第23話 英雄の誘い
「おまえらあアアア! 根性見せんかでデュウうううううああああああああ」
初めて見たよ。ドレイネズミのビッグボスなんて!
それに何だよあの能力値——ばぐってるぞ!
特に俊敏力が高すぎる! 本気で狙われたら一たまりもない!
「おまえらあアアア! 儂の娘が人質にされかけたんだラアアアアアアア! 親父がコケにされて、仇取ってやろうって奴はいねえのかああアアアアア!」
だけど、ドレイネズミの大親分は自分から戦う奴じゃないようだ。
配下のゲスイネズミ・ボスをしかけて、あいつは後ろで踏ん反り返っている。俺たちの後ろには、迫ってくるゲスイネズミ・ボスの姿が十体ぐらい見えるだけだ。
ミサキが本気になれば余裕だろうけど、あの数を相手にするのは面倒だ。
「ウィン! こっちだよ!」
ゲスイネズミ・ボスを呼び出すために、奴らの子供を利用しようとした。
通常のゲスイネズミと若干、色の違うゲスイネズミは上位種ボスの子供だ。俺は上位種ネズミの子供の見分け方を知っていたから、その辺の一匹を捕まえてゲスイネズミ・ボスを集めようと思っていたんだけど……。
どうやら運悪く「下水の王国」の主を引き寄せてしまったようだ。
「ウィン! もっと強く手を繋いで! あいつらに追い付かれたら一たまりもないから!」
俺とミサキは必死で逃げていた。
彼女に急かされるまま、足を動かしている。
逃げなければ。
早く迷宮の外に出て、冒険者ギルドの職員に助けを求めないといけない。
自分の力に余り相手が出てきたら、一目散に逃げる。
それが学生のあるべき姿だ。
でも、俺の頭の中はミサキの言葉なんて右から左に通り過ぎていった。
だって、今。俺は、ミサキと手を結んでいるから!
「ウィン! 君って人は……本当に、世話がやけるなあ! 運が悪いにも限度があるよ!
元来た道を急いで俺たちは戻っていた。
魔法使い系統の職業をおさめているミサキがあいつらの足止めをしている。
俺はミサキに手を引っ張られ、それでも内心は落ち着きながらゲスイネズミ・ボスのステータスを盗み見た。
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名前:堂島・ポチ
性別:男
種族:ゲスイネズミ・ボス
レベル:3
経歴:無
趣味;深夜徘徊
HP:673/731
MP:0/0
攻撃力:1210
防御力:980
俊敏力: 3410
魔力:0
知力: 60
幸運: 11
悩み :ビッグボスの言うことは絶対でヂュウ。パワハラされてばっかりでしんどいでヂュウ。ビッグボスがいなくなったら、下水の王国はもっと平和になるでヂュウ。あの人間の娘が持っている凶器に、ビックボスをぶっつぶして欲しいでヂュウ。
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「うわあ! また数が増えた! あいつら、どれだけいるんだよ!」
俺はズレータの決闘を受けて、ミサキと共に駆除数を競うことになった。
でもズレータのようにゲスイネズミをちまちま狩るよりも、大穴狙いでゲスイネズミ・ボスを狙うことにした。
「ねぇ! ウィン! 迷宮の外に出て、助けを求めよう! 今追ってきてるあいつらならまだしも、あの一番強そうなやつは僕には無理だよ!」
魔王ミサキの能力値から言えば、ゲスイネズミ・ビックボスだって余裕だろう。
けれどミサキがこんな場所で真なる力を見せるわけがなく。
「……ウィン。なんで、笑ってるの!?」
ミサキと初めての共同作業。
仲良くゲスイネズミ・ボスを狩るはずが、異様に俊敏の高いゲスイネズミ・ビックボスに追われている。
これは俺の運の悪さが、あいつを引き当ててしまったんだろうか。
「俺が、笑ってる?」
「どこからどう見ても笑ってるよ! ウィン、君は危機感ってものが無いのかな!」
だって、楽しかった。
こんな下水道の狭い一本道で、ミサキと手を繋いで逃げ回っている。
いつにもまして、気分が高まっていた。
「なぁ、ミサキ! お願いがあるんだけど……!」
「お願い!? ウィン、こんな時に急になにさっ! って、どうして止まるの! あいつらに追いつかれちゃうって!」
戦士の職業補正「
柄にもなく、気分が高揚しているからか。
俺が立ち止まって、こんな恥ずかしい言葉を言ってしまったのは。
「もしも、あいつらに勝ったら——俺とデートしてくれないか?」
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ミサキ(真っ赤)「……え?」
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