第19話 レベルアップ
マリアとのいざこざに時間を使う気は無かった。
何せ、念願の冒険者パーティを作るんだ。
俺の気持ちはとっくに16番冒険者ギルドに向いていた。
だけど、あのままマリアを放置していくことは出来なかった。
ミサキには、マリアにひどいことを言ったことの謝罪をさせた。二人の関係が悪化することは避けたかったし、あの場にはマリアの冒険者パーティのズレータもいた。
マリアが結成している冒険者パーティは間違いなく、このホーエルン魔法学園でも屈指の実力者集団になる。
今はまだ期待の有望株ぐらいだけど、あいつらの成長スピードは尋常じゃない。
「見ろよ——あいつが、いるじゃん! 新入生を救ったウィンフィールド!」
『聖マリ』の特徴として、効率的に仲間の能力やレベルを上げるには、他パーティとの友好度が重要だ。
他パーティと仲良くなることで迷宮内部での連携も可能になるし、有益な情報や珍しいアイテムの交換や買取も可能となる。
だからあいつらとの仲がこじれることは避けたかった。
既に、あいつらとの友好度は低いだろう。
でもこれ以上下がることは避けたかった。パーティーリーダーであるマリアを泣かせたとなれば、パーティメンバーとの敵対は間違いない。
敵対だけは、御免だ。
「なあウィンフィールド! 昨日の件、どういうことだよ! お前が本当に助けたのか? 凶悪な外のモンスターがいたって噂だぜ? おい、教えろって。減るもんじゃないだろ!」
16番冒険者ギルドでは、冒険者パーティを作ることが出来た。
パーティ構成は当然、俺がパーティリーダー。
一人目のパーティメンバは俺の奴隷であり、今日から学年一年生になったミサキ。
3番冒険者ギルドのギルドマスターが事前に根回しをしてくれていたこともあって、ミサキの学生登録も問題は無かった。
すぐさま俺は16番のギルド職員から依頼を貰うことにした。
初めて貰った依頼は、害虫駆除。
ホーエルン魔法学園が管理する初心者用の迷宮「下水の王国」で発生している小型モンスターの討伐。
『聖マリ』でも2年生になって最初に与えられる依頼として、凄い有名なやつ。
攻略方法を熟知していることもあって、意気揚々と迷宮の入り口に向かう。
「うわ……見て。ついにあの人、自分の奴隷まで迷宮に連れてきてるよ? あの奴隷、神官の職業って話だから、あの子に戦わせるんじゃない?」
「ちょっと待てよ。あの子、奴隷の首輪も奴隷の烙印も押されているのに、制服着てるぞ」
迷宮に向かうまでに、妙にミサキが大人しいとか、ちらちら他の学生から見られているとか気になる点はあったけど、何よりも俺は依頼を達成したかった。
冒険者パーティとしての初めての依頼。
失敗することは出来ないし、ここで凄い速さで依頼を攻略したとか、付加価値をつけることが出来たら、俺たちの冒険者パーティとしての格も上がるってもんだ。
「でも、あの噂は真実なんだろうな! この子、ウィンフィールド! お前を朝早くからずっと待っていたんだぜ! お前の冒険者パーティに入りたいんだってさ!」
問題なのは、初心者用迷宮「下水の王国」入り口に、俺たち以外にも大勢の二年生がいたってこと。
失念していた。
確かに今日は、俺たちと同じように新人冒険者パーティが溢れる日だった。
けれど、俺の頭の中には害虫駆除の依頼に必要なノウハウ全てが詰まっている。他の同学年の奴らを出し抜くことは十分に可能だろう。
けれど、これは……想像が足りなかった。
後ろにいたミサキが、俺の制服を引っ張って、これはどういうこと? と急かしている。いやいや、待ってくれよ。俺だって、聞きたいぐらいだ。
「……私のことはソフィアって呼んでください! ウィン先輩を待っていました!」
俺たちの冒険者パーティに入りたいという一年生の存在だった。
金髪ブロンドのふわふわとした髪を持ち、ミサキと同じ一年生であることを示すバッジを胸につけた女の子。
「——私をウィン先輩のパーティに入れてくれません?」
昨日、リッチから助けた一年生が、迷宮の入り口で俺たちを待っていたんだ。
【ウィンフィールド・ピクミン。レベルアップ条件の達成。大賢者レベル0からレベル1へ移行。レベル1への恩恵は大幅な能力値の上昇——大賢者ウィンフィールド、レベルアップしますか?】
俺は、何も分からずに、頭の中で、頷いた。
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名前:ウィンフィールド・ピクミン
性別:男
種族:人間(
レベル:1
ジョブ:『
隠れ職業;『
HP:89/91
MP:670/670
攻撃力:55
防御力: 140
俊敏力: 120
魔力:360
知力: 51000
幸運: -10000
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