第8話  尻尾の先にあるもの

今日はいい朝だ

「大狐さんおはようございます」

刀から変身して私の横についてきてくれる

「おはようございます、今日はいい朝ですね」

私が寝ている間にかなり街は復興していた、建物はほとんど綺麗になっていて、朝だから人が沢山いる

「賑わっていますね」

大狐さんは人間に興味津々だ

「朝ごはんどこかで食べますか」

朝から何も食べてないのでもうペコペコだった

「私は人をもっと見てみたいので落ち着いて座れるところがいいですね」

街にはたくさんのお店があったが中でも気になったお店に入った

「この場所にしませんか?」

そこは本がいっぱい置いてある、喫茶店だった

「ここにしましょう」

大狐さんは人を落ち着いて観察できたら良かったらしい、朝ご飯を済ませて店を出ると、人目のつかない森に入った

「ここら辺で始めますか」

そこは大きな池がある開けた場所だった

「はい始めましょう」

そう言って大狐さんは刀に戻って私の腰の鞘に入ってくれた、池には小さな波が一定のリズムで流れている、私はその波を感じその間に新しい波を立てるように意識した

「その調子です妲己さん」

さらにその波を大きくしていき次第に元々あった波よりも大きく強くしていった、“音斬り”そう口ずさむと自分の周りから、風と波が流れ出した

「出しますよ!」

尻尾を一本出してもらって私は深く息を吸って吐き出す、そしてそれと同時に刀を鞘から抜き出す

「壱の段”振“」

斬撃を空中の波に当てて振動させた、空気からは音が出始め、波が当った物は揺れて形を留める事ができなくなり、中から砕けていた

「やった!」

素直に嬉しかった

「更に強くできそうですね」

大狐さんの言う通り実戦ではもっと早く強くしないといけない

「そうですね、次の段も試してみますか!」

練習に戻ろうとしたその時

「妲己さん!」

あの子だ!見なくても声で分かった、

「妲己さんの気配がしたので」

驚いた、口は動いていないのに感じる、その瞬間すごい罪悪感に囚われた

「あ、あの名前を教えていただきたいです」

ばれたくない

「そうでした!私は”藤意神酒と言います」

隣にはみた事もない男がいた

「あ、この子は私の心刃の妖刀蝕月です」

心刃が喋っているのはごく稀だしかも妖刀だなんて、

「初めまして蝕月さん」

少し怯えているように見えた、私ではなく横にいる大狐さんに

「九尾鬼空です」

すると、背負っている太刀が変身しいった何処かで見たことがある

「紫狐さん?」

私は恐る恐る本人確認をした、

「久しぶりです、妲己さん」

やっぱり、

としていた、顎に小さなホクロもあった、そしてかなり強くなっている以前とは格が違う、単純に身体能力はもちろんの事操れる力も強大になっている、何をしたらこうなる

「強くなりましたね」

紫狐さんは自分の刀を出してみせた

「こんな事も出来るようになったんですよ!」

そう言うと姿勢を低くして刀を片手で支え高速で何かを唱えゆっくりと鞘を指で押したその間から綺麗な紫色の刀身が見えた、次の瞬間“バチバチ”と音を立てて鞘と刀の間からは紫色の雷が溢れ出し紫狐さんの周りを満した、音よりも早く、もしかしたら光と同じくらい早かったかもしれない、目の前に雷が落ちて蛇のように地面を這った

「妲己さんこっちです」

私は驚いた、紫狐さんは遥か空にいた、そこから雷を纏って落ちてきた、その衝撃は地面を叩き割り草木をへし折った

「すごい」

私はそれしか言うことができなかった、落ちた後はその周辺が霧に覆われて周りがよく見えなかった、まるで今の私みたいだ

「大丈夫ですかー」

神酒さんだ

「大丈夫ですよ!」

霧は段々晴れて行って視界が戻ってきた、そして折れていた木が霧かかっている間に元通りになっている

「紫狐殿やりすぎです」

紫狐さんが神酒さんに怒られていた

「もう私の場所ではないようですね

」大狐さんに目配せして私たちは霧が晴れ切る前にそこから離れた。

「良かったのですか?」

刀に戻って直接聞こえてくる

「次に会う時を楽しみにします」

私は今やりたいことを見つけられたのだから

「そうですか」

大狐さんは嬉しそうだった、その日私たちは街を出た


私は嬉しかった、自分は一人ではないそれだけで大きな力を手に入れられた、それには悲しい部分もある、それは妲己さんとも心さんとも離れてしまうこと、せっかく話せるようになったのにほんの数日でお別れなんて、

「神酒さんいきましょう!」

でもそれは当たり前の事だと思う、何故ならいまも私たちは時間と空間を消費しているのだから、、、

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