第3話 修行
小さな洞窟の中に書き留めているバツ印を数えた。
「一週間か」
私はあの後この洞窟に運ばれて、風さんに脚を綺麗にして貰った。その反動で風さんは今も寝込んでいる、今意識があるのは私と紫狐さんの二人、しかも私は声を失った、紫狐さんの様な刀の方達には念じればいいものの、近くの村にいる人には何も伝えられず、唯一の方法は地面に指で絵を描いて伝える事と紫狐さんに通訳してもらう事、本音を言うと泣きたい。でも、それよりも二人の事が心配だ、一刻も早く妲己さんを助けられるくらい強くなる、そう決めた。
「脚は大丈夫か?」
その声は!
「風さん!」
私は感激のあまり泣いてしまった。
「心配かけてすまなかった」
あのとき助けてもらえなかったら死んでいただろう。
「ありがとうございます」
やっと言えた、風さんも少し笑っていた気がする。
「紫狐さん風さんが起きました!」
念じると雷の様に彼女は私の隣に走ってきた。
「風さん、あの時は助けてくれてありがとうございました、飲み薬とお米です」私も何か用意したら良かった。
「おお、辱い」
その日は、はじめてみんなで食卓を囲んだ。
次の日の朝、私はかなり早く起きた、そしていつものルートを走った、木に囲まれた砂利の道で空気が美味しく鳥の囀りが清々しかった、ゴールにたどり着くと大きな岩の上で朝ごはんを食べた、昨日創作で作って見たけれどとても美味しい小麦の良い香りがして、外はサクサク中しっとりふわふわ。
「よしこれならお二人の口に合うかも!」
残りを食べて洞窟へ戻った。
「今戻りました」
二人は自分の刀を鍛錬していた、汗を流し力強く鍛えていた。
「私はもっと強くならなくては」
「私も強くなる!」
二人はいつの間にか切磋琢磨する“仲間”になっていた、私もさらに強く心に決めた日だった。その日から私は二人と相談し、この世界について教えてもらうことにした、紫狐さんには、この世界には12の国がある事、種族が8族いる事、妲己さんは“不完全”である事を、風さんには心刃とは誰にでもあるものだという事、この世界には呪われた刀“妖刀”がある事を、“刀技“とは刀技として存在する物ではなく自分で技を作って初めて刀技と呼べる事を、知っている事全てを教えて貰った。一日が一年に感じられた、日が昇って落ちるまで死ぬほど努力した、時には手脚が思うように動かなかったし、無理やり食べた物を吐いてしまう時もあった。それでも楽しかった、心の底からみんなと笑って刀を交えて新しい技を考えたり、刀を鍛錬したり苦しい事も楽しい事も全部が新鮮で無駄な事なんてなかった。
その日の夜、外は雨で洞窟の中、三人で焚き火を囲んでいた
「私は今よりももっと沢山の生き物と話せるようにないたい」
苦しいけどうまく使えば言葉を学ばなくて済むし、段々楽しくなってきたのだ。
「念は言葉ではないからな、動物、植物、もしかしたらこの星と話せたりするかもしれないぞ」
そんな事が出来るのか。
「本当ですか!」
吐いた息を吸うように。
「私も妲己さんが地面に手を当てて何かしている所を見た事があります、顔はとても真剣でしたどこか怯えているような」
少し紫狐さん本人も怯えた表情をしていた。
「お二人は何か目標があるんですか?」
風さんと紫狐さんはお互いの表情を見ながらどちらが先に言い始めようか伺っている
「では拙者から」
私と紫狐さんは息を飲んだ
「前から決めていたんだが神酒殿の武器になりたい」
嬉しい反面驚いた。
「本当に良いんですか?」
風さん顔はもう既に覚悟を決めていた、素直に嬉しい。
「はい宜しくお願いします!」
私はその人が決めた事を否定したくない、いや否定する事ができない。
「次は紫狐殿の番だな」
と紫狐さんに振った
「はい!私も恐縮ながら神酒さんの武器になりたいです」
紫狐さんも覚悟を決めた顔をしている
「わかりました改めて宜しくお願いします」
お二人は覚悟を決めているんだ、私もそれにちゃんと答えられるようにしないと、その日は何か捨てて新しいものを手に入れられた気がする。
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