第18話
「足を骨折したんだけど、いま手術してもらったからもう心配いらないわ」
ママが話す横でリサちゃんはうつむいたまま顔を上げようとしません。お兄ちゃんの顔をまともに見ることができなかったのです。
「ごめん、お兄ちゃん。リサが、リサが……」
リサちゃんはそこまでいうと、大きな声で泣き出してしまいました。
「しょうがないよ、わざとやったんじゃないんだから。だけどママ、ポピはどれくらい病院にいなきゃいけないの?」
「回復力によるから、いつになるかわからない。まあ、10日くらいというとこかしら。あまり長く知らない場所にいると、今度はストレスで病気になるから、あとは家で回復の様子を見ることにしましょうって先生がいってた」
「そっかァ」
お兄ちゃんはちょっと淋しげな顔になっていいました。
時計を見ると6時を少し過ぎていました。ママは急いで夕飯のしたくにかかります。
お兄ちゃんはいつも見ているテレビアニメに夢中です。
しかしいつもは一緒に見るリサちゃんですが、きょうばかりは大好きなアニメに見向きもせず、ソファーの上に上げた足を抱えてじっとなにかを考えるようにしています。
このままポピが歩けなくなったらどうしよう、という思いが頭のなかを駆けめぐりつづけていることが自分を失わせている原因でした。
普段と違うのは、テレビアニメばかりではありません。いつもこの時間になると、お腹が空いて夕飯のさいそくをするのですが、それもありません。
1時間ほどしたとき、玄関のドアが開いてパパが帰って来ました。いつも仕事で遅くなるパパですが、病院の待合室にいるとき、ポピが事故に遭ったことをママが携帯メールで知らせたので、仕事を早めにすませて急いで帰って来たのです。
いつもは走って出迎えるリサちゃんですが、パパの顔を見ることができなくて、リビングのソファーに座ったまま動こうとしません。
パパはリサちゃんの打ちひしがれた姿を見たとき、いまどういう気持か充分わかってたので、なにもいわずにそっとしておくことにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます