第18話 協力

 先の見えない長い廊下……。


 豪華であり優雅にも感じられる様式……。


 建物の周囲は闇に包まれているため、窓から外を覗いても暗い空しか見えない。しかし、建物内は昼間のように明るい様相……。


 アンバランスにも受け取られる場所……。


 この場所こそが魔王城。世界の裏で暗躍している魔物の総本山。人類にとって脅威となる場所の廊下を一人歩く影ある。漆黒のローブとピエロのような仮面を装着している人物――レイブン。


 ある人物からの呼び出しに応じたレイブンは目的の場所へ移動を続ける。しかし、唐突に声をかけられる。本来なら五大将軍であるレイブンへ簡単に声をかけることなど許されない。だが、声を聞いたレイブンは仮面の下で舌打ちをしたくなるよな表情へと変え仮面をつけた顔を向ける――五大将軍の一人である『魔獣王ビーストキング』リガルドへと。


「おい! レイブン」

「久しぶり……。それじゃあ――」

「待て! レイブン!」


 一言だけ告げるとその場から去ろうとしたレイブンだが、三メートルを超す巨体のリガルドは通路を塞ぎ強制的に停止させる。リガルドの行動に苛立ったレイブンは舌打ちをする。


「……何か用なの?」

「あぁ。テメーに聞きたいことがある。……裏で何をしている?」

「……質問の意味がわからない……。私は命令通りに動いているだけ、疑問があるならユダにでも聞けばいい」


 ユダの名前を聞いたリガルドは表情を歪ませる。


「ユダか……。そういえば、テメーはあいつと親しいんだよな? あいつの何か弱点とか知らないか?」


 突拍子のない質問にレイブンは呆れて馬鹿をみるような視線を飛ばす。


(こいつ、……馬鹿なの? ユダが気に入らないことは知っているけど、親しいと感じた相手に直接弱点がないかを聞くなんて……。何を考えているのかしら……。いや、何も考えてないのね……)


 馬鹿の相手は疲れるとばかりにレイブンは適当にあしらうことにする。


「ユダの弱点……。あえて言うなら融通が利かないところじゃない?」

「何だそりゃ? もっと直接的な弱点はないのか!」

「知らない。それ以上に何かを知りたければ自分で調べればいい」


 冷たく言い放つとレイブンはその場を後にする。背後からリガルドの不愉快そうな舌打ちが聞こえてが相手にせずレイブンは歩き続ける。


(……馬鹿な奴……。大方、ユダの弱点を見つけてユダの寝首を掻こうとでも思っているのでしょうけど……。あなた如きがユダに勝てるはずがない。ユダは五大将軍のリーダーよ? なぜ、ユダがリーダーを任されているのかを少し考えれば馬鹿な考えはしないはずだけど……。まぁ、あの馬鹿には死ぬまでわからないでしょうね)


 リガルドとの会話を終えてしばらく歩いていると、また会いたくない相手とレイブンは会うことになる。正面から歩いてくる人物に気がついたレイブンは表情を曇らせる。対照的に相手は満面の笑顔を見せ軽く手を振っている。


「あらー? レイブンちゃんじゃなーい。久しぶりー!」


 先程のリガルドとは違い『粘液女王スライムクィーン』サーべラスは明るく友好的に話しかけてくる。サーベラスの後ろには副官であるメイド姿の部下が付き添う様に控えている。暗澹とした気持のレイブンは深いため息をつきそうになるが我慢をする。


「えぇ、久しぶり」


一言でレイブンはその場を立ち去ろうとするが、サーべラスは自身の腕を伸ばしてレイブンの行く手を遮る。


「ちょっとー! 一言だけで行っちゃうなんて冷たいんじゃない?」


 悪戯っぽい微笑を浮かべながらサーベラスはからかうようにレイブンへ視線を飛ばす。一方のレイブンは仮面の下からでも聞こえるように大袈裟なため息をつく。しかし、無礼とも感じられるレイブンの行動を見てもサーべラスは全く気にしない。


「何か用なの……?」

「別にー? ただ、暇だったところにあなたが通りかかったから話をしようと思っただけよ」

「……なぜ? 何か話したいことでもあるの?」


 真面目に問われたサーべラスは片手を横に振り笑みを浮かべ顔をレイブンへ近づける。


「いいえ。特にないわよ。言ったじゃない暇だから話そうと思っただけよ。それに私達は女同士じゃない? 仲良くしましょうよー!」

「別に仲良くする理由がないと思うけど?」

「うふふ。相変わらずねー。ところで急いでるみたいだけど……。どこかに行くの?」


 一瞬だがサーベラスの瞳が変化する。その一瞬をレイブンは見逃さない。嘘を吐こうとも考えたが後でばれたときに面倒と考えレイブンは素直に返答する。


「……ユダに呼び出されたのよ。今からユダの部屋へ行く……」

「あぁ、そういうこと。それじゃあ、あんまり時間をとらせても悪いわね。いってらっしゃーい!」


 あっさりとサーベラスはレイブンへと道を譲る。レイブンはサーべラスの横を無言で通り過ぎる。姿が見えなくなるまでレイブンを見送るとサーベラスは笑みを浮かべる。完全にレイブンの姿も気配も消失したことを確認したサーべラスが背後に控える副官へ命令する。


「ねぇ。ポプラちゃん」

「はい。何でしょうか、サーべラス様」


 呼びかけに応じたメイド服姿の少女が一歩前へ出る。サーべラスの副官ポプラだ。副官であるポプラへサーベラスはとんでもない命令を下す。


「隠密能力の高いスライムに、ユダの部屋を監視させて……」

「――ッ!」


 予想だにしない命令にポプラは絶句する。しかし、主からの命令だとすぐに頭を切り替える。だが、そのことを差し引いても躊躇する命令のため、ポプラはサーベラスへ進言する。


「し、しかし……、ユダ様にばれてしまったら……」

「大丈夫よ。そのときは情報収集能力のテストをしていただけって言っておくから。それにばれても、どうせ文句なんて言ってこないわよ」


 問題ないという口調で話すサーベラスを尻目に副官のポプラは内心に生まれた恐怖を隠しきれない。


 五大将軍を束ねるリーダーである『魔人王デーモンキング』ユダの実力は魔王に匹敵するとの噂を知っていたからだ。行動しないポプラの心中を察したのか、サーべラスは表情を崩さずに詰め寄る。


「どうしたの? ポプラちゃん? まさか、私の命令がきけないのかしら?」

「……い、いえ。し、失礼しました。……では、影粘液怪物シャドースライムを送ります……」

「えぇ、よろしくねー」


 満足したサーべラスは一人廊下を歩き始める。その場に取り残されたポプラは大きく息を吐く理由は恐怖だ。しかし、その恐怖はユダの元へ粘液怪物スライムを送ることではない。ポプラが恐怖したのは、主であるサーベラスに対してだ。


(……あれは、本気だった……。あのまま私が動かなければ、サーベラス様は副官である私を躊躇せずに殺しただろう……。我が主人ながら恐ろしい方だ。表情も口調も穏やかだが明らかに苛立っていた……。あの方は、気分によってとんでもないことを平然と行うから……。しかし、ユダ様に監視がばれた場合はどうするおつもりなのだろう……? 何事もなければよいけれど……)


 一抹の不安を胸に抱きながらも、ポプラはサーベラスの命令に従い影粘液怪物シャドースライムを呼び出すと『魔人王デーモンキング』ユダの部屋を監視するように命令する。


 ◇


 自室の椅子に腰をかけてユダはこれからの計画を練っていた。


 これからの計画――それは予期せぬ事態のために戦争を前倒しで行うこと。本来であれば戦争を開始するのはまだ数年先の予定だった。しかし、『不死者アンデッド聖騎士パラディン』トリニティの副官レイアーが敗れたことで計画を大幅に前倒すことになったのだ。そのためにユダは戦争準備のため急ぎ計画を練っていた。机に視線を落としていたユダは何気なく部屋の片隅へ視線を移す。


「……私は気にしないが、部屋に入る時はノックぐらいするべきではないか? それに、いちいち転移を使うほどの距離でもないだろう?」


 問いかけに応えるかの如く闇から姿を現す人物。それは漆黒のローブを纏い、ピエロの様な仮面をつけた五大将軍の一人レイブン。許可なく部屋へと入ったにも関わらずレイブンは悪びれた様子を微塵も見せない。


「……私も最初は歩いていた。でも、途中でリガルドやサーべラスに会った。……あなたのせい」

「ふふふ。なるほど。だから、私に仕返しのつもりで直接部屋へと転移してきたのか? まぁ、別に構わないが魔力の無駄ではないか?」

「本気で言っているの? 私が誰だか忘れたんじゃないでしょうね?」


 呆れたようなレイブンを見たユダは笑みを強める。


「そうだったな、レイブン。魔導を極めたお前に言うセリフではないか……。だが――」


 唐突に話すのを止めるとユダは軽く右手の指を鳴らす。すると天井から青い炎に包まれた影粘液怪物シャドースライムが落下する。影粘液怪物シャドースライムは青い炎に包まれ燃え尽きた。その状況を二人は何事もなかったのかのように眺める。燃え尽きた影粘液怪物シャドースライムに対してユダは吐き捨てる。


「ふん。サーべラスだな」

「でしょうね。でも、殺す必要があったの? 特に秘密の話をしていたわけでもないのに」

「今はな。……だが、これからお前に頼むことはまだ秘密なのでな」

「頼みごと? 嫌な予感がするんだけど……。あなた私に面倒なことを頼むつもりじゃないでしょうね?」

「察しが良くて助かるよ。レイブン。お前にはトリニティに協力をしてもら――」

「いや」


 ユダが全てを言いきる前に迷うことなく拒絶するレイブン。予想していた以上に早い行動だったので思わずユダは苦笑する。


「せめて最後まで言わせて欲しかったが……」

「必要ない。最後まで言おうが、途中だろうが、返事は変わらない。……いやよ。何で私がトリニティに協力しなきゃいけないの? あいつの副官レイアーにやらせればいいでしょう?」

「……生きていれば、そうさせていたさ……」


 ユダの言葉にレイブンは仮面の下で眉をひそめる。


「……まさか、レイアーの奴。死んだの?」

「あぁ。まぁ、奴は不死者アンデッドだったから正確に言うなら死んだというよりは滅んだと言う方が正解だろうが」

「そんな細かい話しはどうでもいい。……つまり、勇者が出現したってこと?」

「さぁな?」

「何? その煮え切らない言い方は?」


 誤魔化しているようなユダの返答にレイブンは気分を害した様子になる。そのことを察したユダは補足をする。


「すまない。別にふざけて答えたわけではない。確かにレイアーを倒した者が勇者の可能性はあるが……。別にレイアー程度なら勇者でなくとも倒せる。我ら五大将軍の一人でも倒したというなら勇者確定だろうが」

「そうかしら……。平和ボケした、この世界の人間がレイアーに勝てるかしら?」

「勝てるさ。レイアーは確かに強かったが、常識の範囲内での強さだ。……だが、我ら五大将軍は?」


 『化け物』というユダの物言いにレイブンは露骨に不機嫌となる。


「……あいつらと一緒にしないでもらえる? 気分が悪い……」


 レイブンの怒りを感じたユダは軽く肩をすくめて謝罪をする。


「すまない。悪気はなかった。だが、そういうわけだ。トリニティに協力をしてやってくれないか? それに悪い話ではないぞ? この計画は、お前の目的にも関係する……」


 ユダの発言を聞いたレイブンは身体を一瞬揺らすと同時に仮面の下で眉を上げる。レイブンの心情を誰よりも理解しているユダは軽く笑みを浮かべる。


「……説明して」

「いいだろう。今回レイアーが滅ぼされたことで計画を早めることにした。つまり人間共へ我らの存在を明らかにする」

「まさか……」

「あぁ、人間どもに宣戦布告をする」

「……なるほどね。理解したわ……。だから、さっきサーべラスの粘液怪物スライムを排除したの?」

「そういうことだ。あいつ……というよりサーべラスとリガルドには、まだ戦争開始について教えるつもりはない」


 話を聞いて大方のことを理解したレイブンだが確認のためユダへ尋ねる。


「……なぜ、隠す必要があるの? あいつらも一応は同じ五大将軍でしょう?」

「ふん。サーべラスは口が軽すぎる。あいつに知らせれば間違いなくリガルドの耳に入る。そして、リガルドがこのことを知れば『自分に行かせろ』と言ってくるのは目に見えているからな……」

「そうでしょうね。でも、別にリガルドでも構わないと思うけど?」

「本来の計画ならリガルドでも構わなかった。しかし、レイアーが滅ぼされている。これは予定外だ。トリニティからすれば部下をやられたということ。そして、レイアーを倒す強者の存在を認識してしまっている。トリニティはもはや誰にも止めることはできない……。それなら準備を整えてトリニティへ先陣を切らせるのが得策だ」


 全ての話しを聞いたレイブンは理解すると同時に現在トリニティがとっている行動を思い返す。


「……理解したわ。だから、トリニティは闘技場で戦い続けているのね」

「うん? トリニティの奴はまだやっていたのか?」

「……えぇ。あなたが連れて来てからずっと……。三日目になるわね。おかげで、もう私の石人形ゴーレムでは満足できなくなっていたから、今は合成魔獣キメラと戦わせている」

合成魔獣キメラ? あれは石人形ゴーレムと違い使い捨てではないだろう?」

「問題ない。合成魔獣キメラといっても、私が作成した複製クローン機械でコピーした合成魔獣キメラだから、実験にもなってちょうど良かった」


 何気ないレイブンの言葉にユダは目を見開き声を高揚させる。


「そうか。ついに複製クローン技術を完成させたのか!」

「……まだよ。コピーはできるけど、どこまでオリジナルと同じか判明していない。実験段階だから……」

「だが、コピー自体はできるのだろう?」

「それは問題ない」


 レイブンの返答に満足したユダはある確信をする自分の考えている重要な計画が支障なく行えることを……。


「わかった。……では、一緒にトリニティの元へと行こうではないか? 奴にお前が協力することを伝えるついでに複製クローン合成魔獣キメラの出来も見たいしな」

「ちょっと待って! 私はトリニティに協力をするなんて言ってない!」

「……あぁ、そうだったな。だが、先程の話を聞いてお前も理解したはずだ。それに、サーべラスやリガルドと違いトリニティをそこまでは嫌っていないはずだろう?」


 ユダの言い分に対してレイブンは仮面の下で不快気に顔を歪める。


「……確かに、あの二人に比べればましだけど。でも、トリニティの相手は疲れるのよ……」

「それは否定しないさ。私もあいつといると気苦労が絶えん」


 首を横に振りながらレイブンは諦めたようにため息をつく。その姿からレイブンがトリニティとの協力を承諾したとユダは理解する。無言でユダは立ち上がりレイブンの隣へ行く。特に指示をされたわけではないがレイブンは呪文を唱える。すると、二人の姿が消失する。


転移ワープ』:任意の場所へ一瞬で移動する魔法。行ったことのない場所には行くことはできない。しかし、一部の上級魔術師は見知った人間や動物などの気配や魔力を感知することで、場所ではなく人物などを目標として移動することもできる。また、移動距離などにより消費魔力は変化する。


 『転移ワープ』により、ユダとレイブンはトリニティがいる闘技場へと姿を現す。ユダとレイブンに気がついたある人物がすぐに駆け寄り頭を垂れる。大きな帽子と赤、緑、青などのコントラストの派手なローブを着ている。見た目は十歳ほどの少年。ショートカットの白髪で綺麗な顔をしている。人間の街にいれば美少年と囁かれるだろう。


「レイブン様! おかえりなさい。そして、ユダ様もようこそおいで下さいました!」


 少年は二人に対して最大限の敬意を払い挨拶する。少年の行動を見たユダは感心すう。


かしこまる必要はないぞ。リコル。お前はいつもよく働いてくれている。レイブンがいない間の研究、闘技場の管理。この場を借りて感謝を伝える」

「そ、そんな、もったいないお言葉です! ありがとうございます! ユダ様!」

 

 あどけない笑顔で喜ぶリコルだが、ユダの横にいたレイブンはあることを尋ねる。


「リコル。トリニティと複製クローン合成魔獣キメラとの戦いはどうなっているの?」


 質問を受けたリコルは一瞬だけ身体を震わせると困った子犬のような視線をレイブンへ向ける。その様子でレイブンはある程度のことを理解したが、リコルへ再度質問をする。


「リコル。報告しなさい」

「は、はい。あ、あのー、問題が生じています。トリニティ様が……強すぎます」


 闘技場へと視線を向けるリコル。その視線を追うようにユダとレイブンも闘技場の状況を確認する。視線の先……闘技場の中央にトリニティはいた。トリニティの周囲には、土くれと魔獣の死体が山のように積み重なっている。三人が見ている最中にも、石人形ゴーレム合成魔獣キメラがトリニティを襲っているが一太刀で大地へ倒れる。倒れた石人形ゴーレムはただの土くれに合成魔獣キメラは物言わぬ死体へと姿をかえる。闘志むき出しのトリニティを見たユダは笑みを浮かべる。


「準備は万端というところか……」

「うん? ……何で石人形ゴーレムがまた出ているの? さっき引っ込めたはずだけど……」

「あっ! す、すみません! 合成魔獣キメラだけでは、全く歯が立たなかったもので僕が作った石人形ゴーレムを出しました。勝手なことをして申し訳ありません!」


 深々と頭を下げて謝罪をするリコルだが、レイブンは特に気にした様子もなく優しい口調で返答する。


「別にいいわよ。それも実験になるしね。……記録はしているんでしょう?」

「はい。もちろんです! レイブン様」

「だったら問題はないわ」

「優秀な副官がいて羨ましいなレイブンよ。……さてと、行くか……」


 意を決したユダは闘技場にいるトリニティの元へ一瞬で移動する。突然のことにトリニティとリコルは目を見開く。今にもトリニティを攻撃しようとしていた石人形ゴーレム合成魔獣キメラの攻撃が移動してきたユダへ当たろうとしていた。しかし、攻撃を当てることは叶わない。なぜなら、眼前まで迫っていた石人形ゴーレム合成魔獣キメラをユダが目にも止まらぬ一刀で斬り伏せたからだ。何事もなかったかのような余裕の態度でユダはトリニティへ声をかける。


「調子はどうだ? トリニティ」

「うむ、うむ、うむ、自らを高めてはいるが……。相手が弱過ぎて少し拍子抜けしていたところだ。……そこで、友よ。どうだ? 我と剣を交えぬか?」

「せっかくのお誘いだが、遠慮させてもらおう。それに私がここへ来たのはお前に用事があったからだ」

「それは、それは、それは、残念だ。それで用事とはなんだ?」

「お前に協力する者を連れてきた。……というより協力する者が決まったというべきか。ついてこい」


 説明をするためにユダはトリニティをレイブンの元へ移動させようとする。しかし、移動する前に何もない空間からレイブンが転移してくる。


「時間の無駄は省かせてもらう。トリニティ。私があなたに協力してあげる。だから、面倒はかけないで……」

「というわけだ。いいな、トリニティ?」

「そうか、そうか、そうか、友であるレイブンが我に協力してくれるのか! まさに百軍を得たようなものだな!」

「はぁ……、疲れるわ。……それじゃあ、ユダ。何をすればいいのか説明して。どうせ、そのためにここまで来たんでしょう?」

「流石はレイブン。全てお見通しか。お前達にやってもらうのは不死者アンデッド軍団の作成だ! レイアーと共に進めてはいたが、まだ軍団と呼ぶには質も量も不足している。その続きを頼みたい。それが終われば、……いよいよ宣戦布告だ!」


 ……闇が着々と準備を進めている。

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