第9話 新たな 世界と闇

私は何がしたい、この先冒険がしたいのか、それとも自分のやりたい事を諦めて平凡な暮らしをしたいのか?

私は断然冒険を選ぶ、確かに平凡な暮らしも冒険だと言われたらそこで終わってしまうそうじゃないだろう、

「神酒殿!」

風さんの声で我に帰った、私はいつの間にか立ち尽くしていたらしい

「すいません待たせました」

風さん達に走って追いついた

「大丈夫か神酒」

うん大丈夫、もう決めた

「大丈夫だよ、ごめんね」

私たちは四人でこれから旅をする、この世界を知る為に

「今日はいい天気ですね」

自然豊かなこの道は風が吹く度に葉や草が風に音を乗せそれにつられて木が屈伸する、自然はやっぱり生き物だ、息を吸い成長して朽ち果てる、私たちに“少し”似ているかもしれ無い

「綺麗な緑色だな」

光の当たる方向が変わるだけで色も変わって景色が変わる、明るいはずなのに夜空を見ている気分だった、私はおもむろに空気を体全体で吸い込む鼻から入るその空気は新鮮そのものだった

「カサカサ」

右左と風に合わせて靡いていた草が不自然に動き出す、まるで私を見てとアピールしているようだった

「聞こえたな」

私は蝕月を二人は刀を構えた、歩いていた道の奥に私の身の丈くらいある蜘蛛が出てきた、脚は木の枝のよう似太く頑丈そうで目は八つある。向かってくると思い私達はさらに警戒を強めたが、蜘蛛はただ道を横断したかったらしくまた森に入った、あんな蜘蛛は見たことが無い

「大きかったですね」

私の頭で喜びが騒ぎ出した、ピリピリとした刺激が頭を左右から挟む様に広がっていく、そして体は火照り血が湧き出す、こんなにもワクワクさせてくれるのかと一人微笑んでいた

「少しかわいかったかも」

紫狐さんはその生き物の優れた点を見つけるのが上手い、私は可愛いとは思え無いが、(かっこいいとは思えるかも)この世にはまだ見たことのないものが沢山ある、今まさに私の図鑑に新しい情報が書き込まれている所だ

「美しいな神酒」

蝕月は何もかも初めてだ、息を吸うことも、何かに触れることも、教えたいことも沢山ある、でもなるべく自分のやり方でつまずいて立ち上がって欲しい

「私も今思った!」

私もまだまだだ、刀の技術も知識も未熟、そんなのはわかっていたでも全て整って走り出すことはしたくない、いや出来無い、走り出すから必要なものを知り考え、揃えることができる

「あそこに花畑がありますよ」

もうすでにお花の香りがした、紫狐さんはキラキラした目で言っている、もう行く以外はありえたくないそんな目で見ていた、

「みんなで行きましょう!」

私もそのお花畑の欠片と紫狐さんの目を見てワクワクしたこんな気持ちはいつぶりだろうか、私はと何者かわからなくなっていた心の雲の隙間から光が差し込み私に力を与えてくれるそんな気がした

「少し休むか」

私達はお花畑を見行く事にした、そこから少し四人で歩いて、風の方向が変わり、その風に花の匂いが乗って来た、草の匂いはいつしか花の匂いになっていて、だんだんと草の量が減り花畑に近づいていることを感じた、その度に鼓動が早まり私たちはそれを抑え地面をより強く感ながら歩いた

「眩しい!」

空は快晴で手を影にしないと景色が見えない、花は光をたくさん集めようと精一杯に花弁を開いている、花畑のすぐ横には小さな小川が流れていて河原には木が生えているそして、その木に鳥が飛び乗り鳴いている、他にも川には動物がいて木の川を食べるツノが槍のようなになった馬や尻尾が棘棘しい灰色の犬もいただが全ての生き物が怖がっていた、“私達を”

「お茶にしよう」

私たち四人は苔の生えた倒木に腰掛けて軽食を取った、私は念で対話をしてみた、植物も動物も私たちのような存在はあまり見たことがないと言っていたが私たちに似たような人は一人だけ見たことがあると口を揃えて言っていた、私たちは“何か”をしてしまったらしい

「綺麗ですね」

葉の影が日光を遮っていてさらによく見える、葉の色がさらに濃く見えて空は透き通って見えた

「ああ綺麗だな」

遮るものが何もなく心地いい風が肌を撫でその度に花と木が揺れる、まるで海の波だ、景色に見惚れていたら風さんが急須でお茶を入れていた、美しかった、優しく急須に手を添えて無駄な力は一切入っていなく、私と蝕月は目を輝かせて見ていた

「お茶だ、神酒殿」

「ありがとうございます」

渡された湯飲みから手にほのかに熱を感じた、中には綺麗なお花が浮かんでいて、暖かいお茶の湯気が花を通って更に強く香りがする、その匂いは体の力を緩めてしまうくらい優しかった、少し風が冷たかったので暖かいお茶がさらに美味しく飲めた、

「暖かい」

私はお茶と花畑の匂いで心が満たされた

「どうやってこのような技術を手に入れたんだ?」

風さんは飲んでいたお茶から口を離し、蝕月の質問を聞いた

「師匠に全てを教えて貰った」

風さんは少し寂しい顔をして話し始めた、花畑に小さな鳥が来て蜜を集めている虫を食べていた、

「刀は刀同士の親のみだけに生まれるんだ」

私たちはお茶をすすりながら話を真剣に聞いた、風さんはそのまま続けた

「だが、例外がある刀とその他の種族で生まれる人も稀に刀になれるんだ」

それは私が狙われた理由に大きな意味をもたらした

「刀刃族」

風さんは頷き、蝕月と紫狐さんは何も言わず飲み終わった湯飲みを両手で握っていた

「刀刃族は自分の体を刀にできて尚且つ心刃を宿せる」

私は自分の新しい力に驚きを隠せなかった

「そして私の師匠は刀刃族で妖刀だった」

鳥が囀り、動物が私たちの周りに興味津々で集まってくる

「妖刀は自分の力を御しきれなくなった瞬間“落ちる”」

蝕月は怯えた顔をしながら話を聞き続けた

「私の師匠は自分の術で自分を縛って、耐えきれなくなり死んだ」

その言葉に私は強く決意した“落ちる可能”を

「お茶美味しかったです」

私は早めにお茶を飲み干し花畑を歩き始めた

「俺も行く」

蝕月は刀に戻り腰に付く

「すいませんがもう少し休みませんか?」

と二人に提案した、二人は何も言わずただ頷いて二人で何かを話し始めた、ありがとう風さん紫狐さん

「行きますか蝕月」

私達は花畑を歩き始めた。

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