レベル2.存在を見せつけましょう

第20話 預言者のお願い

「僕以外にウィンの冒険者パーティに入りたい物好きがいたなんて……ていうかウィン! ど、どうするのさ! あの子、入れちゃうの?」


 ミサキは本心を偽ることに慣れている。

 スパイとしての教育を受けているから感情を偽るなんて簡単だ。

 マリアに謝罪させたことに対しても、何の不満も持っていないように見えた。

 


 さて、ホーエルン魔法学園の敷地内に存在する管理迷宮「下水の王国」。

 市街地にぽっかりと開いた更地、更地の中に三十個近いマンホール。

 マンホールの下が「下水の王国」に繋がっていて、大勢の学生がどのマンホールから中に入ろうか考えていた。

 

 けれど、金髪ブロンドのふわふわとした髪を持つ一年生の登場で、場が混乱。

 まさかまさかの俺の冒険者パーティ加入希望ときた。

 しかも、俺。レベルアップしちゃったし……。


「僕。ウィンと二人きりがいいんだけど……」


 ミサキが目をウルウルさせて、俺を見る。

 すると学生の中で、露骨に舌打ちする奴らがいた。俺にぎらぎらと敵意充分の視線を向けている。

 奴隷であるミサキ、お洒落とは無縁だけど……分かる奴には分かる。

 磨けば光る、ダイヤの原石感。


 ともあれ、まずはこっちだ。

 俺のパーティに入りたいといかいう、不思議少女。

 大賢者、頼む。ステータスオープン。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 名前:ソフィア・レぺゼン

 性別:女

 種族:人間(魔法使い)

 レベル:7

 ジョブ:『常人』『魔法使い』

 隠れ職業:『 預言者 オラクルマスター』※特殊補正のみ。ステータス値に『 預言者 オラクルマスター』反映はされません。

 HP:36/36

 MP:244/244

 攻撃力:26

 防御力: 60

 俊敏力: 90

 魔力:130

 知力: 80

 幸運: 800

 悩み :開示不可。レベルが足りません。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おおおおおおおおおおおおおお!

  預言者 オラクルマスター、レア職業きたああああああああああああああああ。

 

 思わず頭の中で絶叫してしまった。


「ウィン! 急に声出してどうしたの! 気持ち悪いよ!」


「え……俺、声でてた?」


「僕、地獄耳だから。それより、ウィン! あの子は、君の知り合いなの? 僕たちの冒険者パーティに入りたいって言ってたよ!」


「まあ……ちょっとな……昨日色々あって……」


 俺はきっと顔を引き締めて彼女を見た。

 ゴールドブロンドのソフィアちゃん。

 うん、あの子だ。昨日リッチに襲われていた不幸な一年生。


 そんな彼女のステータスで惹かれた点は、隠れ職業のアレだ。

  預言者 オラクルマスター、とは、珍しいものを見た。


  預言者 オラクルマスターは非常に有能な職業。特殊補正は喉から手が出る程に欲しかったけど、取得条件が余りに厳しすぎて俺でさえも取得を諦めた。

 自分のパーティメンバーに、 預言者の特性を持つ奴がいたら非常に便利。

 でも、俺の答えは決まっている。

 

「君はいらない。他を当たってくれ」


「えええええ! ちょっとウィン! 本気なの!? 僕、てっきり歓迎すると思ってたんだけど……! ていうか、言い方! 他にあるんじゃないの!」


 どうせ仲間にするなら俺の不幸に耐えられる実力者がいい。

 ミサキはちょっと強すぎだけど……少なくともマリア程度の力は欲しいんだ。


 俺の隠れ職業『厄病神ゴースト』は無条件に発動する。

 昨日は、急に魔剣が襲ってきて、リッチと出会う羽目になった。


 リッチから救いだした俺に恩を感じての行動だろうけど、少しは思いとどまって欲しいもんだ。

 でも、そうか。

 まだ入学してばっかりだから、俺がどんな扱いを受けているか知らないのか。


「見てよウィン! あの子、泣きそうじゃん!」


 確かに、目のふちに大粒の涙を抱えているけけど、言いたいことがあった。

 ソフィア、君……授業はどうした。

 入学したてで、授業がびっちり詰まっているのに……いいのか? 

 最初の授業は滅茶苦茶大事だぞ? 友達作りには欠かせないぞ?


「おーい、入れてやれよ! ウィンフィールド! お前のパーティに入りたい物好きなんてその子以外この学園にはいないだろ!」


 外野、うるさいな。

 視線だけで奴らを睨みつけようとして。


【大賢者ウィンフィールド! 背後から攻撃を感知! 頭を下げてください!】


 頭を下げた直後、真上に何かが通り過ぎる気配。

 瞬時。右手の指で掴むと、冷たい感触。

 見れば、投降用の短剣ダガーであった。



「よく捕まえたじゃねえか——どっからどう見ても常人ノーマルじゃ出来ない動きだぜ!」


「ちょっと! 危ないだろ! 何するんだよお前!」


 ミサキが拳を握りしめて、俺のために怒ってくれた。

 でも、ミサキは知らないようだ。これが、俺の扱いだ。

 昨日までは何をしても怒らなかった無口スケルトンだったんだ。


「黙ってろ、奴隷! 俺が用があるのは、お前の隣にいる木偶の坊だ! 理由は知らねえが、マリアを泣かした奴は許さねえと決めている……ッ!」


 俺が振り返るとそこには。

 マリアのパーティメンバー、職業『侍』ズレータが立っていた。

 これだけ大勢の学生がいても際立つ存在感の強さはさすがの一言。


高みへの足掛かりエスペランサ―、副リーダとしての権利を使い、ウィンフィールド。お前に決闘を申し込む」


 ズレータが何かを言っていたが完全無視。

 

 俺はあいつの隣にいる、でかい熊のような大男に目を奪われていた。

 12番の冒険者ギルド職員。

 職業は戦士の上位職である『守護者ガーディアン』、学生からも慕われている学園の人気者。

 そいつは頭をがしがしとかきながら、言った。


「見届け人を務めさせてもらう、12番ギルドのヨアハだ。ウィンフィールド、お前は選択出来る。この男の挑戦を受けるか、否か。例え受けなかったとしても、お前の名誉は保たれる。全て、お前の自由だ。どうする?」


「——受ける」


 売られた喧嘩は買う。買うに――決まってるだろ。

 


―――――――――――————————

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