第10話

 最近散歩の距離をこれまでよりも少し長くしました。ポピに体力がついてきたからです。

 ところが、最近ポピのことでリサちゃんに悩みごとがあるのです。それは、ポピがすっかり大きくなり、やんちゃ盛りになって、リサちゃんの手をやかせることです。

 スリッパをかじったり、教科書を破いたり、ティッシュの箱からティッシュを全部引きずり出したり、数えたらきりがないのです。

 こればかりはリサちゃんひとりで解決することができません。そこでママに相談をしました。するとママの答えは、

「ポピがいくら大きくなったといっても、まだ子供だから、遊びたくてしかたないかもね。これからお行儀を覚えさせないといけないけれど、いっぺんにというわけにはいかないから、まあ少しずつ教えようね」

「うん、わかった」

「でもリサ、いずれはポピを庭で飼うことになるんだけど、家のなかにいる間は、大事なものをポピのふれられるところに置いておいちゃだめよ。例えば、教科書とか学校のノートとか……」

「はーい」

 リサちゃんは、ポピのやんちゃで自分が注意されるとは思ってもみませんでした。


 長かった夏休みが終わりになると、リサちゃんはちょっと悲しい気持になりました。これまで1日中ポピと一緒にいられたのに、明日からは学校に行っている間、ポピがひとりぼっちになってしまいます。それを思うとたまらなく悲しくなりました。

 111…112…113

 リサちゃんは数を数えはじめます。

(まだこんなにあるんだ、やだなァ……)

 リサちゃんはぽつりともらしました。数えていたのは冬休みまでの日にちでした。

 でも、しばらく考えたあと、その間にいくつも連休があるし、それに土曜と日曜はこれまでと同じなんだから、と自分にいい聞かせると、少し元気が出て来ました。

 そしていよいよ新学期がはじまりました。

 いつもは学校がはじまる前の日まで泣きながら宿題をやっていたので、宿題ない春休みがいちばん好きでした。ところが今年の夏休みは、ずっとポピと一緒だったために、勉強も宿題もちゃんとやらなければいけないと思い、毎日少しずつすませてきた結果、8月のなかば過ぎにはほとんどすんでいました。

 そのことをママに報告すると、

「よかったね。宿題が早くすんだのもポピのおかげね」

 と、うれしそうな顔でいいました。リサちゃんのママのよろこんだ顔を見てもっとがんばろうと思いました。

 夏休みの宿題のなかでもリサちゃんがいちばん苦手なのは図画です。テーマは「日常の生活」です。構図は、近所の河原でポピを散歩させているところと決めました。もちろんマキちゃんとロンも描くつもりです。

 描きはじめると時間がたつのも忘れ、夢中になってクレヨンを走らせました。いつもなら丸1日かかるのですが、2時間ぐらいで描き終えてしまいました。それは自分でもビックリするほどでした。

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