109話 有罪の魔法
頭の中で文字の羅列が浮かんでは消える。
俺の口は、文字の羅列を吐き出すためにあった。
「え、ウィン。その本、どこから出したの?」
俺の右手には、漆黒の分厚い本。
ボコボコとした表紙の隆起は肉を想起する禍々しさ、見たものは呪われている禁書とでも考えるのが普通だろうが、こいつは禁書ではない。
「おい、元魔王。邪魔するな。賢者ウィンフィールドは執行中だ」
ナイスだ、賢者ベラトリ。
賢者ベラトリが立ち上がって、本の表紙を見る。
「
ベルトリは合点がいったとばかりに口笛を吹いた。
顔色が良くなっているのは、自分自身に回復の魔法を使っているからか。
「何だよ……おっさん。さっきまでは死にかけだった癖に……それで執行中ってどういうこと?」
「賢者ウィンフィールドは、ゴファを呪っている最中ってことだ。静かに見ていろ。元魔王、俺の理解が正しいなら面白いことが起こる――」
賢者ベルトリは気付いている。
この本が――ゴファにとっての致命的な呪いであることを。
くたびれた表情に余裕が戻っているのが、ベルトリが勝ち筋を見出した証。
「しかし、元魔王。お前のご主人様はとんでもねえ鬼畜だな……お前、最初からこれを知っていたのか?」
「……これって何? ていうか、僕は、ゴファと戦わなくていいの?」
「その感じじゃ、何も知らなかったてことか」
「……どういうこと? 教えてよ」
「賢者ウィンフィールドは、最初からゴファに対する切り札を持っていた。ゴファの野郎は、進化の系譜が吸血鬼じゃねえんだ。あいつは偽物の吸血鬼、だから
空には怒り狂う魔王ゴファ、配下の軍勢にぐるっと囲まれている絶対絶命の状況にありながらも、賢者ベラトリは確信をもって言った。
「元魔王。俺たちの勝利は、確定した』
俺は継続して、聖典に浮かび上がる文字を読み上げ中。
天から降り注ぐ白い光。
聖なる輝きに照らされた吸血王ゴファ、身体がぼろぼろと崩れていく。
『やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
『聖マリ』のプレイヤーなら誰もが知ってる常識、その一。
魔王ゴファの腹心、真祖二体を先に倒すこと。
腹心を倒せば、素早いゴファに先制攻撃が通ります。
「……うわあ、ゴファの奴。えらいことになってる……』
しかし、ミサキは別にゴファが可哀そうとか、何とも思ってないみたいだ。
反対に賢者ベルトリの仲間二人は、どこかドン引きした表情で俺を見ている。
なんでだよ、俺は助けてやったんだぞ。
「呪うのに忙しい賢者ウィンフィールドに代わって俺が説明してやる。ウィンフィールドが持つ本は、マガチの聖典と言われている」
「え、それが聖典? どう見ても聖なる一冊に見えないんだけど。呪われてない?』
「
『聖マリ』のプレイヤーなら誰もが知ってる常識、その②。
魔王ゴファに挑む時は、
「ただの
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