第25話 英雄の強さ
そこから先は一方的だった。
奴らは必死になりながら、俺を倒すそうと攻撃を繰り広げる。
でも、ゲスイネズミ・ボスの攻撃は、面白い位に俺の体に届かない。
「……うそだ」
俺の奴隷さんは、口をあんぐり開けて見ている。
ミサキは俺の力じゃ、ゲスイネズミ・ボスには勝てないと考えていた。
けれど、現実はどうだ。
俺はゲスイネズミ・ボスを相手に圧倒していた。ゲスイネズミ・ボスの動きを完全に見切っているし、的確に敵の急所を攻撃している。
「ヂュウウウウウウウウウウウう!!」
職業、
このホーエルン魔法学校には大陸全土から才能を持った学生が集まるが、
多分、誰も
学生の大半は戦士や魔法使いの上位職を目指す奴らが多いけど、職業、
「ヂュウウウウウウウウウウウう!!」
進化条件は、
そんな
俺の目には、飽きる程に倒したことのある奴らの弱点がはっきりと見えている。
ゲスイネズミ種なんて、俺の故郷にも沢山生息していて、奴らとの戦い方はもうこの身体に染み付いている。
慣れた動きでゲスイネズミ・ボスを翻弄し片付けていると、あいつがやってきた。
――ゲスイネズミ・ビックボス。
どうやら「下水の王国」を管理しているらしい迷宮の大ボスは、奴がけしかけたゲスイネズミ・ボスらの惨状を見て、口を尖らせた。
「お前らァアア! 力の差も分からんのかあァアア! その男の戦いっぷりを見たら、けったいな男だと分かるじゃのう! 撤退じゃあアアアアアアアア」
ゲスイネズミ・ビックボス。
ステータスを見る限り、奴と俺の差は圧勝だ。
しかも、
「そこの人間! お前もお前じゃあ!! それだけの力がある男なら、もっと難しい迷宮に行かんかアアあああアア!! ほら、逃げるぞオ!! 立て、立て!」
それでもゲスイネズミ・ビックボスの言葉で、まだ息のあるゲスイネズミ・ボスらは立ち上がり、迷宮の奧へと引き上げていく。
恨みがましい目で俺を見ながら、
最後に残ったゲスイネズミ・ビックボスは、俺を睨みつけながら去っていった。
「……嫌味な奴じゃのう! そこの人間! これは、弱い者虐めじゃあアア!」
後に残されたのは俺とミサキ。
これからゲスイネズミ・ビックボスと激しい死闘を繰り広げようと思っていたのに拍子抜けってやつだ。
参ったなあ。ゲスイネズミ・ボス相手に華麗な立ち回りを決めていた俺を、今も信じられないようなものを見る目で見ているミサキ。
そんなミサキが絶対に勝利不可能って思っていたゲスイネズミ・ビックボス相手に勝利を収めた時、どんな顔をするか見てみたかったんだけど。
「……ウィン! 今の戦いは何だよ!」
わなわなと震えながら俺の戦いっぷりを見ていたミサキが叫んだ。
怒っている。
しかも、一年共同生活をしていた俺が見たことがないぐらいの怒りっぷり。
ぎゅうって手を握りしめて、ミサキは叫ぶ。
「絶対に
ザコって……。本音が漏れてるよ、ミサキ。
「……進化しなくなって俺はこれぐらいは出来たんだけどな」
俺の戦い方は職業個性を用いての基礎能力の底上げと、職業補正が持つ特殊能力の選択だ。このホーエルン魔法学園に入学する前、ミサキと出会った瞬間に洗脳されたからこの力を使えなかったけど……ゲスイネズミ種の相手ぐらいは余裕である。
「はあ!? じゃあウィンは、
「ま、まあ……」
「嘘つかないでよ! そんなこと、あり得るわけないじゃん! ウィンは、弱いんだから!」
そんなこと言われてもなあ……。
ミサキと出会う前の故郷じゃ、俺は魔王軍であのリッチよりも遥かに高い経歴の奴らと戦っていたんだし。まあ、これはミサキも知らない事実だけどさ。
それにゲスイネズミ相手じゃ、大賢者になって得たステータスさんの警告だって発動しなかったし。
「——おい、お前ら大丈夫か!? ゲスイネズミやゲスイネズミ・ボス共が地上に出て、大騒ぎになっている!」
熊のような大男の登場で、俺とミサキは言い争いを止めた。
俺たちの会話の中には、俺が大賢者へ進化したって事実が含まれていたけれど、それは学園関係者には絶対に知られてはいけないことだから。
「ん? ウィンフィールド。この惨状は何だ……?」
12番の冒険者ギルド職員。
職業『
「……まさか、お前がやったのか?」
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