第13話

 駅前の人ごみを避けて細い道を選ぶ。といっても人ごみと呼ぶほどの人ではないが。

 駅をおりるとロータリーで正面と斜め右には広い道があって地図で見るとこの辺はなにかの結び目みたいになってる。さっき細い道と書いた道に入るとそこも商店街、だけれど視野の両脇の店はいつもシャッターがおりている。商店街のタバコ屋の角には看板が建っている。まっすぐ進むと三叉路で、そこには

『自動車が蛙を踏んでいくと蟻とかがたかってなかなか汚らしい光景になる。私は蛙が車道を歩いているのを見つけると流雪溝に逃がしている。意味があるかはわからない。蜘蛛の糸の話を思い出した。地獄から蛙に乗ってぴょんぴょん逃げたら楽しそうだ』

と書かれた看板が建っている。そこの左側の道をいくと商店街から抜けて、公園がある。公園のゴツゴツしたベンチの横には看板が建っている。この公園を左手に見ながら歩いていくと交差点があるので左折する。交差点の右手の『月極駐車場』には

『オタマジャクシの食欲は旺盛で、肉を残らず全部食い尽くすから、骨格標本を作るには便利だ。オタマジャクシの水槽に拾ってきた動物の死骸を入れておくと、匂いもなくきれいな骨が残る。接着剤や割り箸を使って骨を組み上げるのは楽しい。中学校に入ってからは学校のホットボンドが使えるようになった。理科室には日に日に標本が増えていくだろう』

と書かれた看板が建っている。左折して歩道橋にあがれば、私の卒業した中学校と小学校がならんでいるのがみえるだろう。歩道橋の上には

『私はすでにコンビニのワンカップの酒がうまいという呪いにかかっている。梅干しを一個浮かべて道で飲む。骨と酒は相性がいい。骨は(じめじめした・腐る)肉を削ぎとした姿だからいつも陽気だ。おぎちゃんはときどき「一口ちょうだい」といってくるがお酒があまり好きではないらしい。飲んだあと変な顔をしているし、本当に一口しか飲まない』

と書かれた看板が建っている。小学校のそばには看板が建っている。

 高校から電車通学になった私は毎日のようにこの道で帰る。看板の配置と言葉は完璧に記憶している。

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