Season .2 模造された女たち

Act.12 New game

そこは、ワインレッドの壁紙が貼られた部屋だった。

部屋の中心にはやや大きめな卓。

その上には・・・カラフルなシートや分厚い本、サイコロ、鉛筆などが置かれていた。

アナログゲームを遊ぶために、必要なものだ。

椅子は扉側と窓側の二席。

扉側からして左側・・・窓側からして右側には、背を向いているソファーと、こちら側を覗き込むテレビが・・・当たり前だが静的に佇んでいた。

ニトクリスはソファーに英字新聞を放り、どっかりと窓側の椅子に座り込む。

そして・・・卓の上のサイコロを手に取り・・・ゆっくりとその形状を観察し始めた。

サイコロはよく見かける正方形のタイプ。

しかし・・・描かれているものは、お馴染みの小さな円で表された数字ではなく、

旧き印エルダーサインや奇怪なシルエットのようなものだった。

見つめてはみたものの、賽を振るにはまだ早すぎる。

人数はまだ集まってはいない。

ニトクリスは椅子にもたれ掛かり、ふとため息をついた。

天井の明かりを見つめてみたりもする。

LED・・・。

記憶をたどってみて・・・先ほどまでは蛍光灯だった気もするし、豆電球だった気もする。

全開のプレイからいつぶりだっただろうか・・・。

・・・忘れた。

思い出すのも億劫な気がした。

刹那、扉からノック音がした。

ため息交じりに、どうぞ・・・とニトクリスは扉の向こうに呼びかける。

失礼します・・・と声がして、扉が開かれた。

アイリーンだった。

ニトクリスは試しに聞いてみた。

「誰だ?貴様が今度のゲームマスターか?」

ふむぅ・・・と、アイリーンは困り顔を浮かべた。

そして答える。

「このゲームに決められたゲームマスターなんていませんよ?そもそも私たち初対面じゃないでしょう?」

「そうかもしれないしそうでない気もする。試しに初めましてと言ってみたりもする。」

「何回目のゲームでしょう。」

「私は知らん。何回目でも私は楽しんでプレイして、楽しんで謎を解く。それがゲームの醍醐味だろう?」

「そうでしょう。まぁ、楽しみ方は人それぞれですけれども・・・。」

「それで?あと何人集まるんだ?たった二人でゲームをプレイするわけじゃあないだろう?」

「前回のプレイよりも増えますよ、人数。随分久し振りな気もしますね・・・。

まぁ確かに初めて遊ぶ気もするのですが・・・。というか、前プレイした人数も覚えてないんです?」

「いちいち覚えてられるか。つーかこの会話も何回目なんだ?」

「さぁ、いちいち数えても、意味はなさそうですけどね。」

「・・・そうだな。」

ニトクリスは卓の上に置かれたシートを覗いた。

アイリーンがよっこらせと椅子に腰掛ける。

ニトクリスはシートを手に取り、眺めながらアイリーンに語り掛けた。

「そうだな・・・試しに私は貴様に、何処から来た?と聞いてみることにする。

何処出身だ?という意味だ。」

「・・・・アレなんですかあなた、ゲームの役にしっかり入りきるタイプなんですか?」

「いいから答えろ。」

「ゲームの外から・・・と言ってみることにします。」

アイリーンは今のニトクリスの口調を真似た。

そしてニトクリスは何かを思い出したかのように言った。

「あぁ・・・そうだった、貴様宇宙人だったんだな。」

「キモッ、初対面でキモッ。」

「るっせぇ、今思い出したんだよ今ッ!!あと貴様が初対面じゃないっつったんだろッ!!」

「はいはい、キモイキモイ。」

「ケッ・・・」

ニトクリスは目線を卓の上に戻し、今度は分厚い本・・・ルールブックを手に取って開き、ページをめくり始めた。

その様子を興味深そうに見つめるアイリーン。

ニトクリスにとって、ルールの内容は既知の範囲内。

わざわざ確認などしなくてもいいのだが、念の為。

特に変更点は無かったらしい。

ニトクリスは本を閉じて卓に置き、シートと鉛筆をこちらに引き寄せた。

ニトクリスはシートに文字を記入し始めた。

アイリーンはそんなニトクリスの姿を見ながら、何気なく聞いた。

「いつまでそのキャラなんですか?」

「何がだ。」

「ずっと同じキャラを使ってるじゃないですか。」

「ただのこだわりだ。貴様だってそうだろう?何故そのキャラを使い続ける。」

「自由度が高いんですよ。」

「私も似たようなもんだ。」

「あと特定の地位の人間をボコボコに出来るので。精神的に。」

「前言撤回だ性悪女。」

と・・・扉からノック音がした。

ニトクリスは聞いた。

「何だ?もうお揃いか?」

「・・・のようですね。」

「よーしこれから思う存分拳銃を撃ちまくれる。」

「それが狙いだったんですね。」

ニトクリスとアイリーンは扉の前に立って、扉を開け、目の前の人間たちを迎え入れた。

「ようこそ・・・と言っておこう。こっちはうずうずしてるんだ。早速遊ぼうぜ?」

大勢の人間を招き入れ、皆卓に座り、サイコロが振られ始めた。

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