第81話 適正ランク11迷宮『ラーズ樹林』②
「おい! ウィンフィールド、待てって!」
ズレータが俺を止める声が聞こえる。
でも俺は構わず、歩き続けた。進むのに邪魔な枝を手でどかして、ぬかるんだ地面を歩いて行く。すると、何体もの小型恐竜が襲ってきた。
襲ってくる直前に、恐竜は鳴き声を上げるんだから、知能は高くないよな。
自分の存在を知らせて恐怖を煽ってるのかな。
一撃で急所を攻撃。これぐらいの相手に武器は必要ない。ちょっと手が痛いけど。
戦士の職業補正『
「す、すげえな……冒険者ギルドが一気にランクを10へ認定したんだ、弱いわけがねえって分かっていたけど、ここまでかよ……」
俺の進んだ後には恐竜の屍が続いている。
ラーズ樹林は小型恐竜の巣窟であり、食物連鎖の頂点に君臨しているのがバナウザウルス。
その卵を持って帰ることが、公爵姫の側近であるエバンスからズレータへの依頼。
「ズレータ。一体、お前のほうに行ったぞ」
「くそ! やるしかねえか!」
ズレータは侍らしく、刀を構え、迎え撃つつもりだ。
「うらああ!」
だけど、動きが雑だなあ。
あの刀と侍の職業補正『動体視力』の恩恵があったら一撃で仕留められるのに、何度も切りつけてやっと一体を倒す。はあはあしてるし。
「どうだ! ウィンフィールド! やってやったぞ!」
自慢気な顔してるけど、弱い……。
まあ、まだ二年生が始まったぐらいだから仕方ないか? 『聖女様って、呼ばないで!』 あのゲームの中でズレータを鬼強化したらメッチャ強くなるんだけどな。
俺が再び歩き出したら、あいつが怒った顔で詰めてくた。
「——ウィンフィールド、待てって! 行くのは分かった! だけど、俺があのおっさんから聞いた話じゃ、もっと楽なルートがあるんだ! そっちにしよう!」
「駄目だ、正面から突破しようズレータ」
「お前、正気か!? ここはラーズの樹林だぞ! 適正ランクは11だ! しかも冒険者パーティとしての適性ランクだ! 幾らお前の冒険者見込みランクが10だって言っても無理がある! 俺とお前の二人だけで怪我を治す神官もいないんだしな!」
「ズレータ。俺は二度目だ。だから大丈夫」
「何が二度目なんだよ!」
「この場所に来るのが、二度目なんだよ。ラーズ樹林のことは大体、知っている」
は? って顔をするズレータ。
まあ俺だって、ラーズ樹林にまた来るとは思わなかったよ。
だけど、来たことがあるんだよな。俺の故郷、ピクミンは嘗て大陸にピクミン在りって言われるぐらい栄えた国だけど、今はとっくに没落。
領地の森や山の中に朽ちた
「ウィンフィールド……お前、それ何歳の時の話だよ」
「10歳ぐらいかな。あんまり覚えてないし、思い出したくもない過去だから詮索しないでくれ」
「お、おう……」
王族として生まれた俺だけど、故郷では物心ついた時から家の外で一人でいることが多かった。その時に朽ちた
大半は、もう活動を停止している移動拠点なんだけど、たまにまだ動くやつがあるんだよな。
簡単に説明するとズレータは呆れた顔で……。
「ウィンフィールド……お前って本当に変な奴だよな」
「そうか?」
「それだけの力があって、どうしてマックスに良いようにやられていたんだよ……俺にはそれが分らねえよ……正直、今のお前より実力が上の奴って3年生にもそういないんじゃなねえか」
「いやいや、俺みたいに実力を隠してる奴って案外多いと思うぞ」
俺はホーエルン魔法学園にいる奴らのことをよく知ってるからな。
それより。気になっていたことがある。
「ズレータ。お前、侍の力を使いこなせてなさすぎ。ちょっとその刀、貸してくれ」
「あ……おい!」
「侍としての戦い方をちょっとだけ教える」
しっかし、ズレータの奴、良い刀を使っているなあ。
こんな良い刀、俺は使ったことがないぞ。この刀と、侍の職業補正『動体視力』があったら、さっきの恐竜なんて一撃で倒して欲しいもんだ。
「お。ちょうどいいところに」
懲りずに一体、小型恐竜が襲ってくる。
――――――――――――————————
16番の冒険者ギルドにて
ミサキ「エアロ。ウィンがどこ行ったか知らない?」
エアロ「あの子なら、ズレータ君が呼びに来てどこかに行ったわよ? あの二人、友達にでもなったのかしら」
【新作情報】
霊能力者が異世界召喚される新作を書いてみました。
主人公最強の呪術ものです。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895103171
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