第14話
秋の夜は早く、あたりはもう真っ暗になって、まばらに灯る街灯が寂しさを誘います。
リサちゃんは必死になってポピの姿を探し求めます。ママもお兄ちゃんも「ポピ、ポピぃ」と声をかけながら走りまわります。しかしどれだけ呼んでも一向にポピの返事はありませんでした。
はやりどこか遠くに行ってしまったのだろうか、とあきらめかけたそのとき、ヘッドライトを点けた1台の車がこっちに向かって走って来ました。
パパが帰って来たのです。リサちゃんは急いで車に近づき、車から降りようとしたパパにポピが行方不明になったことを話します。それを聞いたパパは、家にも入らないままみんなと一緒にポピを探しはじめました。
どれくらい歩き回ったでしょう、パパがみんなを集めていいました。
「これだけ探しても見つからないし、ずいぶん冷えてきたから、風邪をひかないうちに家に入ろう」
リサちゃんはあきらめきれなかったのですが、パパに背中を押されてしぶしぶ家のなかに入りました。
「リサ、ちゃんと首輪したのか?」
お兄ちゃんは怖い顔になって問い詰めます。
「ちゃんとやったも。ちゃんとやった」
リサちゃんはくちびるを噛みしめて涙をこらえます。
「もういい。あとでパパとママでもういっぺん探しに行って来るから、ね」
と、パパはなぐさめるようにいいました。
「そうよ、リサはちゃんとやったんだから、リサのせいじゃないよ」
ママの言葉を聞いたリサちゃんは我慢できなくなってママにしがみつくと、大きな声で泣きじゃくるのでした。
そのとき、玄関のチャイムがリビングに響き渡りました。
お兄ちゃんが急いで玄関に向かいます。そしてリビングに戻ると、お兄ちゃんの腕のなかにあきらめかけていたポピの姿があったのです。
「ママ、マキちゃんが……」
ママは急いで玄関に向かいます。大きな話し声と一緒にマキちゃんがリビングに入って来るのが見えました。
「マキちゃん、ありがと」
リサちゃんはポピをだっこしたまま涙声でお礼をいいます。
「マキちゃん、この子どこにいた?」と、ママが聞きます。
「あのね、さっきロンがあまり吠えつづけたから、また近所のネコが庭に入り込んだのかもしれないと思って庭に出たんだけど、なにもいなくて……。それでもまだロンが吠えるので家の前を見に行ったら、ポピがうろうろしてたの」
「そうなの、ありがとうね。マキちゃんに見つけてもらってよかったわ。でもどうしてあんな遠くに行ったんだろうね」
「それは、きっとポピがロンに会いたかったに違いないよ」
お兄ちゃんはさっきの怖い顔が一変して笑顔になると、マキちゃんの顔を見ていいました。
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