我ら亡者なり
第15話潜む者、光の下へ
一日の終わりを告げるチャイムが鳴り、生徒たちは帰りの支度を始める。
ある者は部活の準備をし、ある者は一緒に帰る友人を待つ。そして、彼らは頃合いを見計らって、教室を出ていく。
その群れに紛れて、陰気臭い男子生徒が教室を出ていこうとした。頼人は彼を見逃さなかった。
「戸張くん、少しでいいから話できない?」
例の一件以降、戸張は頼人たちを異様に避けていた。頼人が何度話しかけようと、はぐらかして逃げていたのだが、今回はそういった誤魔化しをさせないように仕組んだ。戸張を囲むように頼人と花凛、紅蓮が立ち塞がり、逃げ道を塞いだ。
戸張の元々きつい目付きが一層きつくなったが、それ以外に反抗的な態度を取ることはなかった。
「今日こそ年貢の納め時よ。観念しなさい」
「勝手に悪役に仕立ててやるな。戸張が不憫だ」
「何言ってんのよ、紅蓮ちゃん。コイツは一応、敵だったじゃん。なんなら今もまだ敵かもしれないし」
花凛が厳しい視線を戸張に向けた。それを受けても戸張の態度に変化はなく、黙ったままだった。
「花凛の言う事は放っておいて、とにかく、戸張くんにはちゃんとお礼も言えてなかったから、それも含めて話がしたいんだ」
「……」
「それに俺たちって仲良くできると思うんだ。理を使える者どうし、これから一緒に街の平和を守っていければ……」
「……悪いけど、用事があるんだ。どいてくれない?」
頼人を無視して、扉を塞ぐ紅蓮に視線を向けた。別段、怒っているような口調でもなかったのだが、戸張の放った言葉には頼人たちとの会話を嫌った思いが乗せられているようだった。
回答を求められているのは紅蓮なのだろうが、その場において彼に決定権は存在しない。話がしたいのは頼人であり、それに紅蓮と花凛が付き合っているだけだ。紅蓮は頼人の判断を待つしか出来なかった。
「……紅蓮、通してあげてくれ」
紅蓮は小さく頷くと、ゆっくりと扉の前から退けた。それが完了すると戸張は頼人たちに一瞥も与えずにそそくさと去っていった。
「なんで帰らせちゃったのよ。無理矢理にでも話をさせるべきだったんじゃないの?」
「用事があるなら、引き止めておくのは良くない。こっちはいつだって話せるようなことだ」
花凛はわざとらしく大きな溜息を吐いた。
「こんな調子じゃ、いつまで経っても戸張は振り向いてくれなさそうだわ。あいつに使う時間を、パーソナルの訓練にでも使った方が頼人の為になるわよ」
「そうかもしれないけど、でもなあ、きっと戸張くんも事情を知れば手を貸してくれるだろうし……」
「煮え切らないわね。今からでも遅くないから、戸張を追って、話を付けてきなさいよ。このままぐだぐだしてても、頼人のためにもならないわ」
花凛は苛立ちを露わにして言った。そして、返事も聞かずに頼人の腕を引っ張って、教室から追い出した。
「ほら、さっさと行きなさい。ダッシュで追うのよ」
「花凛は来てくれないのか?」
「あいつの警戒を解くなら、頼人1人の方がいいでしょ。あたしたちは先に神社に行ってるから、頑張りなさいよ」
二言を許さない様子だったため、頼人は恨めしそうに花凛たちを見てから、小走りで駆けていった。
戸張の後を追うも、既に学内からは去ってしまっていた。それ以上の追跡が困難であることは明白なのだが、おめおめと神社に向かうわけにもいかない。それに戸張を説得し、仲間に入れたいのは頼人の本心でもあるから、それを遂げねば気が済まなかった。
しかし、戸張の行き先に心当たりは全くない。校門の前で立ち尽くしても仕方がないので、とりあえず駅に向かうことにした。その道すがらで出会うことを祈り、周囲に目を凝らして歩いていった。
頼人が戸張に執着するのは先日に示唆された、悪意を利用する存在に因るところが多い。
その正体不明の敵に対して、頼人は自分たちだけで立ち向かうことを恐れた。相手の数も力量も計れない現状だと、不安が先走ってしまう。姿もなく、じわじわと自分たちに忍び寄ってきている敵に、自分たちが出来る事は予防だけだ。まして、いついかなる時にやってくるかも分からない相手に対してならば、急拵えで対処する方法は限られている。それにうってつけなのが戸張だった。
戸張からパーソナルを教わった後、頼人はお礼を言えずに心が落ち着かなかった。見えない敵への不安と混ざったその気持ちを、頼人は晴らさないわけにはいかなかった。
駅に近付いていくと、頼人は自分の感情に揺さぶられる暇がなくなっていった。県内でも随一の市街地が形成されている与宮駅周辺に差し掛かり、次第に人通りが激しくなっていったので、戸張を見つけるのが難しくなっていたのだ。
キョロキョロと頭を忙しく動かして、分かりやすい目印の『髪がボサボサで制服を着た男』を探すのだが、それに一致する人物は見当たらなかった。
遂に駅の直前の大きなスクランブル交差点まで、戸張の姿を見ることはなかった。信号によって進行を阻まれている間、頼人は人混みの中を注意深く見ていた。
その作業も信号が変わったことで終了し、逆らうことも出来ずに道路を横断させられた。もしかしたら戸張はもう見つけられないのではないか、と弱気になった時、頼人はある気配を感じた。
その気配を確かめるように背後に振り向くと、見覚えのある後ろ姿を見つけた。長く美しい髪の女性。ただそれだけの情報しかないのに、頼人は確信した。その女性は以前、頼人を助けてくれた人だ。
頼人は考えるよりも早く、踵を返して女性を追っていた。人の多さに足を奪われながらも、逃すまいと女性から目を離さなかった。
あの女性には謎ばかりが残っていた。出会った時は悪意のストーカーに尾行されていたようだったが、理を使って呆気無く倒していたし、そのストーカーも何処かに連れて行ったようだった。それに頼人の心を見透かしたかのような発言もしていて、当時の頼人は唖然とするだけだった。
しかし、女性はそれだけ不審な振る舞いをしていながらも、気味悪さを一切も残さなかった。優しい語り口や淀みがなく強い輝きを放つ瞳に、虚偽や疑惑を孕んでいるとは思えなかった。何より、そんな疑いをかけてしまうことが憚れられる高尚さが醸しだされていた。
あの女性なら、自分たちを助けてくれるかもしれない。更には悪意の裏に潜んでいる何者かについての情報を持っているかもしれない。当初の目的を置いてでも、女性を追う必要があった。
都市部から外れてきた辺りまで来ると、頼人と女性の距離は開いてしまっていたが、人も少なくなってきたので走って距離を詰めることができた。もう少しで追いつくだろうという頃合いで、女性は十字路を曲がった。頼人も見失わないように急いで曲がろうとした。
曲がった瞬間、頼人は何かに衝突した。勢いよくぶつかったが、柔らかい感触のおかげで痛みはなく、少し後ずさりするだけで済んだ。頼人は我に返って、ぶつかったものに目を向けた。そこには眼鏡をかけた女性が何故か憮然とした表情で立っていた。
「ごめんなさい……って、ちょっ!」
眼鏡の女性は頼人の腕を取り、どこかに連れて行こうとした。
「な、何するんですか。俺、急いでるんです」
「黙ってついてきなさい」
高圧的に言葉を浴びせられ、頼人は反抗できずについていくことになった。
連れられた先は人気のない袋小路だった。そこに着くと眼鏡の女性は腕を放して、頼人に向き直った。
「あの子に関わらないで」
「あ、あの子?」
眼鏡の女性が差す人物に見当が付かなかった。
「今、あなたが追っている子。あの子を追うのを止めなさいと言ってるの」
「あの人のことを知っているんですか。じゃああなたも理使い……」
頼人は興奮気味に話すが、眼鏡の女性がひと睨みすると、言葉尻が弱まって消えた。
「私たちのことはどうでもいい。あの子がしばらく忘れろって言った通り、あなたはあの子のことを忘れていなさい」
「そんなこと言われても……今あの人の力を借りられればと考えていたんです。悪意を利用している奴がいて、それで……」
有無を言わせない雰囲気だったが、振り絞るように言った。下を向いて顔を見ないようにしていたが、その強い視線だけは感じ取っていた。
「関わらないでと言ったでしょう。あなたの望みは何も受け入れられないわ」
「でも、どうしても助けてほしいんです。きっと今の俺たちじゃあそいつらに勝てなくて……」
「あなたは何のために理を得たの? 何のために戦おうと思ったの?」
頼人は思わず顔を上げた。
「力を得たのにまだ何かに縋るつもり? 泣き言で解決する世界じゃないわ。戦っていかなければならないのよ、たとえ1人でも」
厳しい言い分だった。しかし、間違ったことは言ってないと頼人は思った。
自分たちはこの街の平和のために力を付けて、そして少しではあるが平和を乱す悪と戦ってきた。それははな婆に半強制的に促されたことだったが、それでも平和を守りたいと思う気持ちは確かにあった。
その根底には幼い頃からの願いである『強さ』というものがあった。抽象的で曖昧なその願いは、今の頼人の戦う動機としては不安定だった。しかし、改めてその願いを鑑みることもなかったし、目の前の出来事で精一杯だったため、いつしか埋もれてしまっていた。
眼鏡の女性に問われたことはその『強さ』という言葉を呼び起こした。そして、自分が理を得て強くなる理由というものに直面させられた。
「俺はいったい……」
口から自然に言葉が漏れたと同時に、頼人の思考を中断させる事態が発生した。
遠方からパトカーのサイレン音が聞こえてきた。それも1つだけではなく、いくつもの音が重なっていた。
「何か尋常ではないことが起きたようね」
「もしかして、悪意ですか?」
「どうかしら。何にせよ、私たちは行くわ。長永頼人、あの子は今のあなたに必要ない。それを肝に銘じて、励みなさい」
眼鏡の女性は捨て吐くように言うと、当てがあるような確かな足取りで去っていった。
自分の名前を知っていることに驚いたが、今はそれどころではない。自分も同じくそのサイレン音が意味するものを確かめようと考えた。既に眼鏡の女性の姿は見えなくなったが、後を追うように頼人も駆けていった。
サイレン音は頼人の行き先を指し示してはくれなかった。両耳から流れるその騒音に、頼人は惑わされそうになった。眼鏡の女性を追いかければ、その元凶に辿り着けるかもしれないが、既に見失っていたのでどうしようもない。
暗中模索で歩きまわっている内に、サイレン音から遠のいていた。警察の追跡を信用するならこの場所はハズレとなるが、そんなことを憂う必要はすぐになくなった。
1台のバイクが頼人の前方からやってきた。恐ろしい速度で向かってくるそれは、この騒動に関係のある人物であることを物語っていた。
近づいてくるとその人物の容貌が見えてきた。フルフェイスのヘルメットで顔を隠し、黒のライダースーツを着ていて、背中には不自然に膨らんだボストンバッグを背負っている男だ。
頼人がその人物を訝しげに見ていると、それに気付いたのかバイクは頼人の前で過激な音を立てて止まった。
「ビンゴっぽいな。『ロック』も中々、冴えてるようだ」
ヘルメットを着けたまま、男は大きな独り言を呟いた。
「ビンゴ? いったいどういう意味だ?」
「あー聞こえてたか、まあ折角だから教えてやろう……いや駄目だ。どうも俺は喋りたがりらしいし、言われたことをちゃーんとこなして、こんな強盗程度の端金じゃない、一生遊んで暮らせるほどの大金を頂かなくちゃな。だから、お前には何一つとして情報は与えてやらない、残念だったな」
残念なことにその男は情報を多く漏らしていた。
どうやら悪意に飲まれた者は往々にして演説したがる傾向があるらしい(既に頼人はこの男が悪意に飲まれていると決めつけていたのだが、そう思うのも当然だ)。それにしても、この男は秘事を多く抱えているように思えた。普通の悪意とは異なる、おぞましい雰囲気が醸しだされていた。
「さて、確か生きてさえいれば状態はどうでも良かったんだよな。調整すんのが面倒だが、くたばらないでくれよ」
男はバイクに跨ったまま、腰の辺りに手を伸ばした。そしてもう片方の手を頼人に向けると、手のひらから火の玉が飛んできた。
頼人は男が話し始めた時点で、理を集中させていた。そのため、この先制攻撃はタイミング良く発現した光の剣で防ぐことが出来た。
光の剣に阻まれ、火の玉はその場で掻き消えるだろうと思えたが、何やら様子がおかしかった。精々押し込まれるくらいなら、予想の範疇を大きく上回ることでもないのだが、この火の玉は光の剣に喰らいついているかのように、くっついて離れなかった。
火の玉を払おうと剣を振り回すが、火と光が美しい軌跡を描くだけだった。頼人が躍起になっている姿を、男はバイクの上から退屈そうに見ていた。
「おいおい、こんなもんか? もう少しやってくれると思ってたんだが」
男は本気で相手をしていないようだ。追撃を入れるでもなく、ただ頼人が火の玉1つに弄ばれるのを眺めるだけだった。
その隙だらけの男に対して、頼人は一切手出しが出来なかった。剣に噛み付く火の玉は何の意味もなく付着しているのではなく、剣を男に向けようとすると、急に力が加わって剣先をずらされるのだ。
掻き消すことも出来ず、攻撃も妨害される以上、他の手段をもって男に攻撃するしかないのだが、ストーンホルダーは疎か、持ち物一式は学校に置いてきてしまっていた。花凛に有無をいわさず追い出されたことを恨みつつ、この状況を打開する方法を考えた。
攻撃手段は自分のパーソナルである光の剣のみ。しかし、男の火の玉が攻撃を阻止してくる。男を斬ることが出来ないので、直接攻撃以外の方法で攻撃するしかない。それならば、出来る事は1つだけだ。
光の剣自体は理の塊だ。なので剣から力を分割して、射出することも可能だろう。頼人は火の玉に振り回されながらも、視線を男に合わせて意識を集中させた。
剣の柄の辺りから一筋の光線が放たれた。男は反応することが出来ず、胸を貫かれた。承知の通り、傷1つ与えられなかったが、男は苦しそうに撃たれた胸を押さえた。
「ぐっ、なんだこれ……なにしやがった……」
男が弱まると同時に、火の玉は萎んで消えていった。
これを好機と見た頼人はすかさず接近して、男の背負っているバッグを奪おうとした。しかし、男は無力化したわけではなかった。胸を押さえていた手を頼人に翳すと、今度は先程の火の玉よりも大きい土の塊が発現した。
その塊の先が割れると、断面にびっしりと鋭い刺が生えてきた。そして、頼人の剣に飛びつき、口のように開いた断面で挟んだ。
強烈なパワーで光の剣を頼人の手から奪うと、丸腰になった頼人はその場で立ち竦んでしまった。
「はあ、油断した。こんな訳が分からないパーソナルを持ってるとはな……だが、パワーが足りねえぜ、パワーが!」
息を荒げながら、男は手からまた土の塊を発現した。それが徐々に形を変えて凶暴さを尖らせた時、男の乗っているバイクが勝手に動き出した。
「ああ? なんでだよ! もう少しじゃねえか、『スパイダー』!」
男は頼人の後ろに向かって叫んでいた。頼人もその声の方向に向くと、そこには水のロープが一本、こちらに伸びてきていた。そのロープの着く先は男の乗っているバイクだった。
ロープに引かれ、バイクは少しずつ引きずられていった。男は頼人にも聞こえるくらいに大きな舌打ちをすると、手のひらに生まれた土塊と剣を食む土塊を解除してバイクのエンジンをかけた。
「これだからチームで動くのは嫌なんだ。おい小僧、俺の名前を覚えておけ。俺は『ファング』。お前は獲物だ。俺の腹を満たす極上の獲物だ。唾液を帯びた俺の牙がお前の喉笛を食いちぎってやるからな。忘れるなよ!」
言い終えると、その男、『ファング』はアクセルを全開にして、ロープの先へとバイクを走らせていった。
頼人はファングの逃走を見届けることしか出来なかった。彼方に消えるその姿を見て、彼とその仲間と思われる輩の目的を推測するばかりだった。
どことも知れない怪しげな空間に彼らは身を潜めていた。お互いの顔がはっきりと見えないほどの暗い場所だったが、彼らは問題としなかった。
ファングはその空間に存在するシルエットを1つずつ確認すると、違和感を感じて言葉にした。
「おい、なんか人数少なくないか?」
「3人やられた。消息は不明だ」
「やられただと? ターゲットは俺のとこにいたんだぜ? 誰にやられたってんだよ」
「さあな、知ったことではない。寧ろ、取り分が増えたから喜ばしいことだろう?」
ファングに応じている男らしき人物は事も無げに言う。
「まあ……そうか、そうだな。こんなとこでリタイヤしてるようじゃ、使いもんにもならないだろうしな。だがよ、肝心のロックがいないみてえだ。アイツもやられたのか?」
「ロックなら報告に行ってるよー」
陰湿な空間に似つかわしくない、明るく若い女の声が響いた。
「あ? てっきりお前がやられたと思ってたんだが、残ってやがったのか」
「えー、なにそれ酷くない? わたしそんなにヘマしそう?」
「お前の力量の問題じゃねえよ。単純に、消えるならお前に消えてほしかっただけだ」
「むっかー。だったら、わたしもファングに消えてほしかったよ。なんなら、今すぐにでも!」
「この糞アマ……」
ファングの手から牙の生えた火が現れた。この空間の唯一の光源として、ファングの顔を照らし、その怒りで歪んだ顔を仲間に知らしめた。
「なんだなんだ、やるのかー? かかってきなさいよ、へっぽこバイカー!」
「後悔すんなよ……」
ファングは火の玉を女に投げつけようと振りかぶった時、不意にその手を掴まれた。
「おい、止めんじゃねえ!」
「やめなさい。仲間割れほど無益なことはありませんよ」
「邪魔すんな! 前からアイツのことは気に入らなかったんだ。ぶっ殺してやる!」
「人数が減ってしまっては任務に支障が出てしまいます。ここは収めなさい」
その人物はファングの手を無理矢理に下ろした。そして、続けざまに耳元で囁いた。
「全てが終わってからやってしまえばいいでしょう? ついでに彼女に充てられた報酬も得られるではありませんか。それが最も賢しいやり方です」
ファングは怒りを抑えきれないままだったが、その男に従って、火の玉を解除した。
「へへーん、怖気づいちゃってえ」
「……糞がっ!」
捨て台詞を残し、ファングは何処かで消えた。
「やれやれ、こんな調子でチームとしてやっていけるのやら」
「食い合うようなことがなければ、それで充分だろう。金が懸かってるんだ、嫌でも指示通りに動いてもらう」
「果たして、そんなに上手くいきますかね。所詮、我々は金の亡者でしかありませんから……」
「下らない皮肉だ」
「皮肉で済めば良いですがね」
2人の男が心中を探るようなやりとりをしている中、天敵の消えた女は嘘のように静かになっていた。
男たちの会話が途切れ、暗闇の空気が漂うのみになった頃合いに、彼らが待っていた人物がやってきた。
時の流れも見えないこの場所で、その人物がもたらす言葉は外の世界への架け橋であり、そして彼らをその世界の上層に導く光となるのだった。
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