第29話奴隷のゴースト・ショータイム
「へえ、そんなことがあったんですか、ユウシャさん。ユウシャさんの声だけで相手を満足させちゃったんですか。奴隷のゴーストさんの代金って安くはないと思うんですが、それを帳消しにしちゃってあまりあるほどユウシャさんの声が魅力的ってことなんですかねえ」
ベンチャーさんったら、ずいぶん面白がってるな。あたしは自分が、鬼のようなモンスター軍の上官扱いされて複雑な気分だってのに。
「しかし、これは良い方法かもしれませんね、ユウシャさん。なにせ、モンスターを奴隷として買った人間からしてみれば、『人が代金を払って購入したモンスターを奴隷として扱って何が悪い』なんて思うかもしれませんからね。それほど、人間の間でモンスターさんの奴隷商売が習慣として根付いているわけなんですが」
モンスターさんの奴隷商売かあ。それで食べてる人間もいるんだろうなあ。『モンスターを倒すための武器を売る武器屋と何が違うんだ』って言われても困るし。
「そんなモンスターさんを奴隷として購入した人間が、ユウシャさんの声を聞いたことで大満足して購入された奴隷のモンスターさんを解放するですか……そのうち、ユウシャさんの前に行列ができるかもしれませんね。『俺の奴隷モンスターを解放するから、ユウシャさんの声を聞かせてくれ』って」
「まあ、あたしが何か一言言えばモンスターさんが自由の身になるって言うのなら、いくらでもしゃべりますけどね」
「じゃあ、しばらくはモンスターマスターさんの仲間のモンスターさんのドキュメンタリーを放送して、それからツブラヤさんの特撮とテヅカさんのアニメの製作を手伝ってよ、ユウシャさん。この三つの番組が今のところわたしのテレビ局の人気番組だからさ。そうそう、ユウシャさん。ちょうど今、その三つの番組の結果がわたしのテレビ局で放送されてるからさ。ちょっと見てみようよ」
ドキュメンタリーと特撮とアニメの結果? なんだろう? あ、ベンチャーさんがつけたテレビにゴーストさんが映ってる。なんか、可愛い服を着て歌って踊ってる。
「この通り。ドキュメンタリーと特撮とアニメでゴーストさんの人気が爆発してね。ゴーストさんに歌って踊ってもらおうってことになったんだ。いったいどれくらいの人間がこんなふうに歌手になったゴーストさんを見てるんだろうね。これで、奴隷としてこき使われるモンスターさんが減るといいんだけど」
わたしはゴースト。
今まで人間さんの服をこっそり着てたけど、
なんと幽霊のわたしでも着れる服をモンスターの
仲間が作ってくれちゃった。だから、今日はその服を着たわたしが、
みんなの前で歌って踊っちゃいます。空中浮遊もなんのその。
だけど、あんまり高くは飛べないの。だって女の子だから
スカートの中身は隠していたいんだもん。
今夜あなたの家にお邪魔してもいかしら。
もし鍵がかかっててもわたしは幽霊だからドアはすり抜けられるけど、
できれば、人間のあなたにドアを開けて招待してもらいたいな。
だって、わたしは人間さんと戦いたいんじゃないんだもん。
お話ししたり、遊んだりしてみたいの。
だから、モンスターのわたしを見ても怖がったりおびえたりしないでね。
武器を持って襲いかかられたらその時は逃げちゃうけれど。
「やあ、なかなかいい歌詞じゃないか。これでとりあえず、モンスターさんと人間が仲良くできればいいんだけれど……というわけで、これからもじゃんじゃんわたしのテレビ局で番組を作っていってね」
じゃんじゃんテレビ番組を作っていくか。よし、やってみるか。あ、ゴーストさんの着ぐるみが本物のゴーストさんと一緒に踊り始めた。中にスーツアクターさんが入ってるのかな。着ぐるみって割にはダンスの動きもきれてるし……番組でのおどろおどろしい動きとはえらい違いだな。これは、子供にモンスター人気が出るかも。
「これからも僕たちモンスターの特撮番組『モンスターQ』をよろしくね。もちろん、アニメの『モンスター大使』もいっしょに見てほしいな」
わ、突然テレビの画面がアニメのゴーストさんの映像に変わったと思ったら、ベンシさんの声が聞こえてきた。
「驚いたかい、ユウシャさん。わたしのテレビ局では、ツブラヤさんの特撮とテヅカさんのアニメをいっしょに盛り上げていくことになったから、こういう構成にしたんだ。ツブラヤさんとテヅカさんの本人同士がどう思っているかは知らないけれど、見ている方は両方とも面白がっているからね。これはコラボレーションするしかないってことさ」
特撮とアニメがいっしょになって盛り上がっていくのか。両方とも実際には起きないような出来事を番組にしているわけだし、相性がいいのかも。
「そのうち、特撮のモンスターとアニメのモンスターがいっしょに画面に映るなんてことが起こるかもしれないね、ユウシャさん。いまの技術力じゃ無理みたいだけど」
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