第13話 迷子

 ある日の夜、パパの仕事が少し遅くなるということで、3人で早めの夕飯をすませたあと、リサちゃんはテラスに出て日課にしているポピの様子をうかがいます。

 でも、いつもリサちゃんがガラス戸を明けると、ポピはクサリをじゃらじゃらさせながら犬小屋から顔をのぞかせるのですが、きょうはそれがありません。おかしく思ったリサちゃんは庭ばきにはきかえてポピを見に行きました。

「ママーぁ、たいへん!」

 家のなかに戻ったリサちゃんは、キッチンにいるママに信じられないくらいの声で叫びます。

「どうしたの?」

 あまりの大声に、なにごとがあったのかといった顔でリサちゃんのそばに走りよります。

「なんだよォ」お兄ちゃんも心配になってテレビ番組そっちのけでリサちゃんの顔をのぞきこみます。

「ポピがいないの」

 ママとお兄ちゃんは、リサちゃんのいってることがわからないといった顔で小首をかしげます。

「いないだって?」

「だって首輪とクサリしかないも」

「庭のどこかにかくれんぼしてるんだ、きっと」

 お兄ちゃんはサンダルをつっかけて犬小屋をのぞきます。

 垣根のあたりではコオロギが秋の夜に軽やかな鳴き声を聞かせています。

 お兄ちゃんはポピの名前を呼びながら庭の隅々まで探しますがポピのいる気配はありません。

「だめだ、庭にはいない。あッ、ここから脱走したんだ」

 お兄ちゃんの指さす先を見ると、垣根の扉の下に10センチほどの隙間がありました。

「みんなで家の近くを探してみようか」

 ママはエプロンをはずしながらいいました。

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