104話 ゴファのパワハラ
吸血王ゴファの性格は、よく知っていた。
あいつは美食家だ。
食事にこだわり、質の高い食事を手に入れるためなら同族の魔王に喧嘩を売ることもある好戦派。特に力のある魔法使いを好み、その目に叶う食事にありつけない場合は数か月何も食べないことだってある。だから賢者ベルトリの仲間なら、ゴファをおびき寄せることが可能だと思った。
「ウィン。よく、知ってたね。ゴファが魔法使いに目がないってこと!」
「俺は魔王オタクだからさ。それよりゴファが出てきたんだ。奴の側近もすぐに出てくるだろうから、見張っててくれ」
今。世界は荒れ狂っていた。
雲の隙間から雷鳴が轟き、豪雨が降りそそいている。賢者ベルトリの魔法、空を飛ぶ吸血王ゴファの動きを少しでも束縛するために、天候に力を加えている。
ベルトリは本気だ。ゴファを仕留めるために、最初から全力で飛ばしている。今はゴファも賢者との闘いを楽しんでいる。
でもゴファの側近まで参戦してきたら、すぐにベルトリは敗北するだろう。
「これだけモンスターがいるんだよ。真祖、見つけられるかなあ」
「真祖が現れたら、すぐに分かるよ。あいつら、白いから」
空を覆いつくすゴファの軍団。
あいつらも吸血王ゴファと賢者ベルトリの戦いを見守っている。
突然の賢者の襲撃にゴファの軍勢は戸惑っていた。
――賢者は強い。時に単体で魔王すら凌ぐほどに強力な職業だ。
でも、どちらかと言えば賢者は後方でどっしり構えているタイプが多い。賢者ベルトリのように自ら戦場で戦うタイプは稀だ。
「あのおじさん。よくやってるよね。ゴファと真っ向から渡り合おうとするなんて、その勇気だけは買うよ」
そして俺とミサキは移動拠点を地下に秘匿する、ボロ民家の中から特徴的なモンスターが現れるのを待っていた。
天気がさらに荒れていく。まだ夏の手前だっていうのに、空からは大きな
ベルトリの死闘、命を賭して吸血王ゴファを戦っている。
「……ウィン、見つけた。白い吸血鬼が二体! 戦いに介入しようとしてる! あれを倒せばいいんだね!」
やっと、現れたか。ゴファの側近。
ベルトリの戦い、邪魔はさせないよ。
空に現れた二体のモンスター。あれが吸血鬼の親玉、真祖だ。
真っ白でひと際大きな身体、鋭い爪を持ち、ゴファも絶大な信頼を寄せる腹心。でも二体の内、一体はミサキの魔法を受けて大地に落下している。
「賢者の襲撃と聞いて来てみたが――なぜ、お前がいるのだ! 魔王ミサキ!」
真祖、残りの一体が驚愕の表情でこちらを睨みつける。
「人間に与したとの話は真実だったか! ……何をぼさっとしている! あの人間を殺せ! あいつの方が、賢者よりもよっぽど厄介だ!」
真祖は白い身体の中で、顔だけを赤くして憤怒の表情で呪いを放つ。でも、呪いはミサキが指先から放つ魔法であっさりと弾かれる。
ミサキが喧嘩相手のマリアにぶっ放す魔法の威力とは雲泥の差。
「馬鹿だなあ! ただの真祖が、僕に勝てるわけないじゃん!」
「おのれえ! 魔王ミサキ、何が狙いだ!」
「ゴファの首。あいつだけは僕の手でやってやろうと思っていたんだ!」
高位モンスターである真祖の魔法。だけど、本気になった彼女の敵じゃない。
真祖もそれを分かっているのだろう。すぐに大声を出して、吸血王ゴファに魔王ミサキの襲撃を伝えようとしている。
「ゴファ様に伝えろ! 賢者のみならず、魔王の襲撃!」
その判断は正解だ。
この地でミサキと対応に戦えるのは、同格のゴファしかいない。
さてさて、真祖のステータス、オープン。お前の強さはどれぐらいだ。
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名前:
性別:男
種族:真祖
レベル:6
経歴:『インプ』『妖怪』『吸血鬼』『真祖』
趣味:部下へのパワハラ
HP:2290000/3170000
MP:500000/540000
攻撃力:170000
防御力:320000
俊敏力:390000
魔力:6300000
知力: 1500
幸運: 80
悩み :ゴファ様のパワハラをどうにか出来ないか? 何故、真祖である私が、ゴファ様の食事メニューを考えなければならないのだ……。ゴファ様の偏食っぷりにも困ったものだ。
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あっ、何か真祖に対して急に同情してしまう。
ゴファのパワハラ、えぐそうだからなあ。
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息抜きで、学園ものを書いてみました。感想頂けたら嬉しいです。
『王女殿下は、俺との関係を秘密にしたいらしい(俺との関係って、何?)』
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