106話 ゴファのステータス
「――貴様の国へ帰れゴファ! このリンデマにてめえが欲しがるものなんて何も無えよっ!」
ベラトリの奴、頑張ってるなあ。
しっかし誰もが憧れる高位職業『賢者』なんだから多少は見てくれにも興味を持てばいいのに……。
ベラトリの服、あんなんどこにでも売ってるだろ。
賢者が着るにはお粗末な灰色のローブ。杖だけは多少凝ってるみたいだけど、あんな見てくれじゃ誰も賢者だなんて思わないぞ?
「賢者を食えるなんて、これから数年間ゴファ様の機嫌はいいぞ!」
さて俺は今、ゴファ配下の軍に混じっている。
俺の周りにいるモンスターは全てゴファの配下だ。吸血鬼もそうだし、人間に近しい容姿のモンスターも多い。恐るべきはその数、こいつら何千体もいるんだ。魔王ゴファの軍にたった数人で特攻を仕掛けたベルトリの頭の可笑しさがよくわかるな?
「あれしきの人数でゴファ様を討てるわけがねえ!」
もっとも誰も敵対種族である人間の俺を見ていない。
戦士の職業補正『折れない心』に重ねた、
……しかしゴファの配下は誰もゴファの勝利を疑っていないな。
ゴファの配下だって馬鹿じゃない。賢者といえば、大陸各地でパーティを率いて魔王軍を討伐している魔王の敵の代名詞みたいな奴らだ。今回、少数で攻めてきたとはいえ油断ならない敵であることはわかっていると思うけど……。
俺は地面に座り込んで、あいつらの戦いをじっくりと観察中。
ベルトリの杖から飛び出る光線が雲を貫いたり、見えない力がゴファを空から引きずり降ろそうとしたり……ベルトリの攻撃が次々と繰り出されていた。
「ベラトリ、お前は賢者の片隅にもおけぬわ!」
空の上で絶対支配者って感じで佇むゴファ、迫力は真祖吸血鬼とも比べられない。
でも賢者ベルトリのやつ、本当によくやってるよ。
やっぱりあれだな? ベルトリは色々な職業を経験して賢者まで成長してる。ああいう正統に強くなってきた奴らは戦い方も多彩で応用力もある。俺みたいに
「賢者とは導くものだ! 貴様一人でこの吸血王に勝てると思ったか! 思い上がりも甚だしい」
――ゴファ、その通りです。
賢者は魔王討伐パーティの中核を担うに相応しい高位職業だ。
だけどなあ、今のベラトリみたいに賢者って職業は最前線でたった一人で戦うような職業じゃないんだよ。ベラトリと同格の前衛で戦える高位職業が後数人は必要だ。
「ベラトリ! 魔王の戯言に耳を貸すな!」
今もベラトリの周りで雑魚狩りをしている二人の仲間。
あいつらも魔王に挑むには役不足もいいところだしなあ……。わかってたことだけど、あいつらじゃ『聖マリ』のゲーム通りゴファを倒せない。
残念ながら、ゴファを惜しいとこまで追い詰めたって評価さえも残されない。いや、まあなあ……。ゴファは強いからな。
仕方ないとはいえ、仕方ないんだけど。『聖マリ』のゲームじゃ、ゴファ達はこのリンデマを陥落させると、配下を残して魔王領へと戻っていく。その配下ってのはさっきミサキが倒した真祖吸血鬼の二体だったりするんだけど……。
ちなみにこの戦場にホーエルン魔法学園生のズレータや今のマリアを投入したら、ゴファに辿り着くことも出来ずに速攻で死んでしまうだろう。
さて……今ならいけるか。ゴファ、お前のステータス確認させてくれ。
俺は空に佇む威厳ある吸血王を視界に捉えた。ステータス、オープン。
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名前:ヒヨヒヨ・ゴファ
性別:男
種族:吸血王
レベル:7
経歴:『ヒヨコ』『鶏』『闘鶏』『偵察鳥』『吸血鳥』『三眼血鬼』『魔王』
趣味:自分の強さにうっとりすること
HP:6390000/7370000
MP:540000/1110000
攻撃力:770000
防御力:420000
俊敏力:510000
魔力:12200000
知力: 800
幸運: 10
悩み :賢者、つっえええええええピヨ! 何が勝って当たり前じゃピヨ! あの賢者、馬鹿強いピヨ! しっかし部下の威厳を保つためにも、余裕で勝利せねばならんピヨ――! 魔王の辛いところピヨねっ!
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……。
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