大鎌と処刑人 刑場 ユノ視点
厳重に閉ざされた何重もの鉄格子を開錠する度に、その鍵の量と重みにうんざりする。
朝、シェルに報告され、妹のマリンがリヴァイアサンの後任に就任した事を知らされた。
最近は随分、刑場の方が忙しく会う暇もなかった。
これからは来るべき世界の終わりの日、終末の獣として任務を遂行するまで青の部屋に住まわされる。
………住まわされるだけ?
そう報告を受けたが、いざ面会を申し込むも許可はおりなかった。
兄である俺ですら何故許されないのか?
青の部屋からマリンが出るのは、いつになるのだろう?
俺達天使は寿命がない。それでも、不安だ。
他の部屋では既に刑罰と称した私刑。
痛みに苦しむ悲鳴が、暗く冷たい廊下に反響している。ここに来たばかりの時は聴いてるこっちが気が狂いそうだった。
俺は最後の錠を開け、ぶ厚い鉄の扉を開く。
「……あ……、おはよう…ございます」
seaがおずおずと頭を下げる。
俺に担当が変わってから一週間。流石は神獣か。腕や顔の痣もすっかり消え、白い肌に戻ってきた。深海の様な深い青色の髪が水面のように輝いている。
俺が何もしないんで、こいつはこいつで困惑してるだろうな。
とりあえず部屋を見渡す。
異常なし。
口枷だけは外して置いたが、魔法の一つでも使うかと視野には入れていたけど。昨日のままだ。
武器になるようなものも無い。朝食の器具類にも異変無しの報告。
本気で処刑を望んでいるのか……おかしなものだ。
「枷、外すから。濡れタオルはそこに」
「はい」
この魔力封じの枷も改良して欲しいものだな。床に固定されていると、俺達も俺達で不便だ。
垂れ流しにさせている担当も多いが、糞尿と共に一日中同じ部屋で監視するとか、俺は無理だ。
身体を拭っているseaを見ながら、ふと長い睫毛に目が止まる。
青い髪に、青い睫毛と眉。
水の魔力を持つ者の特徴。
妹は俺と同じ黒髪だ。
リヴァイアサンになって、身体も変わったりするんだろうか?
マリンはこれからどうなる?
駄目だな。悪いことばかりが頭を過ぎる。
「----------------♪--」
seaの口から突如出た鼻唄に、俺はなんの反応も出来なかった。
だが、目が合ったseaが我に返った様に、俺に気まずい面持ちで頭を下げた。
「………失礼しました」
「別にいいけど」
彼女は一代目のリヴァイエルだ。この刑場に来るまでの何千と言いう刻を青の部屋で過ごした。
「なぁ」
「はい。なんでしょうか?」
「青の部屋……どんなところだった?」
「…………???」
マリンは今、どうしている………?
「なんでもいい。話でもしないか?
青の部屋の事とか……不便とかなかったのか?」
Seaはまだ生乾きのローブを羽織ると、ゆっくりと語り始めた。
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