第8話

 私は地図を取り出して、看板のあった場所に点を打った。そしてその作業にはあまり意味がないことに気づいた。でも地図を見ていると、小学校低学年のとき、みんなが「けずりこ屋」と呼んでいたお店があったことを思い出した。けずりこ屋は正式にはけずりこを売っているわけではなく鋳物の砂型の木型を作っている会社だ。

 図工などで木が必要になったとき、けずりこ屋にいくといつもにこにこしたおじいさんがただで木をくれた。

 そういえば阿部さんは服が汚れるのをいやがらない人だった。ノコギリで木を切るとき阿部さんの服はいつもおがくずにまみれていた。

 そうだ、明日けずりこ屋にいってみよう、と私は思った。大きな木の看板を建てた犯人が大量の木をどこで手に入れたのか、もしかしたらけずりこ屋でもらったのではないか、そう考えながら私は眠りについた。

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