第43話奴隷のヴァンパイア・ショータイム

「やあ、君はモンスターのヴァンパイアさんだね。で、こちらが『モンスターQ』って番組に出てた特撮ヴァンパイアなんだ。あの番組でこちらは巨大特撮ヴァンパイアからこの通り人間サイズになっちゃったわけだけど……モンスターのヴァンパイアさんはもともと人間と同じサイズみたいだから。このサイズになったおかげでかえってお二人は話しやすくなったんじゃないかな。そうだよね、特撮ヴァンパイアさん」


「ヴァンパイアッ」


 わ、あたしがドキュメンタリーで撮影させてもらったモンスターマスターちゃんの仲間のヴァンパイアさんが、中の人がスーツアクターさんの特撮ヴァンパイアさんと共演してる。間をオペレーターさんがナレーションでとりもって、画面には映ってないけれど司会みたいなことしてる。その司会に返事をした特撮ヴァンパイアさんの鳴き声は、裏にベンシさんがいて特撮ヴァンパイアさんに声を当ててるのかな。


「はじめまして。モンスターのヴァンパイアです。『モンスターQ』のヴァンパイア編はわたしも拝見させていただきました。『モンスターQ』でのヴァンパイアさんは、本物のモンスターさんなのかそうでないのか……モンスターのヴァンパイアであるわたしにもわからなくて……特撮ヴァンパイアさん。モンスターのヴァンパイアなんですか? それとも、人間がコスプレしてるんですか?」


「ヴァンパイアー」


「『それはご想像におまかせします』、だそうです」


 ナレーションで司会しているオペレーターさんが、『ヴァンパイア』としか鳴けない設定の特撮ヴァンパイアさんの通訳も兼ねてるのか。中の人が人間のスーツアクターさんだとはっきり言ってないから、モンスターさんと人間の共演にならなくて、NGにならないってことか。


 それにしても、中にスーツアクターさんが入ってる特撮ヴァンパイアさんよく動くなあ。コミカルな感じで。これなら、子供たちに人気が出るのも当たり前かも。観客のモンスターさんたちもオペレーターさんの通訳でなんだか笑ってるし。モンスターも人間と同じようにしゃべれるのに、なんで『モンスターQ』の特撮ヴァンパイアは『ヴァンパイア』としか口にしないんだよってことなのかな。


「それにしても、モンスターのヴァンパイアさんの衣装は可愛らしいですね。ヴァンパイアというと蝶ネクタイにタキシードでカチッとフォーマルに決めてる印象がありましたけれど……今日のモンスターのヴァンパイアさんはフリフリのワンピースにミニスカートと、ずいぶん女の子らしいカジュアルな服装ですね」


「はい。こんなかわいい衣装を着るなんて産まれて初めてです。今日はとっても緊張していますが、会場のみなさん。わたしの歌を聴いていってください」


「では、モンスターのヴァンパイアさんと特撮ヴァンパイアさん。ステージの方へお願いします」


 わ、オペレーターさんのナレーションとモンスターのヴァンパイアさんの会話で会場のモンスターさんがすごく盛り上がってる。これをテレビで見ている人間はこれをどう思うんだろう。


「それでは、会場とテレビの前の皆さま。ヴァンパイアさんの歌を聴いてください。タイトルは、『あなたを吸い尽くしたい』です」


 オペレーターさんの曲紹介で、画面がステージに切り替わった。モンスターのヴァンパイアさんがマイク持って立ってる後ろで、中にスーツアクターさんが入ってる特撮ヴァンパイアさんが踊ってる。


 わたしはヴァンパイア。


 大好物は人間の真っ赤にしたたる血液。


 だけど、いっぺんに吸い尽くして人間を殺したいわけじゃないの。


 だって、一回で血を吸い尽くしちゃったらそれっきりじゃない。


 人間さん、あなたたちは少しくらい血を抜かれても、ちょっとだけなら


 平気なんでしょう。だったら、わたしがちょっとだけ血を吸っても


 寿命は変わらないんじゃないかしら。


 むしろ、わたしが人間さんの悪い血を吸ったら人間さんは健康になれるんじゃない?


 だから、わたしはあなたを吸い尽くしたい。


 あなたを思う存分長生きさせて、その間ずっとわたしはあなたを吸っていたい。


「モンスターのヴァンパイアさんの『あなたを吸い尽くしたい』でした。それでは、『モンスター大使のヴァンパイアさん、よろしくお願いします」


「はい、モンスターのヴァンパイアさんも『モンスターQ』のヴァンパイアさんも素敵でしたね。で、アニメの僕もよろしくね」


 今度はアニメのヴァンパイアさんだ。これ、さっきまで着ぐるみのヴァンパイアさんに『ヴァンパイア』なんて声を当ててたベンシさんがセリフ当ててるのかな。


「アニメの僕は歌わないけれど、モンスター軍の上官にひどい目にあわされていたところを助けてくれたハカセには感謝してるんだ。人間のハカセにすごく感謝してるんだよ」


 う、これは。そのモンスター軍の上官の声を当てているあたしの声のイメージがますます悪くなる予感。


 

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