第21話
診察台の上で自由になったポピは、ちぎれんばかり尻尾を振り、差し出したママの手をペロペロとなめ回します。
しかし、足にまだ白いギブスがはまっていて、いままでのように動くことができないポピを見たとき、あの日のことが鮮明に思い出されました。
「思ったより早く回復しています。このあとはご自宅でリハビリをしていただくのですが、回復しているといってもまだ完全ではないので、あまり無理をしないようにしてください」
お医者さんは新しいレントゲン写真を見ながら話します。
「はい。本当にありがとうございます」
ママはお医者さんと看護婦さんに深く頭を下げてお礼をいって診察室を出ました。
リサちゃんは診察室を出るときからポピを抱きかかえているのですが、どうしてもポピの足が気になってしかたがないのです。
そっと抱えれば落としそうだし、ちからを入れれば痛がるんじゃないかと思うと、なかなかしっくりといきません。そこで病院を出たとき、ママの顔を見ていいました。
「ママ、ポピを歩かせちゃだめ?」
「いいと思うけど……」
正直なところ、ママもどうしたらいいのかよくわかりません。
「じゃあ、少しだけ」
リサちゃんは持って来た首輪をはめてリードをかけると、恐るおそるポピを地面に降ろします。
ポピは久しぶりの歩行に戸惑いを見せ、何度もママとリサちゃんの顔を見上げながら歩くのでした。その後ろ姿は、あまりにも痛々しく、電柱から電柱の間を歩かせただけで抱き上げるリサちゃんでした。
家ではお兄ちゃんがポピの帰るのを、いまかいまかと待ち望んでいました。
久しぶりに家に帰ったポピは、床に降ろされると、ギブスの足のままこの10日間のことを報告するかのようにちぎれるくらい尻尾を振ってお兄ちゃんに甘えます。
パパが帰って来たときも、まるでそれが儀式でもあるかのように同じしぐさを見せるのでした。
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