タイミング良すぎない?

月詠命とのふざけたチャットをした後、所持していたアイテムについて検索を掛け終え、改めてため息をつく。明らかに普通じゃないモノばかりだった。

 この超素敵アイテム(スマホ)だって土に埋めても、近くの水溜まりに水没させても、分解したって必ず新品同様綺麗になり、手元に戻ってくるのだ。


「はぁ・・・」


 諦めて、スマホをジーンズのポケットにしまう。森から出ないことには次の行動の起こしようもない。自給自足生活をしても良いが、私とて異世界に来たのだから街へと行ってみたいと思う。

 そうと決まれば──


「さっきのホログラムマップを有効活用しますかね。」


 普通に過ごすを早くも諦め、能力を使用し始める。諦めが早い?何とでも言うが良い。ここは異世界であって、現世ではない。命を守る為に命を奪い、戦う場所なのだから。

武器を持っているということはそういうことなのだろうし。


「ん?この反応は、敵と人?」


 一部、赤い点が集中している箇所があったのだが、その中心には緑の点─友好的な生物を表す─が一つ。


「王道・・・、でもないか?敵の量多すぎ。」


 そう、あり得ないくらい集まってる。生命反応が消えていないのが不思議な程に。

 それを確認した時点で一応走り出しているので、もうそろそろ現場に到着する。

─身体能力もきっちり底上げされているようで軽く一歩踏み出しただけで、100m2秒台という奇跡の脚力が真価を発揮している─


「よっ、と。無事で・・・すか?」


 狼っぽい獣に囲まれていたのは人ではなく、一匹の烏。しかし、その大きさは従来の烏の比ではなく。足には大きな傷を負い。漆黒の毛並みは血によって赤黒く変色している。


「んー、狼も好きだけど烏も好きなんだよね。でも、マップに赤く反応ってことは友好的じゃないのは確か・・・。てことで、君らには悪いと思わなくもないけど。ここで、お肉になってもらうよ!」


 良い値で売れるらしいし・・・。と、ニコニコしていると狼の群れは後退し始めた。心なしか尻尾が下がっている気がする。

酷いなぁ。ちょっと目がお金になってた気もするけれど。


「さあ!まとめてかかってきなさい!」

「きゃん!!」


 完璧に逃げ始めたので、追いかける。私はお金に敏感なのだ。







───少しの躊躇もなく、スパスパと斬りまくり元の場所に戻る。狼たちはいわゆるストレージという収納ボックスの中にINした。非常に便利だ。


「で、そのストレージの中に予想していたが如くポーションがあるのはなんなのか。しかも、フルポーション」


 生前プレイしていたゲームの中だったとはいえ、ポーションにはお世話になっていたので検索せずとも効果は分かる。


「この烏君を回復しろってか?まあ、するけどね?」


 あの漆黒の烏に近づく。死にかけで意識が朦朧としているらしく、私に反応する様子はない。


「辛いだろうけど飲んで・・・。」


 少しずつ嘴に流し込む。すると、なんということでしょう。怪我をしていた部分が徐々に癒えてゆき、欠損していたらしい3つ目の脚も神々しい光が形を形成するではありませんか・・・。って、ん?


「脚が3つ?つまり、八咫烏か。ファンタジーに八咫烏が出てくるイメージ全然ないな。西洋系の世界じゃないってこと?」


新たな疑問が生まれるが、今は後回し。


「検索、検索っと。・・・影に入れるのか。」


 しかし、それは服従契約を果たした時らしい。ボソボソと考えていると目の前にいたハズの烏がいなくなっていた。気絶から目覚め飛びたったのだろうか?(薄情だな)と思いつつ、今度こそ森を抜ける為に走り出す。

地上は障害物が多いので木の上をずんずんと進む。結構楽だ。

 五分ほどして、漸く平野に出る。すると、あれだけスタ連しても反応しなかったスマホが《ピロン♪》と鳴った。


moon

『うちの眷属助けてくれてありがとう!』

『いやー、助かった助かった!』

Unknown

『ハイハイ、どういたしまして。』


とだけ、返し辺りを見回す。足下を見るとこれまたタイミング良く、影から出てくる八咫烏が・・・・・・・。






















────は!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る