第17話

(あのときちゃんとわたしがリードを持っていればこんなことにならなかったのに……)

 自分の不注意でポピにケガをさせてしまったことをいたく後悔しました。

「リサ、こっちに来て座りなさい」

 ずっと泣いているリサちゃんを見かねてママは声をかけます。しかしリサちゃんは聞こえていないわけではないのですが、悲しみで体を動かすことができませんでした。

 ママが手を差し伸べてようやくソファーに腰掛けました。

「いま先生が治してくれてるから、心配しなくていいのよ。骨折はしているかもしれないけど、命には別状ないっておっしゃってたから、先生を信じて待っていようね」

 ママはリサちゃんの気持を落ち着かせるように優しく話しかけます。しかしリサちゃんはママが優しい言葉をかければかけるほど悲しくなりました。


 ママとリサちゃんが診察室に呼ばれます。リサちゃんはまるで死刑の宣告を受けるみたいに、ずっとママの腰をつかんだまま離れようとしません。

「高山さん、いまレントゲン検査をしましたところ、左後ろ足のこの部分――つまり大腿骨が骨折していますので、このままでは当然歩くこともできません。手術をして骨折した部分の整復(もとの正常な状態に戻すこと)をしたほうがワンちゃんにとっていいと思うのですがいかがでしょうか?」

 お医者さんはレントゲン写真を指しながら話します。

「はい、よろしくお願いします」

「そうですか。ではさっそく手術にかかりますが、術後もギブスをはめなければなりませんので、しばらく入院ということになりますが」

 お医者さんはママにこれからのことをていねいに説明します。

「はい」

 すぐに手術の用意がされ、手術室にはこばれるポピ。その痛々しい姿にリサちゃんはまたしても涙を流しました。

 1時間ほどして無事手術がすんだことを聞かされると、ママとリサちゃんはお礼をいってポピを預けたまま病院をあとにしました。

 家に戻ると、学校から帰ったお兄ちゃんは、リサちゃんたちをいまかいまかと首を長くして待っていました。

「どうだった? ポピ」

 ママが書き残したメモを見たお兄ちゃんは、ずっと心配していたのでしょう、いままで見せたことのない顔で聞きます。

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