が口を開く、良かった似合ってるって言ってもらえたよ。


「それじゃあ、皆で乾杯しよー! はい、飲み物取ってねー」


 椅子には座らずに立食の形式をとり、イルミネーションの明かりを灯し……キャンドルにも火をつける。

 外はすっかりと暗くなっているが、ここはマンションの最上階。近くに同じような建物もないしとカーテンを開け放った窓の先には私たちの街の夜景が広がっていた。 



「「「「「メリークリスマス!」」」」」



 さぁ、パーティの始まりだね。


 明莉ねぇねと私はサンタの格好のまま料理を次々と仕上げていく。少し温めたりするくらいだし、油を使うものもないようにしたから汚れてしまうと言う事もない。


 なつ君と孔美は早速卵焼きに手を付けている……美味しそうに食べる2人を見ていると作ったかいがあったというものだよね。

 

 料理の仕上げが終った私たちも少し遅れてパーティに参加、すぐになつ君が来てくれて「美味しいよ、ありがとう」と私と明莉ねぇねに言ってくれた。


 皆でわいわいと騒ぎながらのクリスマスパーティはとても楽しく、料理もどんどんと無くなっていく。

 でも、なつ君? 孔美ちゃんが歩くたびにその後姿を目で追うのはどうかと思うんだけどなー? 



 ひとしきり騒ぎ、食べたところで「そろそろケーキを食べよう」というなつ君に誘われてケーキの前に集まると……きっと待っている間に用意したのだろう、並べられた4本のナイフには其々、ピンク、白、黄、赤のリボンが巻かれていた。


「こうしてみると、改めて照れるね……」


 明莉ねぇねが呟く……クリスマスパーティのはずだったのにこの瞬間だけまるで披露宴だ……新婦は全員サンタコスチュームだけれど。


 指輪を貰った順番にと言う事で、私がナイフを取るとそっと上からなつ君が手を添えてくる……大好きな人と、大好きな人たちに囲まれてのこの瞬間はきっと一生忘れる事なんて出来ない……今までで一番幸せだと感じた瞬間だった。


 私たちは一刀ずつ確かめるようにナイフを進め、綺麗に4等分されたケーキを思い思いに食べていく……孔美ちゃんは当然頬が膨らむ位口に入れている……あ、なつ君に口元を拭われてる……いいなぁ。

 怜子ねぇねも甘いものが好きみたいでとても幸せそうに食べている、それでもどこか優雅に見えるのはさすがだな……なんて思っていると、ケーキを食べ終えた怜子ねぇねが冷蔵庫から何かを取り出してきた……チョコ?


「少しビターなものもいかがかしら? ですわよ」


私と明莉ねぇねはその申し出を受け、ケーキの合間にチョコを口へと運ぶ……確かに少し苦みがあるチョコはケーキの甘さと相まってとても美味しい。

 

 ついつい、いくつも口に運んだところでなつ君が食べ終わったお皿を持って私たちの所へやってきた……。

 

「3人でどうし……あれ、それって……」


 ん? チョコがどうかしたのかな? ふふふ、なつ君たらそんな焦った顔しちゃって……可愛いなぁ……。


「夏希君、ケーキのお代わりですか? あ、それじゃあ私のをどうぞ……あーん」


「あ、なつ君私のもどうぞ? はい、あーんして?」


「あら、それではわたくしも……夏希様、あーんしてくださいますか?」


「あー! わたしもするー!」


 ケーキを持った私たちから後ずさるなつ君は……そのまま追いやられたかのようにソファへと座り込む。


「ま、待て……は無理だから……な?」


「ふふふっ夏希様なら……大丈夫ですわよ、だっていつもあんなに激しいんですもの」


「そうですね、私と孔美を一緒に相手したって平気ですし……4人くらいなら」


「そうだよね、夜もこれからだし……ふふふ」


 なんだろ、凄くふわふわして思考が纏まらない……あぁなつ君可愛いなぁ……。


「あれ? なんか3人の様子、変じゃないー?」


「孔美、3人を止めてくれ……まさか、を食べるだなんて……!」


「んー? もしかして3人とも酔ってるの!? え? チョコだよね!?」


「怜子は数個食べるだけでも酔うんだよっ! まさか美央や明莉まで……んぅ!?」


 孔美ちゃんと何かを話しているなつ君……こっちを向いて欲しくてその口にケーキを入れる。あら? 口元にクリームが付いちゃった……取ってあげなきゃだめだよね?


「んん゛っ!?」

 

 ナプキンは見当たらないし……舐めちゃえばいいか。んふふ……あまぁい……。


「あー! 美央ちゃんずるいよー!」


「ぷぁっ! く、孔美ずるいとか言ってる場合じゃ……んむぅっ!?」


 私が離れた横から怜子ねぇねがなつ君の唇に吸い付く……あぁ、またシたくなっちゃった……ぺろりと自分の唇を舐めて感触を思い出す。


「もー! お姉ちゃんまでー! お皿とか片付けないとダメなんだからね! いい? まだダメなんだからね!?」


 大慌てでテーブルを避けたり、お皿を片付け始める孔美ちゃん……ダメって2回言うってことは……良いよって言うことだって聞いたことがあるかな?

 

 しゅるりという音を耳にして横を見ると。息を荒げた明莉ねぇねが着ていた服を脱いでいた……露わになる白い肌はイルミネーションの明かりに照らされてとても綺麗……。

 私も、と服に手をかけるとソファに押し倒された状態のなつ君が怜子ねぇねに服を脱がされているようだ。

 その怜子ねぇねもスカートは捲れ上がり、黒のショーツとガーターが露わになってしまっている。

 

 熱くなっている自分のお腹を感じ……私はそのまま着ていた服を脱ぎ捨てた。


 さぁ、パーティはこれからだからね……なつ君。



 どこか遠くで「あー! ダメって言ったでしょー!」なんて声を聞きながら、私たちはこの恋に溺れていく……。




――――




 怜子ねぇねが本当に情熱的だったり、明莉ねぇねが責めに弱かったり、孔美ちゃんがとても敏感だったり、なつ君は後ろからが好きだって身をもって知ったことだったり……そして幸せいっぱいの朝を揃って迎えたのは、また別のお話。




 ここから先は私たちの時間だから……それでは皆さん、メリークリスマス♡

 

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