第24話

 手術でまだ毛が生え切ってないポピの足に触れると、そのたびにもとの足に戻るのを祈ります。

 はじめはこわごわさわっていたのですが、ポピが気持よさそうに目を閉じるのを見て、段々と自身が芽生えてきました。そのうちに皮膚の下にある筋肉や骨の形が段々わかるようになって来ました。

 しかし、いつまでたってもポピの足はもとどおりになりません。やはりびっこをひいて散歩をするのです。

 何度マッサージをあきらめようかと思ったか知れません。そのたびにリサちゃんはビデオを見ることによってずいぶん勇気づけられました。


 今度のお正月は静岡のジイジとバアバの家に行くことになりました。お正月に静岡へ行くのは2年ぶりのことです。夏休みのときよりはずっと大きくなったポピをジイジとバアバに見せたいこともあったのですが、お正月といえばもちろんお年玉です。リサちゃんはずっと前からそれを楽しみにしていました。

 リサちゃんは、ジイジとバアバにはポピがケガしたことを知らせていません。心配かけさせたくなかったからです。でもジイジもバアバもポピを一目見てすぐに気づきました。リサちゃんは思い出したくなかったのですが、思い切ってそのときのことをすべて話しました。いまでも口にすると涙が出そうになります。

 リサちゃんとお兄ちゃんはスキー帽と手袋をしてポピを散歩につれて行きます。

 みかん畑は、夏休みに来たときと違って、セミの鳴き声もなく静かで、ただ冷たい風がみかんの木をすり抜けるようにして吹いていました。

 空がとてもきれいな青色をしています。

 ポピは相変わらず地面に鼻先を突っ込むようにしてびっこの足で歩いています。

「ねえ、お兄ちゃん。ポピの足はずっとこのままなのかなァ?」

 リサちゃんは淋しそうな声で聞きます。

「さあどうかな。ぼくにはわかんないよ。でも最近気がついたんだけど、前よりはよくなってるみたいだよ」

 そういわれてリサちゃんは少しほっとしました。

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