目覚めても始まらない物語

岸神 黎羅

始まるより前の始まり


「・・・」

「・・・」

「・・・ここは?」

「(お前は、インツィオ)」

「誰?」

「(・・・ここには何もない)」

「俺は?」

「(お前は、インツィオ)」

「俺は、インツィオ?」

「(・・・)」

「お前は?」

「(・・・)」

「・・・」

「(・・・)」

「・・・」

「(お前は今まで寝ていた)」

「…!?」

「(そして目覚めた)」

「目覚めた?」

「(見てのとうり、ここには色も形もない、何もない世界だ)」

「あぁ…」

「(お前は、全て知っている)」

「はぁ!?」

「(目覚めてはいるが、始まらない)」

「何が?っていうか、お前は誰なんだ‼?」

「(・・・俺のことは、俺とお前が最も等しく知っている)」

「えぇ?」

「(・・・)」

「あっ!!」

「(…!?)」

「俺の目的って、なんだ?」

「(きづいたか?)」

「教えてくれ、俺の目的は、なんだ?」

「(お前に目的なんか無い)」

「!?」

「(どうかしたか?)」

「俺はなんで、こんなにも知恵が豊富なんだ?」

「(・・・)」

「言葉は?何故俺は言葉を知ってる」

「(おまえは、全てを、生まれる前から知っている)」

「全て?」

「(だが、お前は唯一、お前が生まれた意味を知らない)」

「俺が生まれた意味?じゃあ、俺の意味って、何だ!?教えてくれ!!」

「(無理だ)」

「何で!?」

「(それは、お前が考えることだ)」

「…!? なぁ、俺の名前って?」

「(インツィオ)」

「インツィオ?」

「(そうだ)」

「インツィオって確か・・・始まり?」

「(・・・)」

「Inizio(イニーツィオ)イタリア語で始まり?発音は少し違うが、多分そこからきてるんだろう」

「(で、どうするんだ?)」

「始まり、俺の名前、俺が生まれた意味」

「(もう、解ってきたみたいだな)」

「俺が、何かを始めろと言うのか」

「(そうだ、回りには誰もいないから)」

「だから、俺は、流される物語ではなく」

「(お前の手によって紡がれる物語を)」

「ふっ、何だ、簡単なことじゃないか」

「(簡単?)」

「あぁ、単に物語を紡げばいいんだ」

「(と言うと?)」

「おいおい、今さらとぼけるなよ、お前は俺なんだろ?概ね検討ついてんじゃないの?」

「(鋭いな)」

「あ、そうだ!」

「(!?)」

「お前の存在理由は何なんだ?」

「(…!? お、俺は・・・)」

「なんてな、解ってるよ、お前は俺で、俺の案内人だ!そうだろ?」

「(あ、あぁ、そうだな。《何だ!?もてあそばれてるのか?俺が?》)」

「そうなるね」

「(なっ!! 聞こえていたのか?)」

「もちろん、お前が言ったんだぜ?お前は俺だって」

「(なんというやつだ、知恵をつけるのが早いな)」

「ふぅ、さて問題」

「(これからどう物語を始めるか、か?)」

「あぁ、」

「(なんの素材もなしには何も造れない)」

「じゃあさ、素材をかんがえるか」

「(一つ、いいわすれていた)」

「なに?」

「(お前は創造する力を持ってる)」

「どういうことだ?」

「(お前は、想像したものを具象化する力がある)」

「へぇ~」

「(何か、創造してみろ)」

「んじゃぁ、こんなの?」

「(正方形 立方体)」

「うわっ、何これ」

「(お前が想像したものだろ)」

「まっ、まぁそうだけど」

「(これがお前の力だ)」

「なるほど」

「(では、始まりにもどるか)」

「だな、んじゃ、なーにつくるかなぁ」

「(簡単に言うなぁ)」

「ん~・・・じゃぁ、とりあえず」

「(円か)」

「違う、球体だ」

「(これで、なにをつくるんだ?)」

「作るのは、俺じゃない」

「(?)」

「物語を真に紡ぐのは、こいつらだ。

おれは、物語を鑑賞する者だ」

「(一本の太い棒、その両端に二本の細い棒、太い棒のてっぺんとされるところには太い棒より少し小幅がさめの球体が付いている これは?)」

「自律軌道型人構彩現素粒子」

「(よくわからん)」

「まぁ、見てな」

「(・・・!?)」

「(爆発し、何かが膨張している)」

「空間をまず作る」

「(なるほど)」

「これはあくまで、始まりに過ぎない」

「(ほう)」

「次は惑星を作る」

「(惑星?)」

「物語を紡いでくれる人間達が生きていくのに必要な環境さ」

「(・・・)」

「その物語は、長い時間をかけて全てがひとつになる物語」

「(一体どんな物語に)」

「(笑)俺にもわからないよ」

「(見ていけば全ての答えが出るのか)」

「答え、ね」

「(どうした?)」

「答えはもうでてるんだよねぇ」

「(なんだ?それは)」

「まぁ、見てみろって。」

「(・・・)」

「全てのスタート地点から、一つのスタート地点に進んでいく物語を」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

目覚めても始まらない物語 岸神 黎羅 @Realpha_ENDLESS

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ