第30話ドキュメンタリーのヴァンパイア・打ち合わせ
「まあ、わたしの仲間のモンスターさんの番組をもっと作っていけることになったのね。それは嬉しいお知らせだわ」
モンスターマスターちゃん、喜んでるな。
「それじゃあ、次はどのモンスターさんのドキュメンタリーを撮ってもらおうかしら。そうねえ……」
「あの、ご主人様。わたしがやりたいです」
「あら、ヴァンパイアさん。あなたがやってくださるの。それじゃあお願いしようかしら。じゃあ、ユウシャさんやオペレーターさん、それにベンシさんに自己紹介してくださる?」
ヴァンパイアさんかあ。あたしも冒険中にはよく戦ったけれど、血を吸われるのが嫌なんだよなあ。
「わ、わかりました。それでは……わたしがヴァンパイアです。基本、人間や動物の血を吸って食事にしています。最近では、なんだか人間界で血を抜く健康法が流行ってるらしくって……奴隷として売り飛ばされた先で、人間の血を吸い続けているなんて話も聞きます。なんでも、人間の方から血を吸ってくれなんて頼んでくるみたいで……こんなことになるとは思っても見なかったそうです」
血を抜く健康法かあ。そんなものがあるのか、知らなかった。
「ヴァンパイアさん。わたし、その人間の方からヴァンパイアさんに血を吸うように頼んだらヴァンパイアさんはどう思うのか知りたいわ。そこのところ、詳しく話してくださる?」
あ、モンスターさんをいっぱい仲間にしてるモンスターマスターちゃんもそう思うんだ」
「ご主人様がそうおっしゃられるのであれば。なんか、
血を出しちゃえば健康になるのかあ。あたしは回復魔法で治しちゃってたからそんなこと考えもしなかったけれど……もし、そんな健康法があるのなら、血を食事にするヴァンパイアさんともなかよくできるのかも。
「あら、そんな健康法があったの。だったら、わたしもヴァンパイアさんに血を吸ってもらおうかしら」
「そんな、ご主人様の血を吸わせていただくなんてとんでもありません。わたしは、ご主人様に仕える身ですから。わたしの食事はお店で売られている料理用の血液で十分です。なんでも、人間の食事には牛や豚の腸に血を注ぎ込んで茹でるゲテモノがありまして……そんな食事を出すお店から血液を分けていただければ十分なんですから」
血のソーセージか。あれは初めて見た時あたしもゲテモノって思ったな。血を食事にするヴァンパイアさんもそう思うんだ。
「で、われわれヴァンパイアには何匹かのコウモリに変身できる能力がありまして、人間の血を吸わせてもらえれば、そのお返しにたくさんのコウモリに変身して畑の作物を荒らす害虫を食べたりするなんて話もあります」
「あら、それはステキなお話ね。人間とモンスターさんがうまくやっていける場合もあるんじゃない」
モンスターマスターちゃんの言う通りだな。あたしも、農作業に役立つのなら、ある程度までなら血を吸わせてもいいかも。と言うよりも、人間とヴァンパイアが襲ったり襲われたりするよりはそっちのほうが断然いいに決まってる。
「それにですね、ご主人様。コウモリなら手紙くらいなら運べますから、町や村の郵便所から家々に手紙を届けたりもしてるみたいです。足腰を悪くして、歩くことが大変になったお年寄りには好評みたいですよ」
「それもステキなお話ね。ヴァンパイアさん。じゃあ、今回のドキュメンタリーの流れはそんな感じでいいかしら。瀉血をして健康になった人間のインタビューを出して。その人間がヴァンパイアさんに血を差し上げる。そのお礼にヴァンパイアさんが人間を手伝うと言う流れで」
「そういえば、わたしがご主人様の仲間になった経緯も似た感じでしたね。わたしがご主人様に血を吸おうと襲いかかったら、ご主人様が転んで膝を擦りむきましたよね。それなのにご主人様ったら、怒るどころか、『あらあら、突然出てこられるからびっくりしちゃったじゃない。おかげで膝から血が出てるわ。あら、あなたヴァンパイアじゃない。血を食事とされるんでしょう。せっかくですからお飲みになってくださいな』なんて……それで、なんとなくいっしょに旅することになって今に至るんですよね」
「そういえばそんなこともあったわね。じゃあ、それもドキュメンタリーに加えましょうか」
ヴァンパイアさんがモンスターマスターちゃんの仲間になったのにはそんないきさつが……自分を襲おうとしたヴァンパイアさんをやっつけるどころか、血を分けちゃうなんて。やっぱりモンスターマスターちゃんは底が知れないなあ。
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