第11話ドキュメンタリー
「その、オペレーターさん、ベンシさん。人間は人間だけで、モンスターはモンスターだけでテレビ番組を作るってことになったんだけれど、二人はどうします? あたしはモンスターマスターちゃんといっしょにモンスターさんの番組を作りたいんだけど……」
「ユウシャさんがそう言うのなら、わたしはユウシャさんとご一緒します。わたしは演技の世界では新人ですから。あ、でも、軍人だったわたしとモンスターさんが仕事してくれますかねえ?」
「そ、それは大丈夫だよ。オペレーターさん。あたしもモンスター退治を長い間やってきたから同じだよ。ね、がんばろう。ベンシさんも、ね」
「僕もモンスター退治を商売にしてきましたが、ユウシャさんがそう言うのならモンスターさんとテレビ番組を作っていきたいと思います」
「良かった。あたしとオペレーターさんとベンシさんの三人でモンスターさんの番組づくりができるんだね」
「それで、ユウシャさん、オペレーターさん、ベンシさん。どんな番組を作るつもりでいらっしゃるのかしら」
モンスターマスターちゃんの言う通りなんだよなあ。どんな番組を作ればいいんだろう。
「あの、モンスターマスターさんの後ろにいらっしゃるモンスターさん達って、モンスターマスターさんのお仲間さんなんですか?」
「ええそうよ。みんなとってもいい子なのよ。それがどうかしましたの、オペレーターさん」
「いえその……わたしは軍の通信でしかモンスターさんを知りませんので、戦闘事態でないときはモンスターさんはどんな暮らしをしていらっしゃるのか教えていただければなあと」
そうか。普通の人は、モンスターさんが普段どんな暮らしをしているか知らないんだ。せいぜい旅の途中に襲われたりする程度だから、モンスターさんがどんな日常生活を送っているのかわからないんだ。もと軍人のオペレーターさんでさえそうなんだから、普通の人はもっと知らないんだろうなあ。
「それ、僕も知りたいです。これまで人間とモンスターさんが戦っているところしか活弁してこなかったから、モンスターさんの日常を教えてもらったら嬉しいです」
ベンシさんもなのか。ゴーレムさんだって、生真面目一本やりの堅物かと思っていたけど、けっこう意外な一面もあったりしたし。モンスターさんの日常風景を人間達が知ったら、ひょっとしたら人間とモンスターが仲良くできるのかもしれない。
「そうなの、オペレーターさん、ベンシさん。じゃあ、わたしの仲間のモンスターさんを紹介しましょうかしら。どの子からがいいかしらね……」
「あの、モンスターさんの日常を紹介する番組を作ればいいんじゃあないでしょうか。普通に人間はモンスターさんがどんな暮らしをしているか知らないんでしたら、それを紹介する番組を作れば人間とモンスターのわだかまりもとけたりするんじゃないかなあと」
「あら、それはステキな考えね。モンスターさんの生活を紹介する番組ですか。きっと良いものができるんじゃないかしら。あらでも困ったわ。モンスターさんにはおしゃべりが得意でない方も大勢いらっしゃるのよ。人見知りが激しい子もいるし。モンスターさんがしゃべらなかったら、みてる方は退屈になっちゃうんじゃあないかしら」
それは、オペレーターさんが実況して、ベンシさんが活弁すれば解決すると言いたいんでしょうか、モンスターマスターちゃん。また、モンスターマスターちゃんはそれとなくあたしたちがどうすればいいかみちびいてくれるんですか?
「あの、わたしが実況をすればいいんでしょうか? モンスターさんがお嫌でなければの話ですけれど」
やっぱりオペレーターさんもそう思うよね。ついさっき『実況がオペレーターさんは得意なんですよ』って紹介された矢先に、『人見知りの激しいモンスターさんはどうしましょう』なんて言われたら、自分が実況するべきなのかなって思うよね。
「その、僕がカツベンすればいいんですか? 勝手にアテレコしてよろしいのでしたらですけど」
ベンシさんもそう思いますか。今しがた『活弁がベンシさんの得意技なんです』ってあたしが紹介したばかりだもんね。『おしゃべりの得意でないモンスターさんはどうすれば良いのかしら』と言われたら、自分が活弁すればすむのかなって思うもんね。
「勝手になんてとんでもないわ。わたしが仲間のモンスターさんをきちんと紹介させてもらいますから、モンスターさんがどんなモンスターさんなのか理解した上で、モンスターさんを紹介するテレビ番組を作ってくださいね」
やっぱり。あたしが提案して、オペレーターさんとベンシさんが『その提案なら自分はこんな役割が果たせる』なんてことを言ったけど、モンスターマスターちゃんは最初からこうなることがわかってたのかな。あれ、じゃあ、モンスターマスターちゃんが『こうこうしなさい』って言って、オペレーターさんとベンシさんがそれをすれば……あたしっていらない子?
「ユウシャさんにも大切な仕事があるのよ。番組づくりはわたしたちがやりますから、対外的なことはユウシャさんにお任せするわ。ユウシャさんにはいろんなコネクションがおありになりますものね」
う、あたしの心を見透かしたような言葉。やっぱりモンスターマスターちゃんってなんだか怖い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます