第12話 英雄の鼓動
『聖マリ』の世界では、人間の
例えば、あのリッチの
種族:リッチ(
レベル:5
経歴:『一般兵』『上等兵』『小隊長』『幽鬼隊隊員』『幽鬼隊隊長』『
……
しかもレベル5。上位の
『聖マリ』の世界では、レベルが職業と同程度に重要だ。
同じ職業でもレベルの1と9は天と地ほどの差がある。
しかし……あああ!
なんでこんな奴がいるんだよ! 廃墟に住み着いたのは人間じゃなかったのか!
俺はただ、冒険者パーティを設立したかっただけなのに、どうしてこうなった!
「くかか! 何をしにやってきたのか知らないが、運が悪いにも程がある! 私との力の差、矮小なその身でも感じるだろう!」
相変わらず、大賢者の特殊補正、ステータスさんが逃走しろって喚いている。
俺とリッチの能力を比べればその判断は当たり前だけど、少しは応援してくれたっていいじゃないか。
でも……だから、頭の中で強く願う。
願うこと、それが昨日まで職業『
急激な心拍数の上昇。 身体が熱を帯びていく。
けれど、まだ駄目だ。これ程の強敵と戦うのは久しぶりだから、あと一つか二つぐらいは力が欲しい。
「恐ろしくて声も出ないか人間ッ! 祈りを捧げる時間ぐらいはやろう! 遺言があるのならば、聞いてやってもいいぞ!」
【大賢者ウィンフィールド! 現在のステータスでは、勝利不可能! 逃亡経路、確保! 指示を出します! 逃げ出しなさい!】
ステータスさんが必死に逃げろって言うけれど、あの女の子を置いて逃げろってか。彼女は今もずっとリッチの魔法、
俺がやるべきは、リッチが今も発動させている
そんなの簡単。だって俺はリッチが思わず
「リッチ。ホーエルン魔法学園への潜入は、先行者の邪魔になると固く禁じられている筈だ。お前みたいな下っ端は知らされていないのかも知れないけど。お前がやっていることは、自分自身の首を絞めているだけだ」
ローブの下でカタカタと笑っていたリッチの笑みが止まる。
よし、どんぴしゃだ。やはり『
俺たち人間の敵、大魔王はこの魔法学園に、ミサキ・ドラゴンという人間のスパイを送り込んでいる。
リッチは彼女に対する
「………………知っている。だが潜入者は、人間の女だと聞いている。お前は、女ではない。お前は何者だ、何故潜入者の存在を知っている」
「俺はさ、潜入者の仲間なんだよ。驚いた?」
「……ふざけるな。潜入者は、あの大魔王ドラゴンの忠実な
「次、あの子に
するとリッチが骨だけの指をこちらに向ける。
あ、やばい。そう思ったら、すぐに指先に灯る黒い靄——リッチの高魔力を込めた魔法が発射される。
魔力:96600
バカげた魔力にリッチの力である生者への怨念が込められた魔法だが、動きは遅い。チョウチョがゆっくりと飛んでくるぐらいのスピードなのに……俺の身体は動かない。
リッチが俺の動きを邪魔する、何らかの魔法を放ったことは明らかだった。
視界に映るリッチの魔法、徐々に近づいてくる。
あのリッチ、性格が絶対悪いな。ステータスさんが残虐性特化って言っていたのはこういうことか。俺の恐怖を煽っているんだろう。
「……人間。お前が何故、魔王軍の秘密行動を知っているのかは分からない。私は、お前の目的を問い質さねばならないのだろうが、くかか。ご馳走が待っている。半年ぶりの、食事だ。お前は後で、食らってやる。それまでは邪魔をするな」
奴は再び元いた居間へ、戻ろうとしている。
あの子に向かって、
リッチ。死者が黄泉の世界に行くことを拒み、現世に留まり続け、生者への怨念が肥大化したモンスター。しかも『
「……おい、待てよ」
俺たち人間が能力を飛躍的に向上させる方法は、大きく分けて二つ。
上位
けれど、俺は職業『
理由があった。
リッチの魔法、怨念が込められた高魔力の一撃。
ただの学生であれば、死に至るだろう魔法を、手のひらで魔法を受け止める。
「その子に
準備が整った。
職業『
次話 十三話 英雄の戦場に続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます